2024年10月27日 08:31 弁護士ドットコム
山口県光市の住宅に強盗に入ろうとしたとして、関東地方に住む14歳から18歳の少年3人が強盗予備の疑いで逮捕された。
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報道によると、少年たちはマイナスドライバーや粘着テープを所持していたという。また、互いに面識はなく「闇バイト」に応募して集まったとみられる。
今回の事件で逮捕容疑となった強盗予備はどのような罪なのだろうか。そして、3人の少年たちは今後どうなるのか。坂口靖弁護士に聞いた。
強盗予備は「強盗の罪を犯す目的で、その予備をした者は、二年以下の懲役に処する」(刑法237条)と規定されている犯罪です。
この犯罪が成立するためには、まず「強盗の罪を犯す目的」が必要であり、それは確定的なものである必要があると考えられています。
また、「予備」とは単なる計画や謀議だけでは足らず、強盗の決意を外部的に表現するような行為がされたという状態だと考えられています。
具体的に強盗予備が成立する場合としては、「強盗の実行を決意して、凶器を携えて目的地に向けて出発する行為」「強盗を共謀して、出刃包丁等を買い求め、これを携えて徘徊する行為」などと考えられています。
実際に暴行や脅迫行為に及んだような場合には、強盗未遂罪が成立するため、強盗予備罪は、強盗の実行行為そのものには着手していないものの、上述ように一定の強盗の準備行為がされたと評価できる場合に成立する犯罪となります。
強盗は5年以上の懲役刑とされている極めて重大な事件となります。
このような強盗事件の重大性に鑑みて、強盗予備罪も規定されたものとなります。
しかし、強盗予備罪は、いまだ強盗の危険の発生は抽象的なものに留まるため、その法定刑は2年以下の懲役というようにそこまで重い量刑とはなっていません。
この点、報道の少年3人は、「互いに面識がない」にもかかわらず「住宅街に集まって侵入用の工具などを持っていた」とのことであり、「強盗を共謀して、進入用の工具を携えて集合していた」と評価しうるものと考えられ、強盗予備罪が成立する可能性は十分に認められるように考えられます。
ただし、前述のような強盗予備罪の比較的軽い法定刑から、18歳以上の特定少年であったとしても、原則逆送事件ではないため、通常の少年事件として、基本的には保護観察処分や少年院送致処分という保護処分となる可能性が高いと想定されます。
ただし、強盗の予備に留まらず強盗の実行にまで着手してしまったような場合には、強盗未遂罪、強盗罪等が成立することとなり、18歳以上の特定少年であれば、原則的に逆送されてしまい、成人と同様に刑事罰を受けることとなってしまう可能性が高い状況となってしまうところです。
強盗は、暴行脅迫を用いて財物を奪う犯罪であり、犯罪を実行するという興奮状態の中、暴行等を用いるものであることから、被害者が負傷したり、場合によっては死亡してしまうようなことが容易に起こりえます。
そのような結果が発生してしまった場合、その事件の重大性から特定少年はもちろんのこと、16歳や17歳の少年であったとしても逆送され、成人と同様に刑事罰を受けることにもなる可能性があるため、絶対に強盗予備も含め強盗行為には関わらないようにしてほしいところです。
【取材協力弁護士】
坂口 靖(さかぐち・やすし)弁護士
大学を卒業後、東京FM「やまだひさしのラジアンリミテッド」等のラジオ番組制作業務に従事。その後、28歳の時に突如弁護士を志し、全くの初学者から3年の期間を経て旧司法試験に合格。弁護士となった後、1年目から年間100件を超える刑事事件の弁護を担当。以後弁護士としての数多くの刑事事件に携わり、現在に至る。YouTube「弁護士坂口靖ちゃんねる」 <https://youtube.owacon.moe/channel/UC0Bjqcnpn5ANmDlijqmxYBA> も更新中。
事務所名:プロスペクト法律事務所
事務所URL:https://prospect-law.com/