2024年10月30日 17:50 弁護士ドットコム
AKB48の元メンバーで、タレントの小嶋陽菜さんに抱きついて押し倒したとして、ファンとみられる男性が暴行の疑いで警視庁に現行犯逮捕された。
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報道によると、男性は10月29日、東京・渋谷の路上で、写真集発売イベントのあとに会場から出てきた小嶋さんに抱きついて押し倒した疑いが持たれている。
警視庁には8月上旬、小嶋さんの関係者から「イベントで大騒ぎする過激なファンがいて困っている」という相談が寄せられていたそうだ。
小嶋さんの所属事務所は10月29日、公式サイトで声明を発表。「小嶋陽菜に怪我はありませんでした」としつつも、法的措置をとることを明らかにした。
今回の逮捕容疑は「暴行罪」であるが、他の罪に問われる可能性はないのだろうか。濵門俊也弁護士に聞いた。
まず、逮捕された男性の行為は、小嶋さんに後ろから抱きついて押し倒すというものですから、不同意わいせつ罪(刑法176条)にあたる可能性があります。
報道によると、男性は「暴行を加えるつもりはなかった」と供述していることから、性的意図はないように思われます。
この点に関して、最高裁判所はかつて、強制わいせつ罪の成立に性的意図が必要であるとしていました(最判昭和45年1月29日)。
しかし、最高裁はその後、一律に性的意図を要件とすることは相当でないとして、判例変更しています(最判平成29年11月29日)。
つぎに、男性は被害者のファンだったようですから、ストーカー規制法違反にあたる可能性もあります。
ストーカー規制法は、ストーカー行為(同一の者に対して、つきまとい等を反復してすること)をした人について罰則規定を置いています。
この法律は、軽犯罪法で処罰の対象となっている行為(軽犯罪法1条28号〔追随等の罪〕や軽犯罪法1条5号〔粗野・乱暴の罪〕)よりも悪性の強い行為を処罰するものです。
ストーカー規制法違反が成立する場合には、軽犯罪法1条28号や5号の罪は成立しないとされています。また、軽犯罪法1条28号や5号の罪は、暴行罪(刑法208条)に吸収されることとなります。
今回の事件は、東京・渋谷区で発生していることから、東京都迷惑防止条例5条の2(つきまとい行為等の禁止)違反の可能性もあります。
この規定では、特定の者に対するねたみ、恨みその他の悪意の感情を充足する目的の行為を処罰対象としており、軽犯罪法1条28号と保護法益をやや異にしています。
また、処罰の対象とする行為も、つきまといや、進路に立ちふさがる行為だけでなく、「住居等の付近において見張りをし、又は住居等に押し掛けること」といった、軽犯罪法1条28号で処罰の対象としていない行為を規定していることから、両罪ともに成立し、観念的競合(1つの行為で2つの犯罪が成立するが、科刑上は1つの罪とされる)の関係に立つと考えられます。
【取材協力弁護士】
濵門 俊也(はまかど・としや)弁護士
当職は、当たり前のことを当たり前のように処理できる基本に忠実な力、すなわち「基本力(きほんちから)」こそ、法曹に求められる最も重要な力だと考えております。依頼者の「義」にお応えします。
事務所名:東京新生法律事務所
事務所URL:https://www.hamakado-law.jp/