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“普通じゃない”スマホ「razr 50」でモトローラが打ち出す戦略 ソフトバンクは1年36円、対iPhoneにも自信

2024年09月19日 13:01  ITmedia Mobile

ITmedia Mobile

日本投入を発表した「motorola razr 50/50s」。「そろそろ“フツー”に飽きてきた?」というキャッチコピーで折りたたみスマホの斬新さを訴求する

 モトローラ・モビリティ・ジャパンが、新しい折りたたみスマートフォン「motorola razr 50(以下、razr 50)」を9月27日に発売する。razr 50は、同社の5世代目となる縦折り型のスマートフォン。ソフトバンクからは「motorola razr 50s」が発売される。


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 razr 50/50sをフックに、モトローラ・モビリティ・ジャパンは同社のブランド認知向上と折りたたみスマホの市場拡大に向けた戦略を打ち出す。


●3.6型のアウトディスプレイでほぼ全てのアプリを操作できる


 razr 50最大の特徴は、先代の「motorola razr 40」では約1.5型だったアウトディスプレイが、約3.6型に大きくなったこと。これにより、閉じた状態でもアプリを呼び出すことができ、カメラ、ブラウザ、SNS、メッセージのやりとり、動画視聴など多彩な操作ができる。Amazonプライム・ビデオについてはHDR10の表示にも対応している。音楽もアウトディスプレイで再生でき、motorola razr 50はLINE MUSICをプリインストールしている。


 閉じたままカメラを利用できるメリットは、より高性能なアウトカメラを使って自分撮りができることだ。アウトディスプレイに被写体(自分)を映せるので、表情や角度も大きな画面で確認できる。スマホを持ったまま2回ひねるとカメラが起動し、手のひらをかざすとシャッターが切れるショートカットも用意している。


 PayPayを始めとしたバーコード決済用のアプリも利用でき、閉じたままQRコードを表示して決済ができる。閉じたままカメラも起動できるので、店頭に表示されたバーコードを読み取る決済も可能だ。


 仕様上は全てのアプリをアウトディスプレイで呼び出せるが、アウトディスプレイがほぼ正方形に近いため、アプリによってはボタンや文字入力欄などが表示されない場合がある。そのため、モトローラは「ほぼ全てのアプリを表示して操作できる」と説明する。なお、「motorola razr 40 ultra」も3.6型のアウトディスプレイを搭載しており、閉じたまま可能な操作はrazr 40 Ultraと変わらない。


●ヒンジの耐久性が向上、折りたたみ機構を生かしたフレックスビュースタイルも特徴


 カラーはコアラグレイ、サンドクリーム、スプリッツオレンジの3色を用意し、ヴィーガンレザー仕上げを施している。より高い耐久性やデザイン性を実現すべく、折り目の目立たない第4世代のヒンジを採用した。モトローラ・モビリティ・ジャパン テクニカルサポートグループ 開発事業部長の伊藤正史氏は「ヒンジモジュールを小型軽量化し、耐久性も向上させた。長く使っても折り目が目立たないよう仕上げている」と説明する。


 開閉する際の心地よさも向上させた。「razr 40は開閉する際に一定のトルクを加えていたが、razr 50は開き切るときに少し加速度がついてパタンと開く。昔のガラケーのような操作感を得られる」(伊藤氏)


 razr 50ならではの使い方が「フレックスビュースタイル」だ。折りたためる機構を生かし、「スタンド」「テント」「ラップトップ」という3つのスタイルを用意する。


 スタンドでは、本体を半開きにした状態でアウトディスプレイにさまざまな情報を表示させる。テントも半開きにした状態だが、こちらは文字通りテントのように山折りに開いたまま固定する。これら2つのスタイルで端末を固定し、スリープ状態のまま時刻や通知を確認したり、あらかじめ設定した好きな画像をランダムで表示させたりできる。アウトディスプレイを使ってビデオチャットをしたり動画を視聴したりもできる。


 バータイプのスマホをスタンド的に使うには、スタンド付きのケースを装着するなど一工夫必要だが、razr 50ならケース不要でそのような使い方ができて便利だ。


 ラップトップモードでは、半開きで固定してメインディスプレイを活用する。こちらも端末を固定して動画を視聴する際に便利だ。なお、メインディスプレイはHDR10+や120Hzのリフレッシュレート(アウトディスプレイは90Hz)に対応しているので、動画視聴の画質を重視するならラップトップモードの方がいいだろう。


