「週刊少年ジャンプ」で連載され、シリーズ累計発行部数は1億3000万部を超えるなど完結後も世界中で根強い人気を誇る、久保帯人による剣戟バトルアクションコミック『BLEACH』。そのアニメのファイナル・シリーズとして展開している『BLEACH 千年血戦篇』の第3クール『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』が、テレ東系列ほかにて毎週土曜23時より放送されている。「相剋譚」では、死神と滅却師(クインシー)による、現世・尸魂界・虚圏の三界の存亡を賭けた戦いがいよいよ佳境に。黒崎一護役・森田成一と石田雨竜役・杉山紀彰にインタビューし、敵対してしまった2人について、またシリーズ最終章の後半戦に突入したことへの思いなどを聞いた。
【動画】「僕たちの中で一護や雨竜は生き続ける」森田成一&杉山紀彰が物語完結への思いを語る!
■一護&雨竜については「言葉にできない」語らずとも理解し合える関係性
――第2クール「訣別譚」では、原作ではなかった平子の卍解が描かれたりと見どころがたくさんありました。お2人がとくに注目したシーンは?
森田:卍解のシーンをピックアップするのであれば、朽木ルキアの卍解ですね。「白霞罸(はっかのとがめ)」は原作で読んだ時にすごくキレイだと思ったので、アニメになった時にどんな表現方法になるのか楽しみにしていました。『BLEACH 千年血戦篇』は、新しい技術がたくさん盛り込まれた、最先端の表現が集結したアニメーション。その技術で作られた「白霞罸」を実際にオンエアで見て、期待通り……いや、それ以上のすごいものが見られました。
杉山:僕が印象に残っているのは、修多羅千手丸の「娑闥迦羅骸刺絡辻(しゃたつからがらしがらみのつじ)」です。田口智久総監督が仰っていたのですが、CGを使うとどうしてもセルの絵との違和感が生じてしまうそうです。「娑闥迦羅骸刺絡辻」のシーンでは、その違和感を“空間の異質さ”という表現の一種として利用しているそうで、「そんな使い方があるのか!」と驚いたことを覚えています。
―― 一護と雨竜が再会し、敵として対峙するシーンも。2人の相剋が本作の大きなポイントになっていますが、一護と雨竜はお互いをどう思っているのでしょうか。
森田:それについてはよく聞かれるのですが、今まであえて言葉にしてきませんでした。というよりも、言葉にできない部分が大きいような気がします。作品においても2人の友情を最大のトピックとして出しているわけではなくて、後ろで伴奏のように流れているような。改めて聞かれても、言葉にするのはとても難しいです。また、今さら2人の友情について語ろうとすると、喉の辺りが痒くなってくるような感覚があります(笑)。
杉山:本当にそうですよね(笑)。現実でも、本当に気心が知れて仲の良い関係性の人とは「俺たち仲良いよね!」と確認し合わないのと同じ感覚かなと思います。一護と雨竜がそういった会話をしないということは、過去の行動やこれまで積み重ねてきた関係性から、考えなどを理解し合えているからではないかと思います。
――森田さんと杉山さんは、「一護と雨竜の関係」に対して抱いている思いなどはありますか?
