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夫の不倫から再構築中、妻を絶望の淵に立たせた「家から出ていけ」との非情な宣告 応じる義務は

2024年10月14日 08:50  弁護士ドットコム

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夫が不倫、離婚することになった妻。それまで住んでいた家から引っ越す際に、その費用も夫に請求したいと考えている人は少なくないようです。


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弁護士ドットコムにも、別居のための引越し代を誰が負担するか、多くの相談が寄せられています。



ある相談者の女性は、夫が不倫をした結果、夫婦関係が壊れたといいます。再構築を試みてみたものの、夫から「もう気持ちがないので離婚したい」と言われたそうです。



女性は夫に「離婚するなら生活力をつけるために1年待ってほしい」と伝えて同居を続けていました。その間、女性は就活し、すでに内定ももらっていますが、夫は「イライラするからすぐに別居したい」といって、引っ越しを迫ってきたそうです。



女性はすでに夫から慰謝料はもらっていますが、まだ働き始めていないため、引越し代や部屋を借りる為の敷金礼金は払えないといいます。女性は「夫の希望による別居なので、引越し代などは負担してほしい」と考えていますが、夫に請求することは可能でしょうか。日向 一仁弁護士に聞きました。



●別居に応じる条件として「引越し費用の負担」を約束させる

——配偶者による不貞行為で同居が続けられなくなった場合、慰謝料以外に別居のための引越し費用を配偶者に負担させることは可能なのでしょうか



前提として、一方の配偶者が、他方の配偶者に対して自宅から退去して欲しいと希望している場合でも、退去要求に応じる義務はありません。そこで、配偶者との話し合いで、退去に応じる条件として、引越し費用の負担を求めることは可能です。



なお、婚姻費用分担請求調停や離婚調停での話し合いの中でも、相手方に引越し費用の負担を求めること自体は可能です。しかし相手方に引越し費用の負担を拒否された場合に、家庭裁判所の審判や離婚訴訟で、相手の意思に反して引越し費用の負担をさせることは基本的に難しいのが実情です。



そのため、ご相談のケースでは、同居している間に、夫に対して別居に応じる条件として引越し費用の負担を約束させることが重要になります。



●「夫が執拗に別居求めればモラハラに」

——相談者の女性は、「生活力をつけるために1年待ってほしい」とあらかじめ伝え、夫も了承していました。約束内容を書面には残していませんが、その途中で引っ越しを迫る行為は、法的に問題ないのでしょうか



相談者には別居に応じる義務はありません。そのため、ご相談者が引越しを拒否しているにもかかわらず、夫が執拗に引越しを要求すれば、いわゆるモラルハラスメントとして、離婚原因や慰謝料請求の対象になることがあります。



——このほか、相談者の女性がとりうる方法は何かありますか



夫が執拗に別居を要求しているのであれば、ご相談者が代理人として弁護士をつけて、夫に対し、抗議することや、引越しに応じる条件として引越し費用の負担をするよう要求して協議する方法が考えられます。このように「引越し費用の負担が確約されない限り別居しない」という対応が基本となります。



また、執拗に引越しを要求されているのであれば、録音やメッセージ等を保存し、将来、慰謝料請求をする際に増額要素として主張できるように証拠を確保した方が良いでしょう。



仮に、引越し費用の負担を確約させる前に別居してしまった場合には、婚姻費用分担請求調停や離婚調停の中で、任意の負担を求めて協議することや、離婚訴訟で離婚の慰謝料の増額要素として考慮するように求めることが考えられます。



しかし、いずれも引越し費用の負担が当然に認められるものではありませんので、やはり別居前に約束させることがポイントとなります。




【取材協力弁護士】
日向 一仁(ひゅうが・かずひと)弁護士
平成18年弁護士登録。東京弁護士会所属。離婚・相続・訴訟・企業法務・不動産紛争(借地権紛争を含む)等を取り扱う。平成24年5月に東京渋谷法律事務所を開設(所属弁護士4名)。
事務所名:東京渋谷法律事務所
事務所URL:https://tokyo-law.jp/