2024年11月01日 10:21 弁護士ドットコム
首都圏で強盗事件が相次いでいる中、逮捕された実行犯が「SNSの闇バイトに応募した」と供述したことが報じられています。最初から「闇バイト」とわかっているケースもあるかもしれませんが、軽い気落ちで応募したアルバイトが実は闇バイトだった事例もあるようです。
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昨年、警察庁が公表した「犯罪実行者募集の実態」などをもとに、どのような注意が必要なのか、まとめました。
以前は、「闇バイト」の募集は、仕事の内容が不明確だったり、報酬が著しく高額だったりして、「一見して怪しい」ものでした。
しかし、徐々に、一見して犯罪の募集だとはわかりにくいものが増えてきました。警察庁のレポートによれば、次のような募集文句があるといいます。
「安全に稼げます」「犯罪ではありません」「リスク無し」「詐欺ではありません」「誰にでもできる簡単な仕事」
このように「ホワイト案件」という説明で募集しておきながら、実際には組織による犯罪の募集であるものが含まれます。
さらに厄介なのが、大手の求人サイトであれば安心できるかと言えば、過去には犯罪の募集に使われていたこともありました。
警察庁の発表によれば、Indeed(インディード)・エンゲージ・ジモティーなどの大手サイトでも犯罪の募集がされたことがあるといい、通常のアルバイトとほとんど区別がつかないものもあるようです。
たとえば「正規のハンドキャリーの仕事(日給 15,000 円程度)」として、人材募集広告に掲載された事例。これは実際には特殊詐欺の受け子募集でした。
では、どのような点に気をつければいいのか。その一つが、応募後、電話やメール、対面などではなく、「犯行グループから連絡が入り、以降、匿名性の高いアプリでやりとり」する手法が使われることが多い点です。
応募の時点で見分けるのは難しいですが、その後、連絡手段として「テレグラム」や「シグナル」などの匿名性の高いアプリを使わされるようであれば、疑ってみるべきです。
逮捕された実行役らは「家族に危害を加えられることを恐れ、抜け出せなかった」と供述することが珍しくありません。
通常、一般のアルバイトでも、応募や就業する際に、履歴書や運転免許証、学生証、健康保険証のコピー等の身分証明書類を提出します。
これを逆手に取ったのが、闇バイトです。普通のアルバイトだと思ってこれらを提出したところ、「お前の実家の住所も連絡先も全部分かってるんだからな」「逃げたり警察に行ったりしたら、お前の家族もどうなるか分かってるだろうな」などと脅され、逃げられなくなるのです。
警察庁のレポートでは次のような事例が紹介されています。
「住所だけでなく、家族構成や名前、勤務先等まで聞かれた」「交際相手のことを聞かれ、彼女の名前や生年月日、顔写真を送信してしまった」「自分が住んでいるマンションの入口から部屋までの道のりを動画撮影するよう指示され、送信させられた」
自分だけでなく、家族や交際相手の情報を送ってしまった負い目と恐怖から、「抜け出せない」と犯行を重ねてしまうことになります。
犯罪組織に取り込む手口も巧妙です。最初の数回は本当に違法性のない、そして割のよいアルバイトをやらせることもあります。
気がついたら犯罪に手を染めてしまっていて、「お前はもうこっち側の人間なんだからな。今さら抜けられるわけねえだろ」などと脅されるケースもあります。
強盗の場合、5年以上の有期懲役(原則20年以下)になります(刑法236条1項)。最低で5年、というのは非常に重い罪です。
まだ強盗に至っていない準備行為の段階(強盗予備)でも、2年以下の懲役となります(同法237条)。
強盗して人を怪我させてしまった場合には、6年以上~無期懲役になります(同法240条前段)。
さらに、人を死亡させてしまった場合、死刑か無期懲役しかありません(同後段)。この場合には、法律の規定上、酌量減軽などが認められない限り、二度と社会復帰することはできないのです。
なお、「無期懲役になってもどうせすぐに出られる」という都市伝説がありますが、誤りです。法務省の公表するデータによると、2022年に仮釈放された無期受刑者は6人で、釈放されないまま死亡した無期受刑者は41人です。
また、仮釈放時点での平均受刑在所期間は、2022年で45年3ヶ月です。つまり、「ほとんど仮釈放されないし、仮釈放されたとしても、平均45年かかる」というわけです。
とにかくできるだけ早く警察に駆け込むことです。
「家族に危害を加える」という脅しがありますが、そもそも犯罪組織が、使い捨てのつもりだった末端の人間の家族に、わざわざ危害を加えに行く事は考えにくいです。
犯罪組織のメンバーは、自分たちの組織のことを「会社」と呼んだりするのです。彼らにとっては、詐欺も強盗も「ビジネス」です。お金にならないことはしません。
末端が自首したところで、自分たちは捕まらないと考えているのだから、末端に逃げられたらさっさと他の末端を探す方がずっと効率が良いのです。
また、警察庁幹部が、相談に来た人やその家族を「確実に保護します」と呼びかけています。警察がこのような保護を呼びかけることも異例であり、本気で保護しようと考えていると思われます。
まだ犯罪に手を染めていないなら、すぐ警察に助けを求めましょう。
凶器などを準備していた場合、強盗予備罪(刑法237条。2年以下の懲役)に問われる可能性は残りますが、自首も認められて刑が軽くなるでしょうし、起訴されないで済む可能性もあります。仮に起訴されても執行猶予が付く可能性もあります。
既に強盗に手を染めてしまった場合でも、すぐ警察へ申告すべきです。犯人が分かっていない状態であれば、自首が認められて刑が大きく減らされますし、そうでなくても量刑上非常に有利になります。
犯罪組織は、末端の人たちを、最初から使い捨てにするつもりです。特に詐欺や強盗は痕跡が残りますから、末端の人はいつかは必ず逮捕される時が来ます。
犯罪を重ねてから逮捕されてしまうと、先に説明したように、一生を刑務所の中で暮らすことになるかもしれません。
ですから、どのような段階であっても、すぐに警察に助けを求めるべきです。