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サッカー日本代表メンバー外を味わった旗手怜央 長友佑都、長谷部誠に「助けられた」

2024年09月19日 07:20  webスポルティーバ

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旗手怜央の欧州フットボール日記 第29回  連載一覧>>

サッカー日本代表のワールドカップ予選で、旗手怜央は中国戦、バーレーン戦ともにメンバー外でベンチ入りすることができなかった。悔しい思いのなか、代表活動でどんな行動をし、どんな考えを持ったのか語った。

◆ ◆ ◆

【自分ができることにフォーカスしようと考えた】

 悔しくないと言ったら、嘘になる。

 先日行なわれた2026年W杯アジア最終予選のことだ。日本は、9月5日にホームで中国と、10日にアウェーでバーレーンと対戦したが、自分は日本代表に選ばれながら、2戦とも試合に出場できる23人のメンバーに入ることが適わなかった。

 プレシーズンからコンディションもよく、セルティックでもリーグ開幕からここまで、ゴール、アシストと結果を残していただけに、ピッチに立ったら活躍できる自信もあった。また、グラスゴーから長い距離を移動してきただけに、外から試合を眺めるしかなかった現実は心底悔しかったし、もどかしかった。

 それは選手であれば、当然の感情だろうし、その悔しさがなければ、自分の成長も発展もないと思っている。

「何で、俺なんだよ」

 メンバー外を告げられた時には正直、そう思った。

 一方で、こうも考えられた。

 試合に出場するメンバーを決めるのは、監督であり、監督の権限でもある。そこは、選手である自分にはどうにもできない領域だ。

 だから、自分でどうにかできないところに目を向けるのではなく、今の自分にできること、今の自分がやれることにフォーカスしようと考えた。

 今回、試合のメンバーに入れなかった自分が、メンバーに入るためにできることは何か。トレーニング、食事、睡眠、体調管理......考えれば、自分にできること、やれることは、まだまだたくさんあると思えた。

 実際、外から見た日本代表は、素直に強かった。

 ピッチに立っている選手それぞれが、個の技術が高く、また、その個がチームとして生かされていた。

 だから、誰かと比較するわけではなく、純粋に自分がその輪に入ったら、こういうプレーができるのではないか、こういう立ち位置を取ったら、自分も周りも生きるのではないかと、想像を巡らせたし、膨らませた。

 2試合ともメンバー外だったので、日本代表の活動に参加したのを徒労と捉える人もいるだろう。

 しかし、自分はこの機会や経験が無駄だったとはまったく思っていない。

 試合に出ていたとしても、出られなかったとしても、その時間を無駄にするのか、それとも有益にするのかは、自分次第だからだ。

【長友佑都、長谷部誠に助けられた】

 試合のメンバーに選ばれなかったため、メンバー外の選手たちだけで練習を行なう機会があった。コンディションを維持するためにも、体を動かしたかったが、心のなかにはもどかしさもあり、どこかで「ここまで来て、なぜ、少人数での練習をしなければいけないのか」と思う心情もあった。

 でも、そうした安易な考えは、長友佑都さんの姿勢を見て、瞬時に吹き飛んだ。

 佑都さんも自分と同じく、2試合ともメンバー外だった。それでも佑都さんの練習に取り組む姿勢や、チームのためにやるべきこと、チームのためにやろうとすることは微塵も変わらなかった。

 メンバー外での練習で一緒だったので、佑都さんとは、たくさん話をする機会に恵まれた。そこで日本代表に対する想いについても聞かせてもらった。

 佑都さんは、インテルをはじめ、ヨーロッパの強豪クラブでプレーした経験があるだけでなく、4度もワールドカップに出場し、日本代表で142試合に出場しているレジェンドのような存在だ。その人と共に過ごした時間と会話は、僕にとっては大きく、本当にありがたかった。

 バーレーン戦が行なわれた日には、身体をケアするタイミングが重なったこともあり、自分から話をする時間を作ってもらった。

 自分の立場や状況を理解してくれているからといって、そこに同情してわざわざ佑都さんから話しかけてくることはない。そこもきっと、自分の役回りや立ち回り方を理解しているのだろう。

 でも、自分から話をしたい、考えを聞きたいと、佑都さんにアプローチすると、嫌がるそぶりもなく、何でも話をしてくれた。佑都さんから見れば26歳の若造だが、自分の考えや想いを聞き、そしてアドバイスを送ってくれた。

 そんな佑都さんの背中を見て、当たり前のことを当たり前のようにやり続けているすごさや意志の強さを感じ取った。

 また、今回の活動から日本代表に加わった長谷部誠コーチの存在にも大いに助けられた。メンバー外の練習では、ハセさん(長谷部)のもとでトレーニングを行ない、時には一緒にボールを蹴ってくれた。

 佑都さんと同じく、長くヨーロッパで戦い、日本代表のキャプテンも務めた人と一緒に活動できたことは素直にうれしかったし、励みになった。

 ハセさん、佑都さんからは、あらためて選手として大切なマインドを教えられたような気がして、勉強になった。

 チームの全体練習では、ボランチでプレーする機会も多く、(遠藤)航さんや、守田(英正)くんにも積極的に話を聞きにいった。そうした姿勢で取り組めたのも、佑都さん、ハセさんの存在が大きく、ふたりのおかげだと思っている。

【この経験をどう糧にして、自分の成長に生かしていけるか】

 悔しい思いはしたが、ほかの選手たちだってそれぞれに悔しい思いもしている。出場時間が短く、悔しい思いをしている選手もいれば、メンバー入りしても出番がなく悔しい思いをしている選手もいただろう。自分と同じく、メンバー外になり唇を噛みしめていた選手だっている。それぞれが、それぞれの立場で、悔しさを味わっている。

 その経験をどう糧にして、自分の成長に生かしていけるか。だから、僕は今回の日本代表の活動への参加は無駄だとは考えていないし、あそこにいなければ経験できなかったこと、学べなかったこと、プラスになったことはたくさんあったと思っている。

 人間だから、悔しさが表情に出てしまうこともあるが、日本代表の一員としてAFCアジアカップ2024を経験して、なおさら日本代表という環境に身を置き続けたいと思ったし、試合に出ようが出まいがチームのために、力になりたいと思う気持ちは増している。

 日本代表の選手として再びピッチに立てるように、セルティックで自分が取り組んでいるゴール、アシストという結果と、ゴール前に入っていく迫力を追求していきたい。

 この記事が掲載されるころには、UEFAチャンピオンズリーグも始まっているだろう。自分の力をヨーロッパの舞台で示す。

 今は悔しさを胸の奥にしまい、自分のプレーに集中したい。