連続テレビ小説『虎に翼』で、ヒロイン寅子の大学の同級生で、道を分かちつつも生涯にわたるソウルメイトとして共に法律の道を歩み続けた山田よねを演じ好評を博した土居志央梨。放送中の金曜ナイトドラマ『無能の鷹』(テレビ朝日系/毎週金曜23時15分※一部地域を除く)では、オレンジヘアのITエンジニア役を好演中だ。インパクトあふれる大変身を遂げた土居に、本作の魅力や、“とらつば”への思いを聞いた。
【写真】オン眉オレンジヘア&笑顔がかわいい土居志央梨
◆鵙尾はよねとは違うクールさのある人
はんざき朝未による同名漫画を実写ドラマ化する本作は、“無能ですが、何か?”と潔く生きるヒロインの姿を描く、超・脱力系お仕事コメディー。菜々緒が演じる、超有能そうな見た目なのに、衝撃的に無能な新入社員・鷹野ツメ子がITコンサルティング会社《TALON》に入社し、個性豊かな登場人物と触れあって、切磋琢磨して心身ともに成長を遂げていくサクセスストーリー…では決してない。清々しいまでに無能でも潔く生きてゆく姿を届ける。
土居が演じる鵙尾弓(もずお・ゆみ)は、TALON開発部に所属するITエンジニア。いつもパーカー姿で、なにか相談すると「ダル…」と返される。菜々緒が演じる鷹野の職場の先輩である鵜飼(さとうほなみ)とは高校時代からの付き合いだが、現在は犬猿の仲だ。第3話(10月25日放送)では、そんな鵙尾と鵜飼の関係にフィーチャーしたエピソードが描かれる。
――『虎に翼』のよねさんとは180度違うビジュアルの鵙尾。情報解禁時にはネットには驚きとざわつきがあふれました。
土居:そうですよね(笑)。衣装合わせで初めて自分の姿を見た時は、自分でも面白くて。「これって、大丈夫なのか?」と思ったりもしましたが、やっと馴染んできたところです。よねをずっとご覧になっていた方は「え!」とびっくりされますし、この現場で鵙尾のビジュアルの私しかご存じないスタッフさんは、ウィッグを脱いで帰ろうとすると「誰!?」と驚かれて(笑)。新しい自分という感じで本当に面白いです。
鵙尾のファッションも、変なパーカーやTシャツが多くて、買い取りたい!って思うくらい、全部かわいくて好きなんです。今日着ているパーカーも、衣装合わせで一目ぼれして気に入っています。
――そんな鵙尾はどんなキャラクターと捉えていますか?
土居:情報解禁の時に、「だるだる変人エンジニア」と紹介されていたのですが(笑)、よねとはまた全然違う、ある種のクールさがある人かなと思っています。理系の人といいますか。一匹狼でもかまわないし、周りを気にせずこういうダメージジーンズで、かっちりした会社に行ってるんですけど、そういうところはカッコいいなって。自分の時間軸で生きている人で、すごく素敵だなと思います。
でも意外と柔らかいところがあったり、かわいい普通の女の子なんだってちょっとずつ分かってきました。
――ご自身との共通点はありますか?
土居:私は「THE 文系」です(笑)。鵙尾は自分の心に素直というか、「この人、面白そう」と思ったら近づいていくし、意外と鷹野に興味を持ったりもする。でも、興味がないことにはまったく興味がないというすごくはっきりした人なんですね。そこは面白いなって思います。合理的というか、最短ルートで生きている人なので、私とはまた全然違っていて憧れるところもあります。私はけっこう体育会系というか、根性論みたいなところもちょっとあるかなと思うので(笑)。こんなふうに生きられたらなとうらやましくも思っています。
――演じられるうえで、気を付けている部分はありますか?
土居:3話ではさとうほなみさんが演じられる鵜飼と鵙尾の関係が描かれるのですが、やりながらどうしても『虎に翼』の寅子とよねの関係性を思い出してしまって。お互い嫌いなだけではなく、むしろ大好きだからこそ起こってしまう難しさはすごく共感するところでもあるので、大好きなんだという部分はなくならないように意識して演じました。鵙尾は人にそんなに興味がないタイプだと思うんですけど、鵜飼に対しては特別な友情があるというのは、やっててもすごくもどかしさもあり、でも愛おしいなって思うところだったので、そこに注目していただきたいですね。
◆「肩の力を抜いても大丈夫なのかもしれない」と気楽に見てほしい
――本作の魅力はどんなところに感じていますか?