森田:一護は色々なキャラクターとタッグを組むことが多いです。井上織姫や茶渡泰虎、志波岩鷲、朽木ルキア、阿散井恋次など、初期から登場しているキャラクターと組むこともたくさんありますが、その中で雨竜とは「一番正体が知れないタッグ」だと思います。しかし、物語がスタートした当時から2人には「背中合わせ」というワードがあって、それは変わっていないように感じています。
杉山:一護がどういう人物で、どういう価値観、考え方、優しさを持っているか知っているからこそ、自分がやろうとしていることを話したらどういう行動に出てしまうかがわかってしまう。だからこそ、雨竜は一護に言えないことがあるのだと思います。関係性の深さから来るすれ違いもあるのだなと、一護と雨竜を見て感じました。
――そんなモヤモヤしたまま終了した第2クール。約1年経って、ついに第3クール「相剋譚」で続きが描かれます。
森田:思ったよりも待たせてしまいましたね。しかし、皆さんをお待たせする分、それだけのクオリティを出せるということが、これまでの2クールでおわかりになられたと思うので、第3クールの期待値はそれ以上に爆上がりしているのではないでしょうか。『BLEACH』は国内のみならず世界中にファンがいる作品なので、皆さんがどれだけ熱狂してくれるのか楽しみです。
杉山:分割4クールということで、「起承転結」という言葉がありますが、この第3クールは「転」にふさわしい盛り上がりを見せてくれると思います。次々に展開が転がっていくので、第3クールもぜひ最後まで見届けていただきたいです。
――先ほど卍解の描写でも触れていましたが、作画のクオリティには毎回驚かされます。
杉山:たった数秒のシーンでもこんなに高クオリティの絵なのか!? と思いますよね。
森田:普通のTVアニメは1話250カットくらいだと思います。それが『BLEACH』は約400カットある回もあるんです。コンマ何秒のところにすごいアイデアや技術が使用されているんです。第28話で瀞霊廷から少しずつカメラを引いて行くと、実はその瀞霊廷は水たまりの中に映っていた虚像だったというシーンがありました。そういった細かい演出で世界観を表現しているからこそ、見ている方たちもまるでその場所にいるかのような没入感が得られるのだと思います。
■「僕たちの中で一護や雨竜は生き続ける」物語完結への思い
――作画はもちろん、藍染惣右介やグリムジョー・ジャガージャックと共闘するというファン歓喜な展開も待っています。お2人が思う、第3クールの見どころは?
森田:藍染とは何度も戦って、最終的には一護が勝利するという形で決着はついていましたが……椅子に拘束されて、色んなものを禁じられているはずなのにめちゃめちゃ強い!「藍染最強じゃん!」と思っちゃいました(笑)。まさか霊圧だけでなんとかしてしまうなんて。黒棺まで出しちゃいますし。
杉山:速水奨さんの声も相まって、尋常ならざる強さに感じました。
森田:グリムジョーは、あのままずっと元気だったんだなと(笑)(※「破面篇」にて生死・消息共に不明となっていた)。相変わらずヤンチャで、止めるのも聞かずに突っ走っていく姿を見て「こういうところが好きだったんだよな」と思い出しました。
杉山:原作にはない、アニメでしか描かれない戦闘シーンの数々も見どころです。死神と滅却師(クインシー)との関係性という大筋のストーリーはもちろん、やはりバトルシーンは欠かせない。原作では数コマで終わっていたところが、アニメではオリジナルカットを加えて、より見ごたえあるシーンになっています。
森田:昔から『BLEACH』は戦闘シーンが高速なんです。なので、アフレコが大変なんです。台本を見ていたら追いつかなくなるので、セリフを覚えて絵だけを見て声を入れています。しかし、今回の「千年血戦篇」は想像をはるかに超えていて、一護たちの動きについていくだけでもかなり大変でした。
――シリーズ完結となる第4クールへ向けての物語。改めて、今作にどのような思いで臨んでいますか?
森田:実は、不思議とそんなに肩肘張っていないんです。「千年血戦篇」のアニメ化決定を聞いた時に「アニメ『BLEACH』が終わるんだ」という風には思ったのですが、そこに感慨のようなものはなくて。それより、やりきることができるんだという喜びの方が大きかったです。
杉山:わかる気がします。
森田:僕は一護と共に成長してきました。なので、最終回を迎えた時に「僕はどうなっているんだろうか」と。自分の中で長年追い求めていた一護の姿があるので「最後にその姿が見られるのだろうか」という期待感しかありません。また、これから第4クールにかけてアフレコは続きますし、終わった時のことを考えると芝居に影響が出てしまいそうです。一護が「今」感じたことを演じることが一番いいことだと思っています。
杉山:僕も「終わっちゃうんだ……」というような気持ちではありません。森田さんと同じく、最後まで演じ切れることに感謝しています。視聴者の皆さんに最後までアニメ『BLEACH』を届けられる嬉しさの方が大きいので、寂しい気持ちはないですね。
森田:たとえ物語が終わったとしても、僕たちの中で一護や雨竜は生き続けますしね。今はただ、早く最後まで演じきりたい、という思いです。
(取材・文:米田果織 写真:吉野庫之介)
アニメ『BLEACH 千年血戦篇-相剋譚-』は、テレ東系列ほかにて毎週土曜23時放送。