韓国・釜山で開催中の「第29回釜山国際映画祭」(10月2日~11日)にて、「アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞」を受賞した黒沢清監督(69)が2日、映画の殿堂(映画祭のメイン会場)で行われたオープニングセレモニーに登壇した。
【動画】映画『Cloud クラウド』本予告 アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞は、同映画祭がその年のアジア映画産業に大きく貢献した人物を表彰するもので、これまで、鈴木清順監督、若松孝二監督、是枝裕和監督や音楽家の坂本龍一らが受賞している。
屋外に設置されているメイン会場「映画の殿堂」は、満席の観客に埋めつくされ、途切れることのない歓声と拍手に沸いていた。レッドカーペットに登場した黒沢監督は、詰めかけたファンたちに笑顔で手を振り、カメラを向けられると丁寧に応じていた。ベネチア、トロントでも熱狂的なファンに迎えられたが、釜山でもその人気ぶりを見せつけた。
授賞式では、ポン・ジュノ監督と濱口竜介監督からサプライズでお祝いのメッセージビデオが上映され、影響を受けた人物として黒沢監督の名を挙げているポン・ジュノ監督は「黒沢監督の長年の、そして筋金入りのファンとして、アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞の受賞、心からお祝いを申し上げます。『CURE』『回路』『トウキョウソナタ』『アカルイミライ』『クリーピー 偽りの隣人』『散歩する侵略者』…私が心の底から大好きな作品ばかりです。黒沢監督は我々に常に衝撃と刺激を与えてきました」と黒沢愛とともに賛辞を述べた。
また、濱口監督は「学生時代からたくさんのことを教わって、今自分が仕事ができているのも黒沢さんのおかげだと思っていて、全てを教わったようなそういう気持ちでおります。これからも恐ろしく、そしてなぜが爽快な映画を作り続けていってほしいと思います。その背中をずっと追いかけます」と恩師でもある黒沢監督へ感謝のメッセージを送った。
これらに感激した様子で壇上にあがった黒沢監督。スピーチでは、受賞は予想もしていなかったと前置きしつつ、「僕が映画を撮り始めてもう40年になりますが、僕の映画人生の半分は釜山映画祭に見守られていたと言っていいでしょう。その20年間のキャリアが評価され、このような名誉ある賞をいただけたのだと思います。たいへん感激しております」と、笑顔を浮かべながら映画祭への感謝を伝えた。
また、「釜山映画祭の観客は、世界で最もハイ・レベルな観客だと僕は思っている。その方たちに、僕の最新作2本をお見せするために、僕はまた釜山にやってきました」と、『Cloud クラウド』『蛇の道』と2作上映されることへの喜びを伝えると、場内からもそれに応えるように、黒沢監督へ惜しみない拍手が送られた。
映画『Cloud クラウド』は、同映画祭のメインプログラムでありその年の話題作や世界で影響力のある監督の新作を上映する「ガラ・プレゼンテーション」部門で正式上映される。日本国内では全国の劇場で上映中。
■黒沢清監督コメント(全文)
このような素晴らしい賞をいただき、驚いております。
予想もしませんでした。
僕が映画を撮り始めてもう40年になりますが、初めて釜山映画祭に参加したのはおよそ20年前なので、僕の映画人生の半分は釜山映画祭に見守られていたと言っていいでしょう。
その20年間のキャリアが評価され、このような名誉ある賞をいただけたのだと思います。
たいへん感激しております。
と、ここまでは過去の話でした。
みなさんが興味あるのはやはり現在ですよね。
僕は今年2本の映画を完成させましたが、その2本が両方ともこの釜山映画祭で上映されます。
僕にとってはこれが何よりもうれしいことです。
釜山映画祭の観客は、世界で最もハイ・レベルな観客だと僕は思っておりますが、その方たちに、僕の最新作2本をお見せするために、僕はまた釜山にやってきました。
20年前から僕の作品を見続けてくれている方も、今回初めてご覧になる方も、どうぞ楽しみにしていてください。
本日はありがとうございました。
■ポン・ジュノ監督のメッセージ(全文)
黒沢監督の長年の、そして筋金入りのファンとして、アジアン・フィルム・メーカー・オブ・ザ・イヤー賞の受賞、心からお祝いを申し上げます。
『CURE』『回路』『トウキョウソナタ』『アカルイミライ』『クリーピー 偽りの隣人』『散歩する侵略者』…私が心の底から大好きな作品ばかりです。黒沢監督は我々に常に衝撃と刺激を与えてきました。1人のフィルム・メーカーとして、黒沢監督に今一度感謝をお伝えします。
釜山で素敵な時間を過ごされることを、心の底からお祈りしております。
■濱口竜介監督のメッセージ(全文)
おめでとうございます。学生時代からたくさんのことを教わって、今自分が仕事ができているのも黒沢さんのおかげだと思っていて、全てを教わったようなそういう気持ちでおります。
これからも恐ろしく、そしてなぜが爽快な映画を作り続けていってほしいと思います。その背中をずっと追いかけます。改めて、おめでとうございます。
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