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マンガ原画のデジタル美術館が開館、第1期展の作家はいがらしみきおや細野不二彦

2024年10月02日 17:48  コミックナタリー

コミックナタリー

「マンガ・アート・ミュージアム」告知ビジュアル
マンガの原画をオンライン上のバーチャル空間に展示するデジタル美術館「マンガ・アート・ミュージアム」が、本日10月2日にオープンした。

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ミュージック・コミックスとロイヤリティバンクが設立した「マンガ・アート・ミュージアム」。館長には、週刊ヤングサンデーやビッグコミックスペリオール(どちらも小学館)などの編集長を歴任し、その後は京都精華大学マンガ学部の教授を務めた熊田正史氏が就任した。同館では5期にわたり、日本を代表する作家100人による5000点もの作品が展示される予定。作品によっては、作家からのコメントも併せて掲載される。

オープンと同時に開催される第1期展「1980~2000年・日本マンガの黄金時代を彩った12人の作家たち」では、青柳裕介、いがらしみきお、犬木加奈子、いわしげ孝、桑田次郎、齋藤なずな、さそうあきら、日野日出志、細野不二彦、村生ミオ、山本英夫、山本康人をピックアップ。それぞれの代表作から厳選された原画を中心に、約400点が展示される。

館長の熊田氏は「原画だけが持つ迫力と魅力の一端にぜひ触れて、アートとしてのマンガを鑑賞していただければと思っています」「日本の貴重な文化遺産ともいうべきマンガ原画をデジタルで永久保存するとともに、世界のマンガファンにアートとしてのマンガを再発見してもらう、というのもこのミュージアムの大きな目的のひとつです」とコメント。第1期展で作品が取り上げられる山本は印刷だとカラー原稿の仕上がりに満足いかないことも多いと明かし、「カラー原画をデジタルで見ていただけるということで、何か少し報われたような気がして実にうれしいですよね」と述べた。

■ 熊田正史氏(館長)コメント
マンガの原画と、我々が目にするコミック誌やコミックスの絵はまったく別物なんですよね。僕が小学館に入社して最初に担当したのは手塚治虫先生なんですが、初めて原稿を受け取ったときのショックは今でも忘れることができません。キャラクターの感情までをも表現するようなペンタッチ、ていねいに削られて見事に陰影を描き出すスクリーントーンの使い方、マンガ誌で見るのとはまるでちがう迫力に、原稿を持つ手が震えたのを今でも覚えています。
残念なことにコミック誌は束を出すために粗悪な紙が使われています。そのため、このペンタッチはほとんど消えてしまうんですよね。ましてやサイズの小さな単行本ではトーンの微妙な陰影なども潰れて極めて単調なものになってしまいます。カラー原画は多色で描かれたものを4色で再現するため、粗悪な紙と相まって原画とは似ても似つかないものなっているのが現実です。
昔、読んだマンガの原画を見て、原画だけが持つ迫力と魅力の一端にぜひ触れて、アートとしてのマンガを鑑賞していただければと思っています。
さらに大事なのは原稿用紙というのは酸性紙なので劣化が早いんですよね。そのため20年、30年で変色し、ひどいものはボロボロになってきます。さらにマンガ原稿というのは枚数が多いために保管もむずかしく、数十年後には消失しかねません。
明治期になって、浮世絵がアートとして認められることなく、極端なケースでは輸出品の陶磁器類のパッキン代わりに使われたりもして、その多くが消失してしまいました。このままいけば日本のマンガ原画も浮世絵の二の舞になりかねません。
そこで、この日本の貴重な文化遺産ともいうべきマンガ原画をデジタルで永久保存するとともに、世界のマンガファンにアートとしてのマンガを再発見してもらう、というのもこのミュージアムの大きな目的のひとつです。

■ 山本康人コメント
マンガは絵が命なんですよね。僕は絵が描きたいからマンガを描いています。どう描けば、キャラクターに命を吹き込めるのか、どう描いたら、僕のこの思いが読者に伝わるのか、何十本も線をひいて、その中から最も気に入った一本の線に、ペンと墨汁で一気に書き上げ命を吹き込む。一本の線に命を賭けるのがマンガ家なんですよね。キャラクターの表情がどう描いても気に入らなくて1コマに8時間かけたこともあります。担当編集者の方は怒っていましたけどね。
いちばん口惜しい思いをするのがカラー原稿ですよね。苦労して色を重ねて描き上げた夕日が、印刷されると朝日なのか夕日なのかわからないようなものになってしまう。僕としては夕日ということに意味性を持たせるために、死に物狂いで夕日のイメージを作り上げたつもりなだけに実に残念です。
まあ、美術印刷ではないんであきらめてはいますけどね。古いと言われるかもしれませんが、個人的には僕は最後まで紙とペンにこだわり続けたいですね。
今回、カラー原画をデジタルで見ていただけるということで、何か少し報われたような気がして実にうれしいですよね。