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開けっぴろげだった西田敏行さん 「植村直己物語」長期ロケの裏話 「声だけでアレができちゃう」

2024年10月18日 05:01  日刊スポーツ

日刊スポーツ

第24回日刊スポーツ映画大賞・助演男優賞受賞に笑顔でVサインする西田敏行さん(2011年11月撮影)

<悼む>



俳優の西田敏行(にしだ・としゆき、本名同じ)さんが、亡くなった。17日、都内の自宅で倒れているところが発見された。76歳。福島県出身。


映画「釣りバカ日誌」シリーズなど数多くの作品に出演し、主演ドラマ「池中玄太80キロ」の主題歌「もしもピアノが弾けたなら」で、NHK紅白歌合戦にも出場するなど、マルチに活躍した。近年は体調不良も続いていたが、今月8日には、都内で行われた映画「劇場版ドクターX FINAL」の完成報告会見で元気な姿を見せるなど、突然の訃報に驚きと悲しみが広がっている。


   ◇   ◇   ◇


開けっぴろげな人だった。38歳で主演した映画「植村直己物語」は北極やエベレストの周辺で長期ロケが行われたが、撮了後にはこんな話を明かしてくれた。


「禁欲生活が続くとさあ、もう『声』だけでアレができちゃうようになる。隊員たち(共演者)の中で一番人気は高橋真梨子さん。その話を高橋さんにしたら、なんと打ち上げに参加して歌ってくださったんだよね。これホントの話」


一方で「クレバスに落ちそうになったり、ぎりぎりで雪崩を回避したり、死を意識したことが2度あった。あらがえないものがあるんだと痛感させられた。言葉にならない、いろんなものを教えられた」とも。


この2つのコメントが軽妙さとその裏にある深い思いを象徴していたように思う。数多く出演したNHK大河ドラマで、家康をはじめ徳川の3将軍の役が舞い込んだのは、笑っていても腹に一物ある人物を誰よりも巧みに演じられたからだろう。


「植村-」に続いて主演した「敦煌」の中国酒泉市郊外のロケにも同行したが、炎天下の砂漠で、両手を離したまま現地の汗血馬を疾走させる姿に息をのんだことを覚えている。


「こっちでずいぶん乗ったから。売れない頃に『特技・乗馬』って書いて役をもらって、思いっきり落馬したことがあるからね」


佐藤純弥監督に聞くと、1カ月の猛特訓の成果だという。「努力」と書かれるのがいやで、笑いにくるんで話したようだ。


28歳で出演したドラマ「いごこち満点」や「三男三女婿一匹」で、34歳上の森繁久弥さんの変幻自在のアドリブに見事に応じた時から、演技巧者のイメージは固まった。だが、その裏には決して見せない、たゆまぬ努力があったのではないかと思っている。【相原斎】