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「iPhone 16/16 Pro」に触れて実感した進化 16/16 Plusの性能底上げで“間違いない選択肢”に

2024年09月18日 21:31  ITmedia Mobile

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Apple Intelligenceのために設計されたとうたうiPhone 16シリーズ。左から「iPhone 16 Pro Max」「iPhone 16 Pro」「iPhone 16」「iPhone 16 Plus」

 9月20日に、iPhone 16シリーズ全4機種が発売される。「Apple Intelligenceのために設計された」とうたっているように、iPhone 16シリーズは4モデルとも同機能に対応。Apple Intelligenceはソフトウェアアップデートでの対応になるが、それを動かす器として仕様を最適化した格好だ。一方で、日本での対応は既報の通り2025年になり、細かな時期は明言されていない。


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 おあずけ状態になっているApple Intelligenceだが、それを除いても、ハードウェアは進化している。対応を前提にしつつ、あらかじめ端末を購入しておいてもいいだろう。その意味で、今すぐ入手するかどうかは、新たに搭載された「カメラコントロール」やカメラ機能、処理能力などで判断することになる。そんなポイントに絞りつつ、発売直前に試用したiPhone 16シリーズをレビューしていきたい。


●iPhone 16/16 Plusの性能が底上げされ、プロモデルに近づく


 2022年に発売されたiPhone 14シリーズ以降、プロモデルとノーマルモデルはプロセッサに差がつけられてきた。大ざっぱにまとめると、プロモデルには最新のAシリーズが搭載されていたのに対し、ノーマルモデルに採用されるのは1世代前のプロセッサというのが通例になっていた。結果として、iPhone 15シリーズはプロモデルがApple Intelligence対応なのに対し、ノーマルモデルは非対応になっている。


 これに対し、iPhone 16シリーズでは、ノーマルモデルの性能が底上げされ、プロモデルに限りなく近くなっている。プロモデルには「A18 Pro」、ノーマルモデルには「A18」と違いはあるものの、その差は最大120HzのPro Motionや動画処理、USB Type-Cの転送速度といったプロモデルならではの機能を制御するコントローラーに集中している。プロセッサの基本をそろえることで、4モデルを一気にApple Intelligenceに対応させたというわけだ。


 GPUのコア数がA18 Proは6コア、A18は5コアと違いもあるが、以前ほどの差はなくなっている。実際、ベンチマークアプリ「Geekbench 6」で測定したスコアも、それを物語る。iPhone 16 ProはCPUのシングルコアが3274、マルチコアが8004なのに対し、iPhone 16はシングルコアが3109、マルチコアが7280で性能はややプロモデルが上といったところ。GPUも同様で、iPhone 16 Proが3万2911なのに対し、iPhone 16が2万6583となっている。


 プロモデルの方が性能が上という点は変わっていないものの、その差がかなり縮まった格好だ。実際のところ、1年前のプロセッサだからといって極端に性能差が出るわけではないものの、Apple Intelligenceのようにパフォーマンスを求められる場合には、ユーザー体験にも違いが出てくる。こうした点を考慮して、ノーマルモデルを選ぶのをためらっていた人もいるはずだ。逆に言えば、その差が小さいiPhone 16シリーズは、あまりパフォーマンスを気にせず選ぶことができる。この点は、iPhone 14シリーズ以降で最大の変化といえそうだ。


 ちなみに、Geekbenchでスペックを見ると、プロモデルとノーマルモデルのどちらも、メモリ(RAM)は8GB搭載していることが分かる。iPhone 15シリーズもプロモデルには8GBメモリが搭載されていたが、ノーマルモデルは6GBだった。オンデバイスAIを快適に動作させるうえで重要なメモリだが、Apple Intelligenceに対応するため、この部分でもノーマルモデルを底上げしたことがうかがえる。


●カメラコントロールの操作感は? 新しくなったフォトグラフスタイルも要注目


 新たに加わったカメラコントロールも、プロモデルとノーマルモデルの共通点だ。これは、2段階の感圧センサーと静電容量式のセンサーを組み合わせたボタンで、その名の通り、カメラをコントロールするために使用する。一般的なシャッターボタンとの違いは、単に押し込めるだけでなく、左右のスワイプにも動作が割り当てられているところにある。


