2024年10月31日 19:01 ITmedia Mobile
FCNTは10月31日、らくらくスマートフォンの新製品3機種を発表した。これまでドコモ専用だった「らくらくシリーズ」を初めて他社へ展開し、ドコモ向け最上位機「らくらくスマートフォン F-53E」、Y!mobile(ワイモバイル)向け「らくらくスマートフォン a」、SIMフリーモデル「らくらくスマートフォン Lite MR01」を投入する。
●F-53E、伝統の使いやすさを守りつつ大幅な性能向上を実現
F-53EはNTTドコモ向けの最上位機種で、2022年2月に同じくドコモ限定で発売されたF-52B以来、約3年ぶりとなる後継機種となる。
ユーザーからの強い要望に配慮し、ボタン配置や握りやすさ、らくらくタッチパネル、シャッターボタンといった基本設計は継承しながら、内部の刷新を図った。
新たにQualcommのSnapdragon 6 Gen 3プラットフォームを採用し、光学式手ブレ補正付きのソニー製IMX882センサー(約5030万画素)も搭載。
約5.4型のコンパクトなボディーに有機ELディスプレイを採用し、最大照度は従来比約1.3倍に向上。内部ストレージも128GBと倍増し、microSDXCは1.5TBまでをサポートする。
文字フォントも従来のUD新丸ゴに加え、新たにUD黎ミンを追加し、視認性の選択肢を広げた。本体サイズは約71(幅)×151(高さ)×9.3(奥行き)mm、重量約172gとコンパクトに仕上げている。
NTTドコモ プロダクトマーケテイング本部プロダクトクリエイション部長の佐々木健三郎氏は「らくらくシリーズは1999年の初代から20年以上、FCNTとともにお客さまに寄り添ってブランドを育ててきた。今回もユーザーの声を大切に、使い勝手はそのままに、画面の明るさや新フォントの追加など、さらなる進化を実現した」と紹介する。
●「変えない」ことへのこだわりが大きな挑戦だった
FCNTで商品企画を担当する外谷一磨氏によると、F-53Eは「変えない」ことへの徹底的なこだわりが大きな挑戦だったという。特に中央カメラの配置は、基板に大きな穴を開ける必要があり、他の部品をコの字型に配置せざるを得ない。
通常のスマートフォンは端にカメラを寄せることで部品配置を単純化できるが、あえて中央配置を維持することで、パズルのような高度な設計が必要になった。「どちらの手で持っても安定して撮影できる」というユーザー目線の価値を優先した結果だ。
また、現在のスマートフォン市場では6型超が主流となる中、あえて5.4型サイズにこだわったため、有機ELディスプレイを特注で開発する必要があった。
ユーザー調査で徹底的な検証を行った結果、「ある一定の大きさの画面は欲しいが、本体の重量とサイズが上がるのは避けたい」というニーズが明確になり、この絶妙なサイズに落ち着いたという。この「最適解を守り抜く」というこだわりは、「ハイエンドの開発なみ」の技術的チャレンジだったという。
●Y!mobile初参入、積極的な価格戦略で新規開拓へ
らくらくスマートフォン aは、MediaTek Dimensity 7025プラットフォームを採用した約6.1型ディスプレイのモデル。らくらくスマートフォン独自のホームランチャーやUI(ユーザーインタフェース)を継承しながら、ハードウェアは一般的なスマートフォンに近い仕様を採用している。
本体サイズは約73(幅)×162(高さ)×9.0(奥行き)mm、重量約185gで、4500mAhの大容量バッテリーを搭載。メインカメラは約5010万画素(F1.8)、インカメラは約800万画素(F2.0)。メモリは4GB、64GBストレージで、microSDXC(最大1TB)にも対応する。
F-53Eの特徴である感圧式タッチパネルは採用していないが、Googleアシスタントキーを新たに搭載し、長押しでGoogleアシスタントを起動、短押しでは画面の拡大機能として利用できる。
ソフトバンク LINE&ワイモバイル事業推進本部長の有馬英介氏は「シニア向けスマホの先駆者であるFCNTとパートナーシップを組み、安心して使える端末とサービスを提供したいと考えた。料金面でも踏み込んだ価格設定とした」と説明する。
