スマホ向けゲームアプリ『Wizardry Variants Daphne』の配信が10月15日にスタートした。僕が『ウィザードリィ』のすべてをプレイしたわけではないが、初期三部作に『ディンギル』、後は悪評がやけに目立つが、意外と面白かった『エクス』。あとはウィズライクな『エルミナージュ』などをプレイしてきた。
当然、この新作も事前登録していたんだけど、いざ15日になってプレイしようと思ったらかなり重くてプレイどころではなく。運営元もこの状況改善に焦ったことだろうが、本当に1日の大半をメンテに費やしており、翌16日もまたメンテ。
メンテのたびにお詫びのゲーム内アイテムが配布というアナウンスが入るものの、そもそもまだチュートリアルにまで進ませてもらってない立場でそんなことされても意味がないわけで……とかなり気が削がれてしまった。
で、結局ヤフオクでまだプレイしてないタイトルを落札した次第である。やっぱこう、買い切りで新作がやりたかったという気持ちが僕の中で大きかったってことなんだろう。せっかくなので今日はちょっと、そんな『ウィザードリィ』のお話しをしていきたい。(文:松本ミゾレ)
中高年ゲーマーが熱中した、シビア過ぎる3Dダンジョン探索劇
いまさら言うことでもないけど、本シリーズは1981年にアメリカのサーテックという開発元がリリースした、パソコン用ゲームソフトウェアである。線画で表現された地下ダンジョンを、自分が任意で製作したパーティを組んで探索するという仕組みになっており、戦士や盗賊、魔法使い、僧侶など、現在知られているRPGの基本的な職業の基本がここから生み出された。
また、種族によって得意な職業適性があり、ホビットは小柄で素早いので盗賊向き。ドワーフは頑丈なので戦士向きなど、色々と向き不向きの概念もある。ダンジョンに登場する敵も恐ろしいのが多いが、一番怖いのは罠。戦闘終了後に発見することができる宝箱には様々なトラップが仕掛けられており、うっかり起動させれば一発でパーティが壊滅するような致命的なものも多い。
序盤では比較的危険度の低い毒なんかでもあっさり全滅するので、とにかく盗賊を1人は入れていくことが大切。その盗賊は戦闘ではあまり役に立たないというジレンマも抱えていて、これがまた面白いのだ。
今までにスピンオフも含めると山ほどタイトルが発売されてきただけに、昭和世代はもちろん、意外と平成後期のゲーマーたちも触ったことぐらいはあるんじゃないだろうか。
僕が最初に遊んだのは、たしか初期三部作が1つにまとめられた『リルガミンサーガ』(PS)だったと思う。90年代後半のことだ。イメージ画像も雰囲気あったし、何よりゲーム好きとしても知られた作曲家の故・羽田健太郎氏の音楽がめちゃくちゃかっこいいの。
当時は既にRPGと言えばゲームの要所要所でCGムービーが挿入されるなど、観てるだけでも「楽しい!」と感じられる部分も重視されていた時代。そんな時代にあってこの三部作は、基本的にテキストメインで状況が描写されるので想像力を働かせて状況を認識する楽しさを僕に教えてくれた。
あと単純に敵が強く、敵を倒した後の罠も苛酷で、そういった苦労を乗り越えてレアアイテムを蒐集することにハマってしまったのである。加えて、キャラクターも戦闘不能状態からの蘇生に失敗したらロストしたものと見なされ、ゲーム上から消えてしまうのも衝撃的で、これまた魅力的に感じられた。あと、あまりに年齢を重ね過ぎても老衰でロストしてしまう!
