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「iPhone 16」4モデル先行レビュー “差が縮まった”無印とPro、どれを選ぶべきか実機でチェックする

2024年09月19日 08:21  ITmedia NEWS

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 2024年のiPhoneはどれを選ぶべきか? それとも買い替えは控えるべきか? iPhoneユーザーの多くが悩んでいるのではないだろうか。


【画像を見る】「iPhone 16」と「iPhone 16 Pro」の実機をじっくり見る(計18枚)


 実機のテストレポートをお送りする。そこから筆者が感じたのは「iPhone 16がお買い得」「実はカメラが重要」「半年の時間を買うためのアップデート」という3点だ。


 それはどういうことなのか? それぞれ見比べつつ考えてみよう。


●16世代は「スタンダードとPro」の差が小さい


 仕様を比べてみると、24年のiPhoneは例年に比べ、「スタンダードモデル」と「Proモデル」の差が小さいのが分かる。


 従来、新インタフェースはProモデルから導入されていた。23年のiPhone 15 Proでは「アクションボタン」が、22年のiPhone 14 Proでは「ダイナミックアイランド」が組み込まれ、1年遅れでスタンダードモデルに入る……という形だった。23年はプロセッサについても、「A16 Bionic」と「A17 Pro」になっていて、世代が1つ違った。


 しかし今年は、新要素である「カメラコントロール」は全機種に搭載され、プロセッサも同じ「A18」世代である。


 デザイン的にみても、ディスプレイサイズが変わった「iPhone 16 Pro Max」を除くと変化はほとんどない。


 Geekbench 6とGeekbench AIのベンチマーク結果を見ても、今世代は「ワンランク性能が向上」しているものの、AIの推論能力を除くとその幅は大きいものではない。スタンダードモデルとProモデルの間では一定の差があるものの、GPUの速度差による部分が大きいとも感じる。


 推論機能の強化はApple Intelligenceを意識したものだ。これはAppleによる生成AIを使ったパーソナルアシスタント機能だが、米国では10月、日本では2025年に提供を開始する予定。機能や使い勝手の面では、23年モデルのiPhone 15 ProもiPhone 16シリーズも大差ないとされるが、「発売される全機種が対応している」という意味では、やはり16シリーズの意味は大きい。ただし、それが生きてくるには半年近くかかる。


 Apple Intelligenceへの準備的な意味合いでは、iPhone 16も16 Proもあまり差はない。カメラの差(これは後述する)を重視する人、ゲームなどで少しでもGPU性能が高いものを求める人が「Proモデルの想定ユーザー」であり、それ以外の人にはスタンダードモデルがおすすめ……ということになる。


●ただのボタンじゃない「カメラコントロール」


 前出のように、最大の変化である「カメラコントロール」は全機種に共通だ。


 カメラコントロールは、機能としては「シャッターボタン」に近い。カメラアプリの呼び出しやシャッターは、以前よりボタンでできていたこと。それだけなら新機能搭載の意味はない。当然ながら、単なる押しボタンではない。


だから構造も複雑だ。表面はタッチセンサーになっている。さらに振動による錯覚と組み合わせることで、「深く押し込む」「半押し」感覚の両方が表現されている。


 それゆえに、最初は操作に戸惑う部分がある。シャッターを切る分には問題ないのだが、メニューを切り替える「軽く2回タップする」操作にも、左右に滑らせる操作にも慣れは必要だ。


 特に、ズームなどに使う「スライド」操作は次のように考えると分かりやすい。


 ズームや露出変更などを行う場合には、指を左右に滑らせるのだが、「じわじわと動かす」操作と「サッと滑らせる」操作では意味するところが異なっている。


 例えばズームの場合だと、サッと滑らせると「0.5倍」「2倍」などの光学ズームが効くキリのいいところへ動く。中間で止めたい時にはじわじわ動かす。これを意識するとスムーズに使えるようになってくる。


 カメラコントロールの狙いは、操作系を「シャッターの周りに寄せる」ことだろう。被写体に集中するには望ましい形だ。


 ただそれなら、一眼カメラなどでいう「半押しによるフォーカス・AEの固定」機能は欲しかった。「半押しでのフォーカス固定」は年内にはアップデートで搭載される予定で、現状はまだ使えない。組み込まれれば操作への違和感ももっと小さくなるだろう。