●防水性能はIPX8に カメラ撮影や画像生成に「moto ai」を活用


 razr 40/40s/40 UltraではIPX2にとどまっていた防水はIPX8にアップグレードした。ただしrazr 40シリーズで対応していたIP5Xの防塵(じん)は、razr 50では非対応になった。


 アウトカメラには、光学式手ブレ補正対応の5000万画素メインカメラと、1300万画素の超広角カメラを搭載。インカメラは3200万画素だ。


 カメラにはモトローラのAI機能「moto ai」を活用し、動画撮影時に被写体が常に中央に位置するよう調整する「アダプティブスタビライゼーション(適応型手ブレ補正)」と、超広角カメラ使用時に被写体を水平に固定する機能も導入した。これらは、加速度センサーとジャイロセンサーの情報をもとに、撮影者が次にどんな動きをするのかをAIが予測することで実現しているという。


 折りたたみ機構を生かし、動画撮影時にrazr 50を半開きにして片手でハンディビデオのように撮影できる「ハンディモード」も便利だ。


 4200mAhバッテリーやDolbyAtmos対応のステレオスピーカーはrazr 40から継承している。プロセッサはrazr 40のSnapdragon 7 Gen 1からMediaTekのDimensity 7300Xに変更された。


 moto aiの機能として、撮影した写真に写る服や模様などから壁紙を生成する「Style Sync」に対応する他、ソフトウェアアップデートにより、要望に添った画像を生成してくれる「Magic Canvas」も提供する。対話型AIとして、Googleとのパートナーシップにより「Gemini」をプリセットしており、閉じたまま質問を投げかけられる。「アウトディスプレイでGeminiが使えるのは、フリップタイプの折りたたみはrazrのみ」(伊藤氏)とのこと。


●ソフトバンク向けrazr 50sは1年間36円、パートナーシップを継続


 razr 50のMOTO STOREでの価格は13万5800円(税込み)。razr 40の12万5800円からは値上がっているが、スペックが向上していることと昨今の円安状況を考えれば妥当なところか。一方、ソフトバンクのrazr 50sは一括11万5200円。razr 50はメモリ/ストレージが12GB/512GBだが、razr50sは8GB/256GBとしており、その分価格を安くしている。


 また、ソフトバンクはrazr 40sで2年間実質24円という攻めた価格を打ち出していたが、その姿勢はrazr 50sでも継続している。razr 50sでは「新トクするサポート(プレミアム)」を適用すると、1~12回の支払いは月3円に抑えられているので、1年間は総額36円で運用できる。


 ソフトバンクがここまでアグレッシブな施策を打ち出すのは、日本で折りたたみスマホを普及させたいという思いがあるため。ソフトバンクでは2021年3月に発売した「motorola razr 50」を皮切りに、これまで5機種のモトローラ端末をソフトバンクとY!mobileで扱ってきた。razrに関しては「価格が高い、壊れやすいという声があったので、先代(razr 40s)は10万円を切る価格を実現し、iCrackedで即日修理にも対応した」と、ソフトバンク 執行役員 モバイル事業推進本部 本部長の郷司雅通氏は話す。


 その結果、2024年1月~6月のフリップタイプスマートフォンの販売シェアはソフトバンクが1位を獲得。ただ、「この結果はまだ道半ば」と郷司氏。日本の折りたたみスマートフォンのシェアは、米国に比べて4分の1というデータがある。折りたたみスマホでは「日本はブルーオーシャン」(同氏)なので、ソフトバンクとしてもrazr 50を精力的に訴求していく。「ソフトバンクショップではrazr 50sの専用什器(じゅうき)を展開し、来店者限定キャンペーンも行う」(同氏)


 郷司氏は、今後もモトローラとのパートナーシップを継続し、日本市場で驚きのある端末を展開することを宣言した。


●ブランド認知向上に向けて目黒蓮さんを起用


 9月17日に開催した発表会で、モトローラ・モビリティ・ジャパンの仲田正一社長は、日本市場で同社のスマートフォンビジネスが大きく成長していることを述べる。2023年度の出荷台数は前年比で135%増加し、オープン市場で3位のシェアを獲得。モトローラの検索件数も55%増加しているという。