僕のように、本シリーズに没頭して徹夜してしまった人たちは大勢いて、そのほとんどはもうおじさん、おじいさんの域に差し掛かっている。そう、もういつロストしてもおかしくないのだ……。
もしかして元祖? 現代のゲーム感にも通じる“リセマラ”前提進行
『ウィザードリィ』の名前自体は、ゲーマーなら多分誰もが認識はしているはず。そしておおよそどんな内容のゲームなのかも、今はスマホもあるし検索して知ることもできる。ただ、実際にやってみると衝撃は大きい。
僕もスマホなんかない時代に何となくファミ通で目にする、ちょっと難しいシリーズだという理由で遊んでみたが、やっぱり衝撃は大きかったし。それこそ先日も、5ちゃんねるに「今ウィザードリィの3Dリメイクやってるんだけど、昭和のオッサン達はこんな激ムズゲーやってたのか」というスレッドが立っていた。
スレ主の声をちょっと紹介させてもらいたい。恐らく誰もが一番初めに抱いたであろう『ウィザードリィ』への感想が書き込まれているので。
「RPGなのにアクションゲーみたいにキャラがコロコロ死ぬぞ ワープと回転床で位置感覚狂うし 寺院で金使うから金貯まらんし、貯めても店でろくな武器売ってないし ようやく4階にたどり着いたけど、ドラゴンのブレスで半壊 心折れた」
と、初心者なりにかなり奮闘して、ブレス持ちの敵に初遭遇するくだりまで進んでいる。
ダンジョンは罠だらけでキャラクターもすぐに倒れ、蘇生のためには寺院で莫大なお布施を支払ってささやきえいしょうねんじろしなきゃいけないし、やっぱり不便だよね。
武器に関しては自分たちで鑑定して店に売って、それで在庫が充実するというシステムを採用してることが多いから余計に序盤はつらいし。
これに対して、『ウィザードリィ』経験者の書き込みも「わかるわ~」ってのは多いので、ちょっとついでにご紹介。
「コツは『一瞬でもヤバいと思ったらすぐ帰還の計画に移る』だ がんばれ」
「仲間に愛着を持たないのがコツ」
「寺院で金がないなら進行が速すぎる 低レベル突撃やらなきゃ多少はましだぞ レベル上げてから進撃 魔法惜しむな 常に帰りを考えろ」
「マーフィーズゴーストを何度も倒せ」
やったことがある人なら、ついついアドバイスしたくなるよねってなっちゃう書き込みがいくつもあってニコニコしてしまった。
後はあれだよね。序盤は金がないので、ダンジョンの出口で僧侶の回復呪文を使い切って、宿は無料で入れる馬小屋で一泊。こうすると魔法の使用回数だけは回復しているので、中盤くらいまでこの貧乏戦法を押し切ればなんとかじわじわ安価で強くなれるっていうね。
でもまあ、何よりオススメしたい序盤の便利技は、キャラクターメイクの際に振り分けられるボーナスポイントに注目するっていうところだよね。ボーナスポイントの初期値はランダムで設定されるので、このポイントが2桁以上表示されるまで粘るのも大事(逆に、より難易度の高い冒険をしたいならボーナスポイントが少ないキャラをそのまま採用するという遊び方もある!)。
序盤から上位職になれるぐらいのポイントがもらえたら占めたもの。以降の進行は素のステータスが高いのもあって若干楽になる。まあ、序盤から上位職になってもレベルアップが死ぬほど遅いから逆にアレなので、そのまま基本職になって、基本に忠実に戦うのが基本的にはいいけれど。
ただ司教だけは最初から1人作っておいて、手に入る戦利品の鑑定をして売りさばくというのが僕のお気に入りというか、オススメのスタイルなので、ぜひ真似してみてください!
……こういう初期ポイントの増減で進行に影響が出るってのは、言ってみれば現在のソシャゲのリセマラの走りみたいなものかもしれないね。今はあらゆるソシャゲで、チュートリアルの後に10連ガチャだかが無料でできて、そこで能力の高いキャラが出るまでリセットするマラソンを繰り返すのが当たり前になった。
『ウィザードリィ』の場合はあくまでボーナスポイントの量だけに注目していればいいので本当に余分な要素はないけど、なんかこう、「ああ、リセマラの始祖もこのゲームだったのかな」みたいなことは思えてしまう。つくづく、偉大なゲームです。