2024年09月26日 17:11 ITmedia NEWS
Teslaが誇る大きな武器として、自宅等にいながらにして行えるOTA(Over The Air)によるソフトウェアアップデートがあります。他のメーカーにもOTAアップデートを謳うクルマがありますが、「Teslaさんが実施しているようなあらゆる機能に及ぶアップデートには対応できない」(ある国産メーカーのマーケティング担当者)と言われるほどです。
【画像を見る】テスラの夏のアップデートでできるようになったこと(計6枚)
6月、Model 3に大きなソフトウェアアップデートがありました。その中から注目度の高い項目をピックアップして紹介しましょう。
1. アダプティブハイビーム
2. 周囲の交通状況映像のアップデート
3. 高速道のSA・PAの表示
4. Audibleアプリの追加
アップデートはもちろん嬉しくもあるのですが、同時に今回のアップデートでは、同じModel 3であっても、インフォテインメント用のCPUの違いでユーザーインターフェイス(UI)に大きな差異が生じており、ハードウェア由来の陳腐化の進行を身をもって知るところとなりました。
例えば、最新のModel 3では、次の動画のように自車の様子を全画面表示することができます。さらに、走行中は全画面で周囲の交通状況を映し出すことができます。筆者の21年式Model 3では、現状この全画面表示ができません。CPUの処理速度が追いつかないからでしょうか。
まあ、考えてみれば当然で、iPhoneにしても現状のiOS 18においては、 iPhone 8/8 PlusやiPhone X以前の機種はサポート対象外なわけです。「SDV(Software Defined Vehicle)は、アップデートで常に最新の機能が得られ、クルマが古くならない」という言説を目にすることがありますが、それも程度問題ということです。
●アダプティブハイビームで夜も御安全に
アダプティブハイビームというのは、ヘッドライト機能の名称です。ハイビーム走行時であっても、先行車や対向車がまぶしくないように、その部分だけ光が当たらないよう、あるいは路肩の歩行者などを発見しやすいように自動で調光してくれるシステムです。さらに、前方のカーブに合わせた調光も行ってくれます。
Model 3の場合、従来は先行車や対向車を検知してハイビームのオンとオフを切り替えるだけの機能しか提供されていませんでした。OTAでアダプティブハイビームが有効化されたということは、もともと、それを可能にする、個々のLEDを制御可能なピクセルLEDヘッドライトが搭載されていたということでしょう。
以前、本連載「テスラ車に乗るとはこういうことだ! アップデートに一喜一憂、GitHubから機能追加も」でTeslaのライトショーをご紹介しました。その際の動画をご覧いただくと分かりますが、ヘッドライトの光で壁に「Tesla」の文字が浮かび上がっています。このあたりからも、製造時にハードウェアを搭載しているものの、それを制御するソフトウェアを後からOTAで提供した、ということが想像できます。
次の動画は、夜の中央高速におけるオートパイロットを使用したときの走行映像です。少し見えにくいかもしれませんが、先行車、対向車、カーブに合わせてヘッドライトの光が変化しているのが見て取れます。オートパイロットをオンにすると、アダプティブハイビームが自動的にオンになる仕組みです。
●周囲の交通状況をより詳細に表示するスクリーン
以前よりスクリーン右側には、周囲の交通状況をグラフィック映像で表示する機能を有していました。乗用車、トラック、バン、歩行者、自転車、オートバイに止まらず、リードにつながれた犬やパイロンまで、CGオブジェクトとして表示する念の入れようです。
ただ、前後のクルマや歩行者のオブジェクトの数をある程度間引いて表示していました。見えるままにたくさんのオブジェクトを表示すると描画の処理速度が追い付かないのだろうな、と想像していました。
しかし、今回のアップデートで、より詳細に周囲の状況を表示するようになりました。端的に言うと、表示するオブジェクトの数が一気に増えたのです。下記の動画にもあるように、歩行者、自転車、交差点を横切る他車などが、ほぼリアルタイムでスクリーンに投影されています。最初は、見えすぎて驚いたくらいです。
