2024年10月31日 10:50 弁護士ドットコム
「闇バイト」と見られる強盗被害が首都圏を中心に相次ぎ報じられ、不安や対策への関心が広がっている。
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今年10月には横浜市の住宅で高齢男性が手足を縛られて死亡しているのが見つかった。逮捕された21歳の男性は「闇バイト」だったとみられる。
弁護士ドットコムが「闇バイト」被害の経験を募ったところ、80代の母親を持つ女性から、事件のショックで親が認知症のような状態になったという悲痛な声が寄せられた。
また、家族や自分を闇バイトの強盗から守るため、木刀を用意した人もいる。他人事ではなく、「身の回りにある危機」として捉えている人が少なくない。
闇バイトが絡む強盗事件では、事前に業者などを装う不審な人物が目撃されていることから、日々の生活における警戒心の強まりがみられる。
闇バイトの問題をめぐり、弁護士ドットコムのLINEにさまざまな声が寄せられた。
「この半年、若い男性が『不要品回収』と訪問してくることがたびたびあった。インターフォンのモニターに映らない位置に立つので、気味が悪かった」(女性・50代・横浜市)
「車にヤンチャっぽい男が複数人乗っていて、窓から大声で奇声を発して急ブレーキをかけながら私の家の前に車を停めた。同時に後ろのスライドドアが開く音がして恐ろしくなり慌てて鍵を閉めて通報した。警備会社の緊急ボタンを握りしめながら電話をかけていると車は走り去った」(女性・40代・福岡県)
そうした不安から、闇バイトに対抗するべく、防犯カメラや木刀などを用意した人もいる。暴漢に抵抗した場合、正当防衛になるのかと尋ねる声も少なくない。「自衛」への血生臭い覚悟も芽生えつつある。
「闇バイトが横行していますが、対策を考えて木刀など用意しました。もし押し入って来たときに揉み合って、私が犯人を殺してしまった場合、有罪でも執行猶予がつくのでしょうか」(男性・50歳・千葉県四街道市)
「強盗が来た際に、暴力で撃退した場合の正当防衛と過剰防衛の線引きを教えてください。ハサミや包丁で反撃して、強盗が死に至った場合は? 自分や家族を守りたいけど、過剰防衛で起訴や有罪になるリスクを考えたら、本気で撃退できないという人がたくさんいると思いますし、実際に知り合いに何人かいます」(男性)
【正当防衛に関して参考になる記事】→
〈強盗に入られたら、どこまで反撃していい? 94年前にできた「盗犯等防止法」が定める正当防衛の基準〉
警察や民間でも夜回りを強化してほしいという意見が届いている。
強盗や振り込め詐欺など、闇バイトの被害にあった人たちは、金銭的な被害だけではなく、心にも深い傷を及ぼす。
あるアミューズメント施設で働いていた女性は、新型コロナが流行する前に、職場が強盗に襲われる被害に巻き込まれた。
「閉店後、お金を事務所に持って行くところで、一緒にいた事務員と強盗に襲われました」
2人の男から売上金の入ったバッグを強奪された事務員の男性は顔面から流血したという。
幸い女性のケガはかすり傷で済んだが、覆面をかぶった男に後ろからつかみかかられ、精神的なショックなどもあり、しばらくして仕事を辞めたという。
1000万円以上を盗んだ犯人たちは後日逮捕された。元従業員が主犯としてSNSで「闇バイト」「裏バイト」として仲間を募ったことが明らかになった。
福岡県在住の50代女性は、遠方に一軒家で独居する80代の母親が「オレオレ詐欺に引っかかり150万円盗られた」と明かす。
女性によると、母親は昨年、犯人の指示のもとで銀行から金を引き出し、渡してしまったという。
再び狙われる可能性を警察から指摘されたことで、女性は母親の固定電話を解約。さらに、玄関には防犯カメラ、室内には見守りカメラなどを設置した。
しかし、金銭的な被害以上に深刻だったのは、事件による精神的な影響だった。一気に認知症のような症状になり、困っているという。
「被害の直前まで認知機能には、まったく問題がなかったのに、急に言葉が出てきにくくなり、10秒くらいで物事を忘れてしまうようになりました」
「母は、性格も多重人格のようになり、見たこともない形相で怒り出したりするようになりました」
母親の記憶では、受け子役は茶髪の男だったようだが、「詐欺にあった当日の様子の記憶がまだらで、警察に明確に説明できない」と嘆く。
慎重な性格だったのが嘘のように変わり、「インターホンが鳴っても、人を確認せずに出てしまうようになってしまい、もし再び悪い奴が来ても出てしまいそうで怖い」と話す。
「闇バイト犯罪者たちの今回のような強盗殺人も、許されることではなく激しい怒りを感じますが、うちの母のようにお金を盗られたショックで、心がおかしくなってしまった人間もいるということをお伝えしたいのです。
もっと罪を厳しくしないと、目の前の儲け話しか見えてない愚か者の奴らには罪深さが伝わらないのではないかと強く思います」