モータースポーツの「歴史」に焦点を当てる老舗レース雑誌『Racing on』と、モータースポーツの「今」を切り取るオートスポーツwebがコラボしてお届けするweb版『Racing on』では、記憶に残る数々の名レーシングカー、ドライバーなどを紹介していきます。今回のテーマは、1980年のル・マン24時間レースなどを戦った『レノマトヨタ童夢セリカ・ターボ』です。
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2024年、スーパーGTにおいてau TOM'S GR SupraとDeloitte TOM'S GR Supraという2台を走らせ、開催5戦中3勝という高い勝率をマークしているトヨタ系の名門チームのトムス。
そんなトムスは1974年に舘信秀と大岩湛矣のふたりの手により誕生して以来、今年で創業50周年を迎える。
その50年の歴史の間で国内外のさまざまなカテゴリーに挑んできているトムスは、創業からわずか6年目の1980年、ル・マン24時間レースへの挑戦を早くも果たしている。
そのトムスが最初にル・マンへと参戦したマシンというのが、レノマトヨタ童夢セリカ・ターボだ。
童夢セリカ・ターボは、童夢とトムスによる共同プロジェクトによって生まれたRA40型トヨタ・セリカのシルエットを纏ったマシンで、シャシー自体は童夢が製作を行った。
このプロジェクトは1979年にトムスがドイツのシュニッツァーより購入し、日本のスーパーシルエットレースで走らせていたセリカに積まれていたターボエンジンに童夢が目をつけたことが始まりだった。
それからシャシーの製作を童夢が請け負って、それをトムスに供給。エンジンはトムスの所有するシュニッツァーセリカのものを使い、トムスチームとしてル・マンに参戦するというかたちを童夢がトムスに打診して実現したものだった。
童夢製作のシャシーは鋼管スペースフレームで構成され、トムスが所有していたシュニッツァー製セリカよりも70mm全幅が狭く、前面投影面積を少なくしていた。
さらに重量配分を考慮し、フロントにはインタークーラーのみを配置し、ラジエターはリヤに搭載するなどマシンの各セクションに冷却器を分散させていたことが特徴のマシンだった。
このシャシーに前述のシュニッツァーセリカに採用されていた排気量2090ccの直列4気筒ターボエンジン、トヨタ18R-Gを搭載。まずアメリカのIMSAシリーズのレースに挑んだ。
その後、いよいよ本番である1980年のル・マンへと臨む。だが、予選不通過に終わってしまい、あっけなくトムスのル・マン初挑戦は幕を閉じた。
しかしトムスと童夢によるプロジェクトはここから本格化していき、のちにトヨタ本社の支援も受け、よりマシンもポテンシャルアップを果たしていくことになる。
ちなみにこの童夢セリカ・ターボはル・マンののち、国内レースへと参戦。1981年のスーパーシルエットレースでは優勝を飾っている。