あらかじめ何種類かのCGオブジェクトを用意してあり、形が最も近いものを表示しているようです。従って、大型トラックは画一的にケンワースのボンネットトラックのようなシルエットで描かれます。バンは、ダッジのラム・バンを連想する形です。
さすがに、各国のクルマ事情に合わせてCGオブジェクトを準備する、といった手の込んだことはできないのかもしれません。日本向けに、軽トラのCGオブジェクトがあると楽しいのですが…
ただ、せめて信号機の設置方式くらいはローカライズして欲しいものです。タテ型が主流の米国、ヨコ型が主流の日本ですが、信号機のCGオブジェクトはタテ型しか表示されません。米国にもヨコ型信号はあるので、Tesla的には特別こだわる必要はないという考えなのでしょうか。
●やっと、対応した高速道のSA・PAの表示
国産のナビゲーションシステムの場合、高速道路を走行するとナビ画面が高速道路専用のモードに切り替わり、進行方向に存在するサービスエリア(SA)やパーキングエリア(PA)、ジャンクションなどを、カード形式で表示してくれます。高速道路の遠距離旅で、休憩や食事をとるための必須のアイテムと言えます。
しかし、これまでTeslaのナビにはこの表示がありませんでした。そのため、昔のドライブのように、頭上のSA・PAの表示を気にしつつ、「トイレ休憩まで後○○kmか~」などと同乗者と話していました。不便なことこの上ありません。
やっと、本当に、やっと、SA・PAが緑色のカード型で表示されるようになりました。ただ、スクリーンの左端、ドライバーから見たら遠い位置にとても控えめに表示されます。もう少し大きく表示してくれたら見やすいのですが…。今後のアップデートで改良されることを期待します。
例えば、ウインカーを出した際のサイドビューカメラの小窓表示については、アップデートによる初回実装時は、右下固定でしたが、その後、3か所の好みの位置にドラック可能になりました。そして、今では、横車線に別の車両が存在すると該当する方向の枠が赤く点滅して注意を促すようになりました。
SA・PA表示も大きさを変えられたり、表示位置をカスタマイズできるようになることを期待しています。
●Audibleアプリの追加
筆者は、オーディオブックサービスである「Audible」が、2015年に初上陸を果たしたときからのヘビーユーザーです。
途中、聴き放題からコイン制に以降した際、コスパ的に魅力がなくなったので、一度、退会しましたが、2022年に再度、聴き放題が復活してからというもの、Teslaでの移動中はもちろん、家事、犬の散歩、就寝時など、iPhoneアプリで耳からの“読書"に余念がありません。
耳からの読書には、本のジャンルにより向き不向きがあります。小説やエッセイなど、ストーリーやドラマ性を楽しむエンタメ系の読み物は適しています。
その一方で、教養系のジャンルには向いていないと感じています。「この言説は、前出の○○○に関連するので、さかのぼってその言説を再度確認しよう」と思っても、その部分を“読み返す"ためには、もう一度、再生する必要があります。
小見出しがよほど丁寧に設定されていない限りは目的の箇所をズバリ再生することは難しいので、探す手間が増え、“読み返し"に時間がかかります。メモを取ることも難しいです。従って、筆者は小説を中心に楽しんでいます。
オーディオブック小説に欠点があるとしたら、ナレーターのキャラや声質に、その小説が内包する物語や世界感が左右されてしまうことでしょう。それを避けるためには、Kindle本のText to Speechによる再生がいいのかもしれませんが、AI音声なので無機質で味気ない“読書"になります。
まあ、最近は、Audibleにおいても、「デジタルボイス」と称してコンピュータに教養系コンテンツを朗読させるものも増加しているので、そのうち小説にもデジタルボイスが進出してくるのでしょうか。
という個人的な事情も相まって、Audibleアプリの追加は大歓迎です。ただ、ちょっと残念なのは、iPhoneとアプリと同じアカウントでログインしているにもかかわらず、現在進行形で読書中のオーディオブックの続きの箇所が同期されない事案がしばしば発生します。さすがにこれは不便なので、引き続き経過観察を行っていきたいと思います。
この原稿を執筆した後、2回のアップデートがありました。直近の9月18日のアップデートでは、オートパイロット中の自動緊急ブレーキの改善、YouTube MusicやAmazon Musicアプリの追加、ナビゲーションのサブ目的選択機能などが追加されました。