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IT導入補助金、約1億4000万円が不正受給 会計検査院が事業者を名指し

2024年10月22日 12:51  ITmedia NEWS

ITmedia NEWS

実質的還流の図解(「サービス等生産性向上IT導入支援事業の実施状況について」 報告のポイントから引用)

 会計検査院は10月21日、生産性向上に向けたITツールの導入を補助する制度「サービス等生産性向上IT導入支援事業費補助金」(IT導入補助金)について、約1億4700万円の過大な交付があったとして、実施した中小企業基盤整備機構に改善や対応を求めた。


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 会計検査院は2020年度から22年度までに補助金の給付があった315の事業主体(企業や自治体)による383事業を調査。このうち41の事業主体が実施した55事業(補助金換算で1億4755万8703円)で、適切でない交付があったという。


 適切でない交付は大別して3パターンあった。(1)実質的還元などによる不正、(2)虚偽申請などによる不正、(3)導入したITツールを全て解約していたケース──だ。


 (1)は、ITツールの導入と前後して、ソフトウェアメーカーやベンダーなどの導入支援事業者やその関係会社から協賛金や実態を伴わない紹介料などの名目で還流を受け、自己負担額を実質的に減額・無償にしたり、利益を得たりしたパターンだ。中には、自身で行うべき交付申請などの手続きを支援事業者など第三者に任せていた例もあった。30の事業主体による40事業(補助金換算で1億812万7473円)で確認したという。


 このケースは「事業主体が単独で企図して行ったものではなく、その多くは、IT導入支援事業者やその関係会社からの『自己負担のない方法によりITツールを導入できる』『自己負担額を上回る報酬を得ることができる』などの働きかけを契機として行われた」という。


 (2)では、補助の対象となるITツールを導入した、あるいは運用を開始したという虚偽の報告による不正を確認した。8の事業主体による11事業(同2848万3730円)で見られたという。


 (3)は、導入したITツールを全て短期で解約していたパターンだ。補助金の交付規定では、導入先が1年未満でITツールを使わなくなった場合、交付の一部や全部を取り消せる決まりだった。また、導入後3年間で賃上げを達成するなどの条件で補助上限を引き上げる代わりに、達成できなかった場合には補助金の一部または全部を返還する制度を使ったにもかかわらず、短期で解約していた例もあった。3つの事業主体による3事業(同1094万7500円)で確認したという。


 当てはまる企業・自治体と、不当な補助金の金額、それを支援した事業者のリストも公開。(1)~(3)どのパターンだったかもリスト化している。他にも、67事業主体が実施した88事業(同2億5352万円)が(1)に当てはまる疑いがあるという。


 会計検査院は不正が起きた背景について「関与した導入支援事業者において本来の制度の枠組みを逸脱して事業主体に対して不正を働きかけていたことなどにもよるが、事業主体において補助事業の適正な執行に対する認識が著しく欠けるなどしていた」「中小企業庁及び経済産業本省において、事業主体が実際に多数の不正を行っていたにもかかわらず、(補助金事業を支援した)サービスデザイン推進協議会および機構に対する指導、助言などが十分でなかったことなどによる」と指摘。


 中小企業基盤整備機構に対して「実質的還元などによる不正を行っていた30事業主体から過大に交付された補助金を速やかに返還させる手続を行わせること、また、実質的還元と同様の資金の流れなどが見受けられた67事業主体についてのさらなる調査などを行わせて、不正が判明した場合には速やかに補助金返還の措置および不正に関与したIT導入支援事業者の登録取り消しなどを行わせること」といった対応を求めた。