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小さくて廉価で動画もしっかり 富士フイルム「X-M5」は3つの顔を持つカメラだった

2024年10月31日 19:31  ITmedia NEWS

ITmedia NEWS

コンパクトで廉価だけど作りはしっかりしている「X-M5」

 「X-M5」は、小さくて軽くてお気軽スナップ撮影やお気軽動画撮影に向いたカメラである。EVFを持たないコンパクトミラーレスって昔はいっぱいあったのだけど、ここんとこすごく減っていたから、パナソニックの「S9」に続き、富士フイルムからもX-M5が出たのは素晴らしいことだ。こういうのを待っていた、って人も多いに違いない。


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 個人的にはこれに薄型の単焦点レンズを付けてスナップカメラとして持ち出すのに向いてるかなと思って、XF 27mm F2.8をつけてみた。


●フィルムシミュレーションを楽しめるエントリー機


 X-M5には3つの顔がある。と勝手に思ってる。


 1つはエントリーユーザー向けの安くコンパクトで簡単な入門機的な顔。気負わずに気軽に手にできて、操作も簡単で分かりやすい。


 初めて買うカメラとしてハードルが低いのはいいことだ。EVFはないけど最近はファインダーがついてても覗かないで背面モニターで撮る人も多いから、特に問題はなかろう。


 操作系もシンプルだ。上面からチェックしよう。


 撮影モードダイヤルは「AUTO」にしたままでいい。AUTOのままでも右肩の電子ダイヤルを回せば露出補正できるし、フィルムシミュレーションダイヤルも使えるのだ。


 ダイヤルには8つのフィルムシミュレーション+カスタマイズできるポジションが3つある。合計11個(FSポジションはデフォルトのもの)で撮ってみた。ちょいと撮影時の天候がイマイチだったので差が分かりにくいのは申し訳ない。


 もう1つ、AUTOモードの時は被写体検出AFも「オート」になる点に注目。


 これは人物の例だけど(風景+人物)と出てる、動物に向けると動物アイコンが、電車に向けると乗り物アイコンが表示される。被写体検出はオートなのだ(逆に、PASMの各モードにすると被写体検出オートは使えない)。


 被写体を自動的に検出してそこにAFを合わせてくれるので細かいところはカメラにまかせて、フィルムシミュレーションと露出補正は自分でできるので、AUTOのままでOkなシーンはけっこう多い。


 レンズキットのXC 15-45mmもコンパクトな電動ズームだ。XマウントのレンズにはXFとXCの2つのシリーズがあるが、XCは廉価なモデルと思えばいい。質感はともかくとして軽くて安い。


 今回は基本的にオートモードで撮ってみた。とりあえずいつものガスタンク。


 人物もオートでいっちゃいます。


 電車もオートでちゃんと認識してくれた。レンズはXC 50-210mmの望遠ズームを使用。道外と認識するとシャッタースピードも上がるのがありがたい。


 ちなみにISO感度は最高でISO12800。拡張ISO感度としてISO51200まで上げられる。


 夜は夜景と認識してくれる。


 ただ、エントリーユーザー向けと思うと、ボディ内手ブレ補正が無いのは残念だ。


 イメージセンサーは約2610万画素の「X-Trans CMOS 4」。X-S20と同じだ。低価格なカメラとはいえ、ちゃんとX-Trans CMOS 4を積んでくれているのはよい。


●単焦点レンズを付けてスナップを撮りに行く


 もう1つの顔は、小型スナップカメラ。セカンドカメラとして、あるいは常時持ち歩くためのカメラとしてサイズといい価格といいちょうどいい。EVFがないのは残念だけど、最近はファインダーがついてても覗かないで背面モニターで撮る人も多いし、コンパクトさ重視の設計としては悪くない。


 富士フイルムはいくつかコンパクトで絞りリングを持つ単焦点レンズを持っているのだが、それがX-M5に似合うのである。同社のX100シリーズよりちょっとコンパクトだし、イメージとしてはリコーのGRに近い感じか。


 レンズの絞りリングとボディ側の2つのダイヤルを組み合わせれば使い勝手は悪くない。


 それらのレンズはレンズ内手ブレ補正を持たないが、シャッタースピードが速めにセットされるようなので、油断しなければ意外に大丈夫である。


 ちゃんとセッティングしたい人はPASMの各モードを使う。その場合、被写体検出AFの対象を自分でセットする必要はあるが、まあそれは普通のことだ。


 ちょっと面白かったのはケーブルレリーズに対応していること。シャッターボタンの真ん中にネジが切ってあるので試しにつないでみたら、ちゃんと動作しました。X-T5などでは昔から使えたけど、エントリー向けを標榜するX-M5でも生きているとはって感じ。


●実はお手軽動画カメラとしてもめちゃ優秀なのだった


 最初に、このカメラには3つの顔がある、てなことを書いたけど、3つめの顔はVLOGカメラ。


 富士フイルムが撮影モードダイヤルにVLOGポジションを付けたのはX-S20なのだけど、X-M5はX-S20以上に動画向きなのだ。


 EVFがなくてコンパクトだし、なんと長時間撮影用に冷却ファンも装着できる。


 マイク端子も背面にあってモニターの開閉や角度調節に干渉しない。


 スペックとしては6K/30fps、4Kなら60fpsまで対応。


 コンパクトなエントリー向けカメラという位置づけながら十分過ぎる性能だが、スペックよりVLOGモードに注目したい。


 VLOGポジションにし、MENUをタップすると画面がいきなりタッチパネル用のメニューで埋め尽くされる。これが便利なのだ。


 モニターをひっくり返して自撮りするときでも必要な機能にすぐアクセスできるのがよいのだ。


 背景ボケモードや商品撮影モード、美肌レベルなどもその場でセットできる。自撮り時以外でも便利である。


 静止画の時もAUTO時はこういうの出してくれればいいのにと思う。


 VLOGモードでの注目は2点。


 1つはマイク。指向性を設定できるようになった。


 もう1つはショート動画モード。これはいいアイデアだと思う。


 9:16にクロップして縦長動画を撮るというアイデアだ。


 これならカメラを縦位置にしなくてもいいし、キットレンズの15-45mmなら縦長にしても画角がそれほど狭い気はしない。


 もちろん1080×1920のフルHDサイズで撮れる。


 これで撮った動画をその場でスマホに転送してやれば、ショート動画を加工して仕上げるアプリはたくさんあるのでさくさくっと高画質なショート動画を公開できる。


 Wi-Fiだと接続に時間がかかって、という人にはUSBケーブルで直接つなぐという手がある。これだと転送も高速だし、Wi-Fiの接続を待つ時間も省略できる。


 かくして、エントリーカメラという位置づけだが、動画カメラとしてもコンパクトなセカンドスナップカメラとしてもなかなか使える、小さくて楽しめるカメラだったのだ。


 初めてのデジタルカメラとしてみると価格はそれなりに手頃だし、コンパクトで持ち歩きやすいし、AUTOモードのままでもけっこう使えるからおすすめだし、EVFなしとボディ内手ブレ補正なしが許容できるならコンパクトな単焦点レンズを付けてスナップ用セカンドカメラとしていい感じだし、なぜかケーブルレリーズも使えたりするし、VLOG用の動画カメラとしてもVLOGモードが使いやすいので、X-S20より向いてるんじゃないかと思う。


 ちょいとグリップが心許ないので手が大きい人だと使いづらいかもしれないけど、その辺は実物を触って確かめてみてほしい。


 わたしなら、小さくて軽い単焦点レンズ何本かと組み合わせて、フィルムシミュレーションを楽しむスナップカメラとして持ち歩きたいかな。