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中学生が「自分」の飛び降りる動画投稿か…SNSや匿名掲示板で拡散、学校や教育委員会はどう対応すべき?

2024年10月30日 10:10  弁護士ドットコム

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横浜市の中学校に通う生徒とみられる男性が自殺を企て、X(旧ツイッター)のアカウントで、自身の飛び降りシーンを映した動画を投稿した。アカウントは凍結されたが、動画は匿名掲示板を通じて拡散し続けている。(ライター・渋井哲也)


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●投稿翌日には「300万回」再生されていた

投稿された動画は、白い体操服を着た男性がカメラをセットしたような場面からはじまる。建物の手すりから下を覗き込み、身を乗り出して転落する様子が映っているほか、落下音も入っている。



実際に男性が飛び降りたのであれば、投稿は自動設定したものとみられる。動画は10月18日付で、翌日には約300万回再生された。アカウントは早めに凍結されたが、匿名掲示板で話題となった。



●中学校は「個人情報のため話せない」

Xでは、過去に自傷行為をおこなったり、自殺願望を持ったりしたことのあるユーザーが、個人的な体験を共有できるようにしている。



一方で、自傷行為を助長したり、教唆する可能性がある投稿は、閲覧によるリスクから他のユーザーを保護するために禁止されている。違反した場合、アカウントが永久凍結される可能性もある。



これまでにも、中高生が自殺の様子を動画配信した例は複数ある。動画の中や匿名掲示板、SNSなどで、自殺の動機となる話を載せているケースがほとんどだ。



今回の場合、氏名や住所(番地までは書かれていない)のほか、中学校名が載っている。また、自撮り写真を「遺影」としている。飛び降りることになった動機と思われる内容も記されている。



この動機と思われる内容は、一見すると「恋愛のトラブル」のように見えるが、いたずらやいじり、いじめ被害にも思える。いずれにせよ、真偽は不明である。



中学校に問い合わせると、「事実かどうかを含めて、個人情報のため、話せない」(副校長)。また、市教委にも聞いたが、「こちらとしては関与していない」(人権教育・児童生徒課)と述べるにとどまった。



●学校や教育委員会は「知らない」では通せない

自殺予防教育に詳しい中央大学客員研究員・高橋聡美さん(精神看護学)は、JR横浜駅近くの商業施設で女子高校生による飛び降りがあったことから気を配っていた時期でもあったため、驚きを隠せない。



「たしかに自殺の動機らしきものは(SNS上に)書いてあります。何かを訴えたかったのかもしれませんが、それが自殺理由なのかははっきりしません」



今回の場合、Xで動画が拡散されて、アカウント凍結になったものの、いまだに匿名掲示板を通じて拡散されている。生徒とみられる男性の安否は不明だが、学校や教育委員会はどのように向き合うべきか。



「学校や教育委員会は、クラスや学年に対する説明をどのようにしていくのか、情報をどこまで開示するのか、もし亡くなっていた場合は、どんなふうに他の生徒に伝えるのか、遺族の意向に沿うのが、基本だと思います。



ただし、同じ学校の生徒はすでに動画投稿を知っているかもしれません。検索すれば出てきます。そのため(投稿の事実を)隠すこともできません。この点が、他のケースとは違うし、すでにたくさんの関係者たちに大きな衝撃を与えているはずです。



そのため、学校や教育委員会は『知らない』では通せないでしょう。投稿内容が事実であるとすると、学校に来ていないとか、飛び降りた周辺では救急車が来るなどして騒動だったはずです。状況的に説明せざるを得なくなると思います」



もしも恋愛関係のトラブルとして、学校や市教委はすべきことがあるのだろうか。



「最近のいじめやトラブルは、SNSなど、見えにくいところで起きていることもあります。なおかつ、匿名性が高く、相手を特定できないこともあります。相手が『同じ学校の在校生ではない』とか『居住市町村が異なる』場合は、学校や教育委員会は対応ができない。学校や教育委員会は何もわかりません。今の時点では、こうすべきというのは見えてこないです」



飛び降りの動機となったと思われる書き込みでは、ニックネームのようなものが記されていた。



「書かれている子が心配です。どういう関係なのか、はっきりしませんが、少なくとも本人はわかっているでしょうから、その子のケアが必要です。また、トラブルの相手は名前があがっていませんが、心当たりのある子は、すぐに大人に相談するなど話したほうがいいと思います」



●噂が広がっている場合は「報告」を考える必要がある

一般論として、中学生が自殺した場合、文部科学省の「指針」によって、すでに収集している情報をもとに、学校が基本調査をすることになっている。今回のケースでも亡くなっている場合、一定の調査が進められることになると思われる。



仮に、いじめの可能性がある場合、いじめ防止対策推進法による「重大事態」調査に移行する。いじめの可能性がない場合でも、学校生活に起因していれば、遺族の意向に沿いながら、背景調査をするかどうかを検討する必要が出てくる。



「調査の手順は遺族の意向によります。遺族が『触れてくれてほしくない』とか、『安否を含めて黙っていてほしい』という場合もあります。これを無視すると、二次被害になってしまいます。一方で、ある程度、学校内で噂が広がっている場合は、弊害が大きくなることもあります。



そのときは、遺族と学校、市教委で話し合って、どうやって報告するかを決めておく必要があります。自殺が起きたあとの軸足は『もうこれ以上、誰も傷つかない』ということです。スクールカウンセラーが在校生のケアをすることはもちろんのこと、関わりのあった先生方にもケアが必要です」(高橋さん)