『虎に翼』からバトンを受け取り9月30日からスタートする、連続テレビ小説『おむすび』(NHK総合/毎週月曜~土曜8時ほか)でヒロインを務める橋本環奈。朝ドラ初出演にして初主演という大役について「気負わずに“楽しく”を一番に」と笑う橋本に、撮影中の裏話や自身が演じる役柄について語ってもらった。
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■地元・福岡ロケに感慨 博多弁の演技は「リアリティを追求」
『おむすび』は、平成元年生まれのヒロインが、栄養士として人の心と未来を結んでいく“平成青春グラフィティ”。本作で橋本は、どんな時でも自分らしさを大切にする“ギャル魂”を胸に、平成から令和をパワフルに駆け抜ける主人公・米田結を演じる。そんな結の姉で、地元・福岡で“伝説のギャル”として知られる歩役には仲里依紗、2人の両親・聖人役と愛子役には北村有起哉と麻生久美子がキャステイングされている。また、福岡県糸島市で一緒に暮らす祖父母・永吉と佳代を松平健と宮崎美子が演じるなど、豪華キャストが顔をそろえた。
本作の脚本は『相棒』シリーズ(テレビ朝日系)、『監察医 朝顔』シリーズ(フジテレビ系)などのシリアスな作品から、『正直不動産』シリーズ(NHK総合)、『パリピ孔明』(フジテレビ系)といったコメディも手がける根本ノンジ。彼にとって今回が連続テレビ小説初挑戦となる。
根本の書く台本を手にした橋本はその内容について「テンポ感が良く、面白くて、読んでいて“早く演じたい!”という気持ちになっていました」と明言。続けて「特に私が大好きなのは、米田家の家族のシーン」と挙げ、「それぞれ個性があるけど、みんな愛くるしいキャラクター」と語る。さらに「心情がすごく丁寧に描かれているので、演じていても迷うことがないです」と俳優としての側面からも根本脚本を評価する。
物語は福岡県糸島を舞台にした結の高校時代からスタートする。ロケが行われた地元・福岡について橋本は「高校卒業までずっと住んでいた大好きな街」と笑顔を見せつつ「学生の時に友達とよく出かけ、遊んでいた場所がロケ地になっていて、すごく懐かしい」と目を細める。そんな彼女がこだわったのが“博多弁”だ。「博多弁でのお芝居はやっぱりやりやすくて。博多弁になじみのない視聴者の皆さんにとって違和感にならないように、標準語と混ぜたセリフにするというアイデアもあったんですけど、ドラマの中では、自分のなじんでいる博多弁のリアリティを追求しました」。
■大好きだった仲里依紗と初共演で姉妹役「里依紗さん自体がギャル」
橋本もお気に入りの“家族のシーン”は、今年の春から撮影が進められていて、チームワークはバッチリのよう。「撮影の合間はずっとみんなでおしゃべりしてますね(笑)。他にも麻生久美子さんや北村有起哉さんたちとストレッチしたりして和やかです」と振り返りながらも、話題は米田家の食卓のシーンへ。「今回の作品は“食”がテーマなので、食卓のシーンがとにかく多くて」と説明すると、食卓のシーンで実際に並ぶ料理が美味しいと絶賛。「食い意地が張っているようでちょっと恥ずかしいんですけど、カットがかかっても箸を置けなくて(笑)」。
そんな米田家の中でも、この物語のキーパーソンとなるのが、仲演じる姉・歩の存在。橋本は「結にとって歩は真っ正面からぶつかれる相手」と分析。「口では強く言っても、結が歩に甘えている部分があって」と語ると、撮影を振り返り「最初の方は、姉妹がぶつかるシーンが多かったので、私から里依紗さんに声をかけていいのか、分からない部分があって。だから姉妹の仲が睦まじくなってからのシーン以降は、もう基本的にずっと一緒にいてお話しています」と明かす。
撮影の合間は2人ともリラックスしているそうで「何の話してるか…。本当に普通の世間話ですね」とのこと。「本当に明るくて、とても潔い方なので、里依紗さん自体がギャルみたいな印象です。現場でもその快活さが誰に対しても変わらないので、尊敬しています。もともと大好きだったんですけど、今回ご一緒してからさらに好きになりました」。
■渾身のギャルメイクに実父ビックリ“これ誰ね!?”