 一方、アクションボタンの位置付けがちょっとあやふやになったようにも感じる。カメラ以外の機能を呼び出すのに使えるわけだが、それだけだと物理ボタンとしての価値が弱い。


●Proの価値はやはり「カメラ」に


 カメラの機能という意味では、16 Proシリーズはやはり差別化が行われている。


 23年同様、望遠は光学5倍。それが16 Pro Maxだけでなく16 Proにも搭載された。15 Proは光学3倍で差があったが、今年は同じなので、サイズだけで選んで問題ない。


 iPhone 15や16とのもっとも大きな違いは、「4K・120fpsでの動画撮影」が可能であることだ。


 iPhone 16 Proシリーズは120Hz駆動のディスプレイを採用しているので、動きが滑らかに見える。


 ただそれ以上に、一部をスロー再生した時の「ドラマチック感」が高まる。ドルビービジョンによるHDRも有効で、かなりクオリティーが高い。以下のサンプルを見ていただくと分かりやすいだろう。


 ただ、撮影データのサイズは相応に大きい。実測値で、1分あたり340MB。HEVCでの撮影でこれなので、ProResではさらに大きくなる。本格的に撮影するなら、iPhoneに外部ストレージを接続し、そちらに保存することをおすすめする。


●フォトグラフスタイルや空間ビデオは全モデルで利用可能


 iPhone 16シリーズ4機種共通のカメラ関連強化点として、特に2つの要素を挙げて起きたい。


 まずは「フォトグラフスタイル」。iPhone 13から搭載されているものだが、iPhone 16では劇的に変化した。


 これまでは撮影時に色味を変えるもので、撮影後の変更ができなかった。また、色味を細かくカスタマイズすることもできなかった。フィルターをかけて撮影するような感覚だ。


 しかし新しいフォトグラフスタイルでは、「写真を表示するパイプラインの中で、色味を細かく変更するレイヤーが搭載された」形になっている。


 言葉で言うとなんとなく分かりづらいが、要は、写真のデータ自体はいじらず、写真の色味だけを好きなだけ変更可能になった、ということだ。当然、撮影時に適応し、その色味でプレビューしながら撮影できるわけだが、それだけでなく、撮影後に好きなだけ色味を変えられる。変更は「非破壊編集」であり、編集を繰り返しても劣化などはない。


 写真撮影のパイプラインを変えてデータに残す機能なので、新しいフォトグラフスタイルはiPhone 16シリーズだけで使える。また現状、編集も「写真」アプリの中だけで行える。写真データとしては他の機種と互換性を維持しているが、アップル製品の「写真」アプリで使うときのみ、追加の変更が行えると考えればいいだろう。


 もう1つ、iPhone 16シリーズ共通の変化が「空間ビデオ」「空間フォト」への対応だ。


 空間ビデオはiPhone 15 Pro Maxで撮影可能になったもので、簡単に言えば「右目と左目用の映像を1パックにして撮影したもの」。Apple Vision ProやXREAL Airなどのサングラス型ディスプレイなどで視聴できる。


 意外なことと思われそうだが、iPhone 15 Pro Maxでは「空間ビデオ」は撮影できるのに「空間フォト」は撮影できなかった。


 しかし今回、iPhone 16では機能が拡充され、空間フォトと空間ビデオの両方が撮影できるようになっている。


 視聴環境をそろえる必要があり、「立体で見られる」人はそこまで多くないだろう。ただ、他のスマホではなかなか搭載されないだろうし、リッチな形で思い出を残せることには大きな意味がある。


●カメラとGPUで「Proか否か」を決めよう


 最後にまとめだ。


 冒頭で述べたように、Apple Intelligenceに重きを置くなら、iPhone 16と16 Proの差はそこまで大きくない。


 だがGPUやカメラを中心に、Proモデルの価値はある。重視する部分がはっきりしており、買うべき人もこれまで以上に明確だ。


 そう考えると、iPhone 16か16 Proか、自分がどちらを選ぶべきかはっきりしてくるだろう。場合によってはiPhone 15 Proと言う選択肢も出てくる。


 しかし、カメラコントロールの価値は大きく、筆者としてはiPhone 16をおすすめしたい。