お金を貸すならあげるつもりで、とは言うものの、実際に返ってこなかったら嫌な気持ちになるものだ。一方で岐阜県の50代女性(年収500万円)は、「お金を貸して返ってこなかった話ですが、悔しくないやつです」と投稿を寄せた。一体どういうことだろうか。
両親が熟年離婚したため、女性は中古の家を購入し、母親と一緒に暮らし始めた。母親の年金は月6万程度で、自由になるお金は多くなかった。そのため時々、お金を借りにきたという。(文:天音琴葉)
戦国時代が好きな母親、新聞広告を見て「これ買うお金貸してほしいな」
光熱費や固定資産税は全て女性が払っていたが、食料品を買う際には母親もお金を出していた。母親の借金についても、「大したことはない要件がほとんど」と回想する。
「歴オタで特に戦国時代が好きだったので、新聞に歴史書の広告掲載があると、新聞の切り抜きを持ってきて『これ買うお金貸してほしいな。返すあてはないけど』と、つつつ……と切り抜きを目の前におくのです」
そして「本屋行くよりAmazonが早いね」と、ポチるよう仕向けるのだった。「返すあてはないけど」が口癖の母親は、ほかにこんな“借金”もお願いしてきた。
「あとは『現存する国宝天守閣を死ぬ前に見たいなあ。旅費出してくれないかなあ。返すあてはないけど』と言うので、当時は4箇所だった国宝天守閣へは連れて行きました。最後に一泊で姫路をクリアしたとき『あー、これで悔いはない』とのたまった母は、『次は熊本城を見たいなあ』と言い出し、『増えとるやんけ!』とツッコミました」
2015年に松江城が国宝指定され5城になったが、それより前の話のようだ。当時の国宝4城のすべてに連れて行ってもらい、母親は嬉しかっただろう。確かに“借金”は増えるが、女性も微笑ましく思っていたに違いない。
その後も二人で北海道旅行を計画した。新撰組の副長だった土方歳三にゆかりのある、函館市の五稜郭を訪ねるつもりだった。だが楽しみにしていた矢先、母親は脳出血で倒れてしまった。意識のない母親に女性は、
「もう一回目を開けてよ、来月、土方くんちに行く約束じゃない!」
と泣きついたという。「あのとき看護師さんたちはどう思ったろう、と思うと顔から火がでそうです」という女性だが、看護師たちも心の中で泣いていたに違いない。
「そんな母が他界して3年になります。もちろん貸した金は返ってきていませんが、なにしろ本人が返すあてはないと言っていたので、いい思い出です」
と投稿を結んだ。
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