 アウトディスプレイの使い勝手が増したrazr 50については「普通ではない体験を提供できる革新的な製品」と胸を張る。中でも重視するのが「パートナーシップ」と「ブランド認知向上」だ。


 パートナーシップは、先述の通りソフトバンクとの提携が大きな柱になっている。razr 50sは国内MNOではソフトバンクが独占販売するが、海外では上位モデルの「motorola razr 50 ultra」も販売されている。こちらの日本投入も気になるところだが、仲田氏は「今この時点で商品化について話せることはない。razr 50が最後の商品ではなく、今後も出すことは計画している」と含みを持たせた。ultraの投入や取り扱いキャリアの拡大も期待したいところだ。


 ブランド認知向上については、若年層の認知拡大を図るべく、目黒蓮さんをブランドアンバサダーに起用する。テレビCMも展開し、razr 50の分身であるアバターの「ミニREN」と目黒さんが共演する。ブランドの認知向上だけでなく、アバターを登場させることで、「24時間365日寄り添う最高の相棒になるように」(モトローラ・モビリティ・ジャパン マーケティング部長 清水幹氏)という思いを込めた。


 このアバターをフックに、ソフトバンクショップへの集客を狙った施策も行う。ソフトバンクショップに設置しているQRコードからアクセスできる「AIBOU MAKER」で自分のアバターを作成できる。これを9月17日から10月16日まで指定のハッシュタグを付けてSNSに投稿すると、抽選でモトローラのプロモーション映像に出演できる。


●海外ではrazr 40シリーズ購入者の20%がiPhoneユーザーだった


【訂正:2024年9月19日14時15分 初出時、見出しの内容が正確でなかったため、訂正いたしました。】


 モトローラ・モビリティ カスタマーエクスペリエンス&デザイン ヴァイスプレジデントのルーベン・カスターノ氏は、razr 50が向上させるユーザー体験について説明。razr 50のアウトディスプレイを大きくした意図について「過去のrazrシリーズのユーザーが1日75分以上も外部ディスプレイで何らかの操作をしていたので、従来の2.5倍となる3.6型にした」と説明する。「ユーザーはスマートフォンを開いたり閉じたりすることなく、全てのアプリにアクセスできる」(同氏)


 海外でrazr 50シリーズ発表後の反響について「ポジティブな反応をいただいている。一番高いシェアオブボイス(記事の露出量)を獲得している」とカスターノ氏は手応えを話す。先代のrazr 40シリーズは、海外で第3世代のrazrより5倍売れたという。その理由について「フリップのフォームファクター、ディスプレイ、ソフトウェア、バッテリー、カメラ、防水性能が従来のバータイプと比べても引けを取らない。全ての面で、バータイプに対して優位性がある」と話す。


 また、モトローラはスマートフォンを「ライフスタイルプロダクト」と位置付けており、ファッション性も重視。その一環として、色見本でおなじみのPANTONEと協業し、razr 50の本体カラーもPANTONEが監修している。こうした「非常にファッショナブルでトレンディー」な点も支持されているようだ。


 さらに興味深いのが、razr 40シリーズを購入したユーザーのうち、20%がiPhoneユーザーだったこと。その理由についてカスターノ氏は「革新的なフォームファクターだから」と即答。razr 50の発売タイミングは、くしくもiPhone 16シリーズが発売される1週間後だが、「自信を持っている」と同氏。「ポータブルでポケットに入り、アウトディスプレイも使いやすい」とrazr 50ならではの特徴が受け入れられることに自信を見せた。


 折りたたみスマートフォンは、razrのように縦方向に折るフリップタイプもあるが、Galaxy Z Foldのように横向きに折るフォールドタイプもある。razrではフォールドタイプのモデルは展開しないのだろうか。カスターノ氏に聞いたところ、フリップタイプこそがrazrだという。「別の折りたたみタイプだとrazrではなくなってしまう。手に収まるフィット感、ポケットに入るサイズ感こそがrazrの要素になっている」と話し、今後もフリップタイプのユーザー体験を向上させていくことを示した。