2024年10月06日 10:00 弁護士ドットコム
脱ぎ履きしやすい形が人気を集めるクロックスのサンダル。
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足の甲の部分に空いている複数の穴やかかとを固定するバンドなどオリジナルのデザインが特徴的だが、その見た目を模倣した「クロックスパン」なるものが販売され、SNSで話題になっている。
東京・新大久保の韓国系ショップや地方の祭りに出店した屋台で1個500円ほどで売られ、人気を博しているようだ。
SNS上には「可愛すぎて食べるのもったいない」「お土産にしたらめちゃ喜ばれました」という購入者の感想が書き込まれている一方、「面白いなと思うけど売りに出しちゃうの大丈夫なのか気になる」「許可取ってるのかな?」などといった投稿も。
クロックス社は取材に、「本件はGlobalレベルで認識をしておりますが、その上でクロックス社としては具体的な個別の対応等を開示しておりません」と回答した。
アメリカ発のブランドであるクロックスの商品デザインを真似した食べ物を販売することに法的な問題はないのか。知的財産権にくわしい齋藤理央弁護士に聞いた。
今回の問題は、知的財産権をめぐる攻防として面白い事案だと思います。
つまり、私たちが子どもの頃は、お祭りの屋台などでは漫画やアニメなどの人気キャラクターの無断利用をやっているのではないかと思われるケースもあったように思います。
おおらかな時代は、キャラクターの人気にただ乗りしていました。しかしコンプライアンスが重視される時代になってきたので、キャラクターなどの無断利用は流石にできない時流で、クロックスなどの身近な商品の親近感を利用、悪く言えばただ乗りしようとしているのかもしれません。
今回問題になり得るのは、意匠法や商標法、不正競争防止法、著作権法などさまざまな知的財産権法です。
特に意匠法は問題になるでしょう。今回は、意匠法の観点から解説してみたいと思います。
クロックス社はサンダルに関する意匠権を複数登録しています。
しかし、今回意匠権の侵害は生じないと考えられます。つまり、意匠権の侵害には、そもそものデザインが似ていること以前にデザインを利用している商品が似ていることが必要と考えられています。
これはデザインが似ているという意味ではなく、たとえば同じ履き物である靴とサンダルとか、機能面から似ている商品同士にデザインが利用されている必要があるという意味です。
今回はサンダルとパンなので、一方は履きもの、一方は食べるもの(製造食品)なので機能もまったく異なり、商品は似ていないことになります。
したがって、デザインが似ているかどうかという問題以前に、意匠に係る物品が異なるためにクロックス社の意匠権は及ばないことになります。
今回は意匠権の面だけから言えば、需要者が親しみを覚えるデザインについてパンに上手く利用していると思います。
悪く言えば、ただ乗り成功という側面があるかもしれませんが、このように知的財産権をめぐっては、オリンピックの際などは世界的企業がただ乗りを仕掛けることもあり、興味深い攻防が繰り広げられています。
【取材協力弁護士】
齋藤 理央(さいとう・りお)弁護士
法律事務所碧。著作権などコンテンツiP(知的財産)やITトラブルなど情報法分野に重点をおいている。重点分野で最高裁判決、知財高裁判決などの担当案件の他、講演、書籍や論文執筆監修など多数。自身のウェブサイトでも活発に情報発信をしている。東京弁護士会所属。著作権法学会、日本知財学会会員、弁護士知財ネット、東弁IT法研究部等に所属。
事務所名:法律事務所碧
事務所URL:https://eic.law