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日本の電動キックボード界に世界最大手「ライム」が参入! これからどうなる?

2024年09月19日 09:01  マイナビニュース

マイナビニュース

画像提供:マイナビニュース
日本の街中ではLUUPの電動キックボードで移動する人の姿をよく目にするようになってきた。そんな状況にチャンスを見出したのか、この業界で世界最大手の「ライム」(Lime)が日本上陸を決定した。ライムのサービスはどんなもの? 業界の今後は?


ライムってどんなサービス? 利用方法は?



ライムは電動マイクロモビリティのシェアリングサービスで世界最大手。8月19日からは日本でサービスを開始している。



自動車などよりもCO2排出量が少ない電動マイクロモビリティ市場は、2030年には世界で3,600億ドル規模まで拡大すると見込まれている。成長が期待される分野だ。今後はさらなるCO2排出の削減に向け、自家用車から他の移動手段への移行が加速してく一方で、電動マイクロモビリティがシェアを伸ばしていくものと予想されている。


公共共通機関の整っていない地域での移動手段として、あるいは高齢者の免許返納後の乗り物として、または交通渋滞の激しい都市部でのチョイ乗りなど、日本においても電動モビリティの潜在的な需要は高そうだ。



ライムは世界280都市以上で電動モビリティのシェアリングサービスを展開する業界最大手。これまでの累計利用回数は6億回以上で、総走行距離はすでに10億kmを超えている。



利用方法はシンプル。会員登録後にアプリから電動モビリティを予約し、ポートで車体のQRをスキャンして、年齢確認、安全クイズなどを行えばロックが解除され、乗車が可能となる。返却時はポートの場所を決定し、枠内に駐車した状態の写真を撮影すればOK。このあたりはLUUPなど競合他社とほぼ同様の仕組みだ。


料金については基本料金の100円にプラスして1分ごとに30円ずつ加算される通常料金に加え、「ワンコインでお試し30minパス」「60minパス」「160minパス」「300minパス」という4つの「LimePass」が用意されている。



LimePassはそれぞれが定める利用時間(30分~300分)と有効期限内(1日~30日)であれば、定額料金(490円~3,480円)で利用できるサブスク的なサービス。通常料金との比較で46%~60%は安く乗れるそうだ。



日本の法律では努力義務となっているヘルメットの着用を促すため、業界として初めて「ヘルメットセルフィー」を採用しているところも特徴的。乗車時にヘルメットをかぶった自分の写真をアプリから送信すると、10%割引などの特典が受けられる。



電動マイクロモビリティで問題になることが多い交通違反者への対応については、継続的な違反が確認された利用者には違約金や利用停止、退会措置などを含めて厳しく対処する。今後は、GPSデータで不適切利用を検知した際に警告を発信するシステムの導入も検討しているそうだ。

電動マイクロモビリティ2台を実車確認



ライムで乗れる電動マイクロモビリティは立って乗る電動キックボードと着座タイプの電動シートボードの2種類。いずれも日本の保安基準を満たした日本専用モデルとなる。


ライムの電動マイクロモビリティはモジュール式となっており、どこかが破損した場合はすぐに交換できるため、安全な車両を提供できるという。自社設計で作っているので、利用者の声を直接フィードバックして改善につなげられる点は開発面と提供面の双方におけるメリットとのことだ。


ライムの電動モビリティは歩道走行が認められる6km/hモードを搭載しているが、歩道走行を禁止する独自ルールが存在しているのは面白い点だ。ライムでカントリーマネージャー兼太平洋地域統括責任者を務めるテリー・サイさんによれば、「モードを切り替えることで歩道も走行できますが、曖昧で利用者の混乱につながる懸念があります。それならいっそ、禁止したほうがわかりやすい」と話す。このあたりは、いかにも合理性を求める海外企業らしい判断といえる。


ちなみに、使用を禁止しているのに6km/hモードを搭載している理由は、道路交通法が定める特定小型原付自転車への6km/hモード搭載の猶予期間が12月22日までであり、以降は搭載が必須となっているから、とのこと。

人気は電動シートボード? 運転のコツは?



サービス開始から約2週間の稼働率を見ると電動キックボードが30%、電動シートボードが70%で座って乗るタイプの人気がけっこう高い。



基本的な操作方法は両タイプとも同様で、電源を入れた後に地面を足で蹴って少し加速させてから、ハンドル右のアクセル部分を押し込むとモーターが駆動する仕組みとなる。どんな乗り味なのか、試乗してみた。


まずは電動キックボードから。街でよく見かける電動キックボードよりは幾分ゴツい印象を受けるが、走り出してしまえば重苦しい感じは一切ない。低重心設計となっているため、安定性が高いことも感じられた。


一方の電動シートボードは、着座タイプであるためより安定感があったものの、スタート時の加速にはやや手間取った。ある程度はスピードに乗っていないとモーターが駆動しない印象だったので、スタート時は思い切って地面を蹴った方がよさそうだ。


現在は渋谷区、新宿区、目黒区、世田谷区、豊島区、中野区の都内6エリアで200台と小規模での展開となっているライムだが、2025年3月までに関東地方の主要都市に進出し、2030年までには全国展開したい考えだ。


日本でのシェア獲得に向けては、いかに利用者にとって利便性のあるサービスが作れるかがカギであり、そのためには安全な車体開発や料金プランなどさまざまな面を考えていく必要があるとサイさん。利用者を増やし、地域が抱える課題の解決につなげていきたいと将来の展望を語った。



最後に、日本でもシェア1位を獲得する自信はあるかと尋ねると、笑顔で「もちろんです」と回答してくれた。


安藤康之 あんどうやすゆき フリーライター/フォトグラファー。編集プロダクション、出版社勤務を経て2018年よりフリーでの活動を開始。クルマやバイク、競馬やグルメなどジャンルを問わず活動中。 この著者の記事一覧はこちら(安藤康之)