今回のドラマでは“食”と同様に“ギャル”が重要なモチーフとなる。それはファッションだけでなく90年代や2000年代初頭のギャル文化、その中で培われたマインドにも及ぶ。とはいえ1999年生まれの橋本にとって、ギャルは少し上の世代の存在。当時を知るために資料に目を通したという。「髪やメイクの色、ネイルがすごいなって、見た目については思っていたんですけど、実際に演じてみた時に“ギャルって心意気なんだな”って思ったんですよね。物語の中にも“好きなことを貫く”とか“周りの目を気にしない”といった掟のようなものが出てくるんですけど、今はSNSもあって、気にするなって言っても気になっちゃう。そんな世の中だからこそ、周りに何を言われても自分が好きだと思ったら貫くという“ギャル魂”って素敵だし、大事なんだなと感じました」。
劇中では、高校生の結がギャルメイクをしたり、イベントでパラパラを踊るシーンもあるそうで「実際に糸島市のエキストラの皆さんの前でパラパラを踊りました。最初はちょっと戸惑いもあったんですけど、最後の方はノリノリでみんなで楽しく踊ってました」と振り返る。ギャルメイクについても「チョコレートぐらいのファンデーションを塗って、つけまつげもバッサバサのものをつけて。口に脂を塗ってるんじゃないかっていうぐらいテカテカの口紅をつけたりもして(笑)。本当に自分じゃないみたいでした」と変身を楽しんだ様子。
イベントでパラパラを披露するシーンを撮影した際、現場に彼女の母親や友人たちが見学に来たそう。「お父さんは来られなかったんですけど、ギャルメイクをした私の写真を送ったら“これ誰ね!?”って返事が来て、私って気づかなかったみたいです(笑)。実際、台本の中で有起哉さん演じるお父さんが、ギャルメイクをした結を見ながら“えっと、結はどこだ?”っていうシーンがあるんですよ。台本を読んだ時には“いや、さすが自分の娘は気づくでしょ!”って言ってたんですけど、実際うちのお父さんが気づかなかったので、リアルなんだなと思いました(笑)」。
■被災者を演じる決意と覚悟「丁寧に演じなければいけない」
青春時代を福岡で過ごす結。しかし彼女は平成元年に兵庫県神戸市で生まれていて、6歳になる1995年1月17日に発生した阪神・淡路大震災で被災したという設定になっている。生まれる前に起こった大災害について橋本は「情報をまったく知らない状況だった」と明かしつつ、幼少期に被災した役柄を演じるにあたっては、実際に6歳の時に被災した人にも話を聞いたという。「“うっすら覚えている”という言葉や“なんとなくみんなが悲しそうにしていた”という声、その他にも“友だちと避難所で一緒に生活するのが新鮮だった”というお話も聞きました」。
最大震度7の揺れによって日常が一変した当時の子どもたちの証言を聞き「6歳の子どもが、震災としっかり向き合って考えられるかというと、そうじゃない部分もあると思います」と橋本。真剣な表情で「被災した経験のある方々がドラマを見ていて、辛い気持ちにならないようにしたいと思いつつも、嘘は描きたくないという気持ちもあるので、本当に丁寧に演じなければいけないなと、監督やスタッフの皆さんと何度も話して撮影に臨みました」と打ち明けた。
“ギャル”というカルチャーを通して、激動の平成~令和を生きる人々を描く本作。朝ドラ初出演の橋本が主人公・結を通して、どんな物語を見せてくれるのか、期待しながら放送を待ちたい。(取材・文:スズキヒロシ 写真:高野広美)
連続テレビ小説『おむすび』は、9月30日よりNHK総合にて、毎週月曜~土曜8時(土曜は一週間の振り返り)ほか放送。