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小山美姫が女性ドライバー初のS耐総合優勝。急な不安や攻めたい気持ちを抑え「いちばんを守って帰ろうと走った」

2024年10月01日 17:20  AUTOSPORT web

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2024スーパー耐久第5戦鈴鹿 総合優勝を飾った嵯峨宏紀/小山美姫/小高一斗/永井宏明(DENSO LEXUS RC F GT3)
 9月28~29日に三重県の鈴鹿サーキットで開催されたENEOSスーパー耐久シリーズ2024 Empowered by BRIDGESTONE第5戦『SUZUKA S耐』。今季初優勝を飾ったDENSO LEXUS RC F GT3だが、今季から同チームのステアリングを握る女性ドライバーの小山美姫にとっては、初めてのスーパー耐久総合優勝を飾った。

 チームとしても今季初優勝がかかった重要な局面で最終スティントを任された小山。緊張感を持ちながらも、これまで経験して学んだことを存分に発揮した走りを披露した。

 ポールポジションからスタートしたDENSO LEXUS RC Fは、天候回復を見込んでウエット路面のなかをスリックタイヤでスタートした小高一斗がリードを築くと、2番手で乗り込んだ永井宏明は後方から迫ってきたライバル相手に一歩も譲らない走りを披露。最終的に3番手に後退したものの、大きな差をつけられることなく自身のスティントを終えた。

 3番手スティントは嵯峨宏紀が担当。ライバルたちがジェントルマンドライバーを起用したスティントのなかで着実にリードを広げていき、約30秒のアドバンテージを持って最終スティントの小山にバトンを渡した。

「(交代前は)緊張しました。今週はみんな良いフィーリングで走れていたので、『こんなに調子が良いときに私がアンカーで大丈夫?』と思いました」と小山。

「でも、最初が難しいコンディションだったので小高選手がいったのは正解だったと思います。その後に永井選手が頑張ってライバルを抑えてくれる場面もありましたし、嵯峨選手が淡々とマージンを築いてくれたのを見て『ここはしっかりと決めていかないといけないな』と思ったら、ちょっと緊張し出して……」

「それこそ、ダブルチェックではないですけど『エンジンをかけるのは、ジャッキが降りてからですよね?』など、普段は普通にやっていることなのに急に不安になって、乗る前に質問してからいきました(苦笑)」と小山は当時の心境を振り返った。

 2番手を走行する中升 ROOKIE AMG GT3は蒲生尚弥が最終スティントを担当。47秒のギャップを守れるかがポイントとなったが、小山はしっかりとリードを守る走りに徹していった。

「みんなが作ってくれたマージンがあったので、気持ちに焦りもなかったです。そこまでプッシュはしていなかったですけど、蒲生選手とのギャップが変わらなかったので『無理をするのはやめよう』と思いました。FCY解除で少しプッシュしましたが、最後のカウントダウンが始まってからはマージンを持って走りました」と小山。

「『とにかくクルマを壊さないで帰ってきてください』と強く言われていたので、最後に燃料が軽くなってプッシュしたいという気持ちも出てきましたが、そこは抑えて……チームとしてのいちばんを守って帰ろうと思って走りました」と、自身の攻めたい気持ちを抑えて、チームのために最終ラップまでしっかりと走り切った。

■「ここまで勝てなかったけど私は毎回学んでいた」これまでと違うチェッカーへの感情
 女性ドライバーとしてはN1耐久時代の佐藤久実以来となるシリーズ史上ふたりめ、スーパー耐久に名称が変わってからは初めての女性ドライバー総合優勝を成し遂げた小山。「このカテゴリーに参戦させてもらっていなかったら、こういった結果には繋がっていなかったです。このカテゴリーに参戦する機会を作ってくれた人たちが昨年たくさんいたので、その人たちに感謝したいです。あとは、このレースも自分ひとりだけではこの結果に繋がっていないので、本当にチームのおかげだなと思います」と、ここまで支えてくれたチームや関係者に感謝の想いを伝えた。

「みんなはレクサスRC F GT3でのレース経験も長くなってきて、うまくいかないことも感じているかもしれません。でも、私としてはすべてが初めてで、ドライバーとして足りない部分もあります。どんな状況でも自分で詰められる部分を探していかないといけないというスタンスで今年は戦っていました」

「このチームはスーパーフォーミュラに乗っている小高選手がいますし、永井選手もジェントルマンドライバーとは思えないような走りを毎回見せてくれて、嵯峨選手も経験豊富で、みんなから学べることはたくさんあります。それを今年はしっかりと吸収して、自分の力に繋げていくことを目的としています」

「ここまで勝てないレースが続きましたけど、私自身は毎回学ぶことがありました。それがスーパーGTやランボルギーニ(ランボルギーニ・スーパートロフェオ・アジア)に活きていたので、すごくポジティブに過ごしていました。逆にすべての環境が噛み合ったときに、自分が迷惑をかけないように良い走りができるように準備してきたつもりだったので、本当にここで変なミスをせずに帰ってくることができて良かったなと思います」

 これまではフォーミュラ・リージョナル・ジャパニーズ・チャンピオンシップをはじめ、さまざまなカテゴリーで優勝を飾ってきた小山。ただ、スーパー耐久で受ける総合トップチェッカーは違う感慨深さがあった様子で「初めて見る景色だなと思いました。スーパー耐久にはいろいろなチームがいて、他のチームの人も祝福してくれましたし、今日は一日が長かったです。私のスティントが始まるまでも長かったので、ちょうど陽も落ちてきて『いい景色』だなと思いました」と笑顔を見せた。

 また、チームのAドライバーを務める永井にとっては、地元の鈴鹿で総合優勝となった。「鈴鹿で勝てたというのは本当に嬉しいですね」と笑顔を見せていたとともに小山の初優勝についても言及し「小山選手が最終スティントを担当して優勝できたというのも大きいです。本当にみんなよく頑張ってくれました」と1年ぶりの総合優勝を喜んだ。