2024年09月28日 10:11 ITmedia NEWS
最近、「ゲーミング○○」が増えすぎだ。ゲーミングとつければ何でも売れると思うなよ──家具や飲食料、雑貨の新発表を見てこう思ったことはないだろうか。記者にはある。コロナ禍からの在宅需要をいいことに、ゲームを体のいいマーケティング用語に使うなよ──とささくれ立っていたが、「東京ゲームショウ2024」(9月26~29日、幕張メッセ)でとある売り文句を見かけて思わずグッときてしまった。その文句がこれだ。
復唱しよう。「ゲーミング防災バッグ爆誕。ゲーミング防災て……何でもかんでも『ゲーミング』をつければ売れるとでも思たの!? いま、そう思ったそこのアナタッ! でも逆に『ゲーミング』って付いてなかったらこのブースをスルーしてませんでしたか?」(原文ママ)だ。潔い。確かに記者は、この文言がなければ展示をスルーしていた。
ブースを出展しているのはスターリングプロダクト(大阪市)という会社だ。現地では年内に発売する予定の防災バッグ「ゲーミング防災バッグ」を宣伝していた。バッグは大小の2サイズあり、価格は1万5000円から1万8000円程度を想定。表面には反射素材を使っており、光が当たる角度によってさまざまな色に見えるという。
付属のベルトなどを使うことで、ゲーミングチェアなどの脚部にくくり付けておくことも可能。ウエストバッグやボディバッグのようにも使える。
しかし、同社はもともとラジオのメーカー。一見、ゲームとは無縁だ。なぜ防災バッグをゲーミングの名で売り出そうと思ったのか──同社の吉井章人代表によれば、そこには同社の事業特有の事情があるという。
実はスターリングは、ラジオの中でも防災用のラジオを手掛けており、関連商品としてオフィス向けの防災バッグを開発していた。しかしリモートワークの普及に伴い、オフィス向けの需要が見込めない懸念があった。
そこで一般向けにも展開することを決定。しかし防災用品は、何か災害があったタイミングはともかく、平時は関心を向けられにくい。ただの防災バッグならなおさらだ。どうにかして、平時にも関心を持ってもらう手段はないか──として、「ゲーミング」の名を冠する防災バッグを企画したという。
とはいえ、それだけではさすがに消費者が納得しない。そこで「表面がさまざまな色に」「ゲーミングチェアと組み合わせて使える」といった機能を搭載。先述した潔い売り文句と共に、東京ゲームショウでの展示に乗り出したわけだ。
一方で、ゲームと防災は必ずしも無関係ではないと吉井代表。「遠い地域で起きた災害はひとごとになりがち。しかし、例えばYouTuberのゲーム配信を見ている最中、配信者や同じリスナーが被災したと分かったら、より身近に感じられるはず。ゲーマーや配信者こそ(被災の)状況をイメージしやすいのでは」
果たしてゲーミング防災バッグは市場に評価されるのか、もしくは“何でもかんでも”の一つで終わるのか。先行きが見物だ。