Text by 今川彩香
10月27日、衆議院選挙の投票と合わせて行なわれる「国民審査」。最高裁判所の裁判官としてふさわしいかどうかを、市民が投票によって判断するというものだ。
投票所へ足を運ぶと、衆院選の投票用紙と一緒に、裁判官の名前が並んだ国民審査の投票用紙を渡される。有権者のなかには衆院選の投票先を考えるのに精一杯で、国民審査のほうのリサーチを失念していた……という経験をした人も、一定数いるかもしれない。
そもそも国民審査とはどんな制度で、何を見て判断すればいいのだろう? その概要から、今回の審査に関する情報まで、簡単にレポートする。
国民審査とは、すでに任命されている最高裁判所の裁判官について、市民が「ふさわしくない」と評価した人を罷免させることができる制度のこと。
そもそも最高裁判所は、国の法律や行政の処分が憲法に違反していないかどうかを最終的に判断する権限を持っていて、「憲法の番人」とも呼ばれる存在だ。その裁判官15人のうち8人が「違憲」の判断をすれば、法律を事実上無効にできるほど。
だから国民審査は、それほどに強い権限と重大な責任を持つ最高裁の裁判官に対して、国民の視線を行き届かせ、評価するという仕組みとなっている。
投票用紙には、やめさせたい裁判官がいた場合、その人の欄に「×」を書く。白紙で投票すると、それは「全員信任」という意味になる。
「×」が有効投票の過半数を超えた場合、その裁判官は罷免される。注意したいのは、「×」以外の記号や文字を記入すると、投票が無効になってしまうことだ。
Tetsu2266, Public domain, via Wikimedia Commons
最高裁裁判官は、内閣から任命されてから初めての衆院選で国民審査を受ける。さらに、初めての審査から10年を過ぎたのちの衆院選でも審査を受ける。
今回の国民審査(第26回)で対象となるのは6人。
その実績や人となりはどこで知ることができるのだろう?
まず、投票2日前までに各世帯に配られる「審査公報」には、裁判官の略歴と実績をはじめ、本人が記した「裁判官としての心構え」といった文章から考え方に触れられる。各都道府県のWEBサイトにPDFがアップロードされていて、そこから見ることもできる。
また、新聞社などの報道機関では、国民審査のための特設サイトをつくり、裁判官へのアンケートを公開している。
例えばNHKの特設サイトでは、対象の裁判官がこれまでに判断した例を細かく解説しているほか、アンケートにて最近うれしかった出来事や、読んだ本などにも触れている。
朝日新聞で無料公開されているアンケートでは、信条や心構えをはじめ、憲法改正や共同親権などについての硬派な質問はもちろん、趣味や余暇の過ごし方など、人柄に触れるような柔らかい質問にも踏み込んでいる。
そのほか、弁護士や学者らでつくるグループ「日本民主法律家協会・国民審査プロジェクトチーム」が、対象の裁判官について所見をまとめたパンフレットもWEBサイトで公開されている。