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日向坂46四期生『ゼンブ・オブ・トーキョー』 「限られたファン向け」のイメージを捨てて見てほしい青春映画

2024年10月26日 20:11  クランクイン!

クランクイン!

映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』場面写真 (C)2024映画「ゼンブ・オブ・トーキョー」製作委員会
 日向坂46の四期生が総出演する映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』が公開を迎えた。修学旅行で憧れの東京を訪れた“クセつよ女子高生”にふんするメンバー11人が、本格的な演技に初挑戦した本作の見どころを紹介する。

【写真】ファン以外も見てほしい 映画『ゼンブ・オブ・トーキョー』場面カット

■87分の全編は「ハイテンポな青春ロードムービー」に

 本作は、『私の男』を手がけた、熊切和嘉監督による青春群像劇。高校生活の一大イベントである修学旅行で、東京のすべてを楽しもうと計画を立てた班長(正源司)と、東京行きに対し異なる思いを胸に秘めた班のメンバーを描く。

 アイドルの映画ともなると「限られたファンが見るもの」と、先入観を抱く人もいるだろう。しかし、本作はそんなイメージとは一線を画す。87分の全編を一文で表現するなら「ハイテンポな青春ロードムービー」がふさわしく、次々と巻き起こる劇中での騒動に「どうなっちゃうの?」と、グッとひきこまれる。
 
 本格的な演技に初挑戦したメンバーのセリフ回しも常に軽快で、聴いているだけでも心地よい。演技なのか、素なのか。境目が分からなくなるほど、作品に自然と溶け込んでいる。
 
 例えば、5月リリースの11thシングル「君はハニーデュー」で初の表題曲センターを託されて以降、エースとしての躍進が目立つ映画初主演の正源司陽子が、それぞれはぐれてしまった班員とスマホでやり取りする序盤のシーン。
 
 見知らぬ土地でさまよう班員からのメッセージに、正源司演じる主人公の池園優里香がポロッと「Netflixオリジナルの世界観じゃん」とツッコむ一幕では、思わずクスッと笑ってしまう。

■藤嶌果歩&竹内希来里のかけ合いで呼び起こされる“淡い恋心”


 劇中の自然なかけ合いはどれも心温まるものばかりだが、9月リリースの12thシングル「絶対的第六感」で正源司とのWセンターで自身初の表題曲センターを託された藤嶌果歩の演じる羽川恵、そして、竹内希来里の演じる辻坂美緒が、かけ合うシーンも強く印象に残る。
 
 修学旅行は“恋心を実らせるチャンス”とばかりに、街中で憧れの男子生徒を追いかける2人。神社の境内では、男子生徒を陰から見守る2人が、じつにコミカルにやりとりを繰り広げる。
 
 映画公開に向けたインタビューでは、撮影中に実際の街中で「『この子たち、大丈夫?』みたいな目で周りから見られて、恥ずかしかったです(笑)」と藤嶌がはにかんでいたが、リアリティある演技もあいまって、青春時代の淡い恋心すらも呼び起こされる。
 
■本作の“もう1人の主人公”渡辺莉奈を中心に描かれる絆
 
 ある夢を追いかける“もう1人の主人公”といってさしつかえない、最年少メンバーの渡辺莉奈が演じる桐井智紗のくだりも、本作に流れる青春要素を凝縮している。
 
 序盤から中盤にかけては正源司がメインで、終盤にかけては渡辺がメインとなる印象の本作。渡辺の演じる智紗の夢が、あるハプニングによって途絶えそうになりながらも、一致団結したメンバーが仲間のために力を合わせる展開には胸が熱くなり、演技を超えた四期生の絆すらも感じさせてくれる。
 
 青春とは何だったのか。年齢を重ねるにつれて、記憶が薄れゆくのは仕方ないのかもしれない。しかし、日向坂46の四期生が真剣に演技と向き合った本作の鑑賞後には、忘れていた気持ちをわずかながらも取り戻せる。東京の各所も巡りたくなるこの映画は、誰もが味わったことのある青春に寄り添ってくれる作品だ。(文:カネコシュウヘイ)