土居:本当に面白いですよね。出てくる人たちがみんな頑張って生きている人で、それぞれがとても愛おしいので、キャラクター1人1人に注目してほしいです。そんな中で鷹野さんという人は異色のヒロインで、こんな人がいてくれたら楽しいだろうなって撮影していてもすごく思います。仕事をしていてもしていなくても大変なことは日々たくさんあると思うんですけど、意外と肩の力を抜いても大丈夫なのかもしれないということを感じられると思うので、気楽に見てほしいなって思います。
――そんな鷹野を演じられる菜々緒さんの印象はいかがでしょう。
土居:こんなに気さくな人なんだとびっくりしました! クールビューティーな印象だったのですが、本当に明るいし楽しい、愉快な方なんです。撮影していてもすごく癒やされて、笑わせていただいています。菜々緒さんが鷹野を演じるから何をやっても面白いんですよね。それがやっぱりすごいなって思って。鵙尾が鷹野を気に入るのも自然に演じられるくらい、菜々緒さん大好き!みたいな感じで撮影させていただいています。
――鵙尾が所属する開発部の同僚を演じる安藤玉恵さん、宮尾俊太郎さんはいかがですか?
土居:玉恵さんとはもともと舞台で親子役で共演したことがあるのですが、今回は上司と部下役。やっぱり面白くて素敵な役者さんだな~と思って。目の前でお芝居を見られることがうれしいですね。宮尾さんは、あのビジュアルが“ZAZY”って言われていて(爆笑)。監督のリクエストらしいのですが、開発部は異色のメンバーがそろっているので、とにかく一度見てほしいです!
現場も本当に明るくてあったかい人が多くて、めちゃくちゃいい現場です。菜々緒さん、監督たち、プロデューサーと、とにかくエネルギッシュで、楽しいことが大好き、面白いことが大好きな人たちがたくさん集まっているので、とても居心地がいいですね。
◆『虎に翼』よねに対するファンの熱量に感謝
――『虎に翼』で“よね”さんを演じられて、1年近く同じ役と向き合う経験は初めてだったかと思います。鵙尾への切り替えはすんなりできましたか?
土居:衣装合わせでこの衣装を着た時に、あまりにも違いすぎて。(切り替えは)難しいかなと思っていたんですけど、あんまり悩まずに切り替えられた感じがありました。原作を読んでいたので、こういう感じなんだとは思っていましたが、こんなに明るいオレンジの髪だとは思ってなかったので、(ウィッグを)被って「なるほどな」とイメージがパッと湧いてきたというか。これを被ったら自然に鵙尾になれるという感じで、意外と苦労はしなかったかもしれないです。
毎回どうやって切り替えているのか自分でもよく分からないんですけど、衣装やメイクに毎回すごく助けられています。あのスーツを着ればよねのスイッチが入るという感じでしたし。
――今お話に出ました『虎に翼』の放送が終わり、しばらく経ちました。
土居:やっぱりまだ信じられない気持ちがあって。(取材当時)クランクアップして1ヵ月くらい経つんですけど、もうちょっとしたらまた撮影が始まるんじゃないかっていうくらい、あまりにも自分の中に染み込みすぎていて、いつでもあの世界に戻れるっていう感覚がまだあります。どのタイミングで終わったことを実感するのか分からないというか、あまり感じたことのない不思議な感覚ですね。もしかしたらこれからジワジワくるのかもしれません。
――『おちょやん』でも朝ドラに出演されていましたが、今回のよね役は周囲の反応は違いましたか?
土居:全然違いますね。「よねさんですか?」って役名で呼ばれる経験はこれまでなかったので。「毎日見ていて大好きなことをどうしても伝えたくて」と息切れしながら走って追いかけてきてくださった方もいて、こっちもグッときちゃって。こんなに熱量を持ってくださる作品に関われたんだとものすごく感謝しています。
――放送中、よねさんに対する反響をエゴサされたりはしましたか?
土居:最初のころはしていたんですけど、途中で卒業しました。やっぱり、序盤のお話はだいぶ前に撮っている分なのでどうしようもないんですけど、この後に撮影する分はネットの反応を見て演技を変えられてしまうので、それってちょっと怖いというかブレるところが出てくるかもと考えたんです。なので、あまり影響されないようにと思って卒業しました。
でも、自分のSNSに上げた投稿に届けてくださる返信はありがたく拝見していて、楽しみにしています。
――来年には大学卒業から10年が経ちます。今後、どんな俳優さんになりたいという思いはありますか?
土居:大きい展望みたいなものはないのですが、いただいた役1つ1つを心をこめてやろうと誓っています。慣れてしまったり、手を抜いてしまったりしないように、1つ1つに100%の愛情を注いでいきたいと思います。
(取材・文:佐藤鷹飛 写真:上野留加)
金曜ナイトドラマ『無能の鷹』は、テレビ朝日系にて毎週金曜23時15分放送(※一部地域を除く)。