Y!mobileでは他社からの乗り換え(MNP)時には9800円(税込み、以下同)という積極的な価格設定を打ち出した。通常価格は3万1680円となっている。
24時間365日利用可能な健康相談サービス「かんたんHELPO」や、フレイル対策アプリ「うごくま」といったY!mobile独自のサービスも特徴となっている。着信時の機能として、迷惑電話番号の警告表示やハローページ掲載番号の表示機能が行えるのもY!mobile独自だ。
●らくらく初のSIMフリー戦略、ドコモでも販売
らくらくスマートフォン Lite MR01は、らくらくシリーズ初のSIMフリーモデル。らくらくスマートフォン aと同様、独自のホームランチャーやUIを搭載しつつ、ハードウェアは一般的なスマートフォン寄りの使用だ。想定価格は5万円程度だ。
SIMフリーモデルとしてIIJmioやLIBMOといったMVNO各社、家電量販店でも取り扱われる。
興味深いのは、NTTドコモもこの機種を取り扱う点だ。ドコモの型番規則を採用せず「らくらくスマートフォン Lite MR01」として販売する。NTTドコモのアプリへの対応については、発売後に公表予定としている。
NTTドコモ広報は「お客さまの多様なニーズにお応えするため、ラインアップ拡充を目的に、SIMフリー機種を取り扱うことにいたしました。またドコモ独自機能への対応については、現在確認中となり、販売開始までにはドコモサイトにてお知らせいたします。基本的にはドコモサービス・機能をお使いになりたいお客さまは、F-53Eの購入をお勧めいたします」と説明した。
基本仕様はY!mobile版とほぼ同一で、MediaTek Dimensity 7025、約6.1型ディスプレイ、4500mAhバッテリーを採用。メモリ/ストレージ構成(4GB/64GB)やカメラ仕様(メイン約5010万画素、インカメラ約800万画素)も共通だ。こちらもF-53Eの感圧式タッチパネルは採用せず、Googleアシスタントキーを搭載している。
●3機種とも電池長持ち技術や自律神経計測を搭載
3機種はいずれもQnovoとの共同開発による電池長寿命化技術を採用し、4年後でも初期容量の80%を維持するとしている。防水・防塵性能やまる洗い対応といったらくらくシリーズの特徴も継承している。
振り込み詐欺対策として、通話中に振り込みや暗証番号といった特定のキーワードを検知すると警告を表示し、会話を自動で録音する機能も搭載している。
また、2024年8月に発売されたarrows We2 Plusから搭載された自律神経活性度測定機能を全機種に採用。背面カメラ下のセンサーで指先のバイタルデータを読み取り、自律神経パワーと自律神経バランスを計測できる。測定結果は「ララしあコネクト」アプリで管理でき、京都大学名誉教授の森谷敏夫氏監修による改善アドバイスも提供される。
●らくらくホンとらくらくスマートフォンの2つは維持する
新製品の発表に合わせ、FCNTは将来の製品展開についても言及した。フォルダブル(折りたたみ)スマートフォンについて桑山副社長は「相性はいいと思うが、使いやすさが本来の目的。それにフィットするようであればチャレンジしたい」と前向きな姿勢を示した。ただし現時点では価格面がネックとなっており、市場の成熟を見極めながら検討するとしている。
フィーチャーフォン型の「らくらくホン」については「形は変わるかもしれないが、供給を継続したい」(外谷氏)と述べた。シニア向けインフラの一部として「必要な限り提供できるよう頑張りたい」とし、開発にも「ハイエンド並み」のリソースを投入。らくらくホンとスマートフォン、2つの選択肢を維持する方針だ。
海外展開については「ニーズはある」としながらも、「国内の新製品を出してから次のステップで考える」(桑山氏)と慎重な姿勢を示している。
らくらくスマートフォンシリーズの累計販売台数は約900万台。2000万人ともいわれるスマートフォンの使いこなしに不安を持つシニア層に向けて着実に普及が進みそうだ。