 初期状態では、カメラコントロールをクリックすると即座にカメラが起動する。もう一回クリックすると、シャッターが切られる。カメラアイコンをタップし、シャッターボタンをタップするのを1つのボタンで済ませられるため、素早い撮影が可能だ。特に本体を横位置で持つと、人差し指が自然とカメラコントロールに当たるため、操作がしやすい。iPhoneを、よりデジタルカメラのように扱えるようになったといえそうだ。


 ただし、現状では半押しにフォーカスロックが割り当てられておらず、年内のアップデートで対応する予定だ。これができないことで、少々操作に戸惑うこともあった。これは筆者がデジタルカメラで撮影する際に、フォーカスロックをかけた後、シャッターを切っているためだろう。現状だと、半押ししたときにズームなど、ユーザーが選択したメニューが表示される。半押ししてからシャッターがクセになっていることもあり、間違えてズームしてしまうことが何度かあった。デジタルカメラに慣れていると戸惑うところなだけに、早期の対応を期待したい。


 カメラコントロールは、半押しを2回した後左右にスワイプすることで、ズーム以外の機能に切り替えることが可能だ。半押し2回には慣れも必要になるが、操作体系をいたずらに複雑にせず、各機能にスムーズにアクセスできるのはiPhoneの美点だ。半押しした際に「トクン」と返ってくるフィードバックも心地いい。ここで呼び出せるのは、「露出」「被写界深度」「ズーム」「カメラ(どのカメラを使うかを切り替える機能)」「フォトグラフスタイル」「トーン」の6つ。利用頻度としてはズームが多そうだが、人によっては露出やフォトグラフスタイルを頻繁に呼び出すこともありそうだ。


 なお、カメラコントロールによるカメラの起動は、感圧センサーのみをトリガーにしているため、指でタッチしなくてもカメラを起動できてしまう。試用時に困ったというわけではないが、ギュッと本体を握ったとき、間違ってカメラが起動することもありえなくはない。こうした誤動作が心配なときには、設定でカメラの起動をカメラコントロールのダブルクリックに変更できる。使い方に合わせ、この設定は変更しておくといい。


 新しくなったフォトグラフスタイルも、シリーズ共通で搭載されている。これまでのフォトグラフスタイルは写真全体のトーンを変更していたが、新機能では、人肌(スキントーン)を調整しつつ、背景などの色味の変更は最小限に抑えられるようになっている。また、トーンマップを使って調整できるようになったUI(ユーザーインタフェース)も、フォトグラフスタイルの新機能だ。加えて、これらの調整を撮影後に適用できるようになった。


 スキントーンの好みは人それぞれで、白っぽい方がいい人もいれば、温かみのある方がいい人もいる。筆者の場合、好みに近いのは「ローズゴールド」や「ゴールド」。これらを設定した写真を見た後、標準に戻すと、色が少々浅いように思えてくる。AI任せにしてしまうと、好みと違うスキントーンになってしまうこともあるが、これを手動で変更できるのは面白い。


 動画の音声を調整する「オーディオミックス」も、iPhone 16シリーズ共通の新機能。例えば、「フレーム」を選択すると、写っている人以外の音が小さくなり、被写体の声が強調される。「スタジオ」だと、より反響を抑えたクリアな音声になる。以下が、標準とフレームの効果を100にした動画。標準だと騒音がかなりあり、筆者の声もはっきり聞こえるが、フレームだとあたかも一人語りしているように仕上がる。


●大きな違いは望遠カメラの有無、それでも選びやすくなったノーマルモデル


 共通項が増えた一方で、ノーマルモデルとプロモデルには大きな差もある。特に大きいのは、望遠カメラの有無だろう。iPhone 16シリーズではiPhone 16 Pro/16 Pro Maxの望遠がどちらも5倍になり、より遠くまで写せるようになった。iPhone 16 Pro MaxはiPhone 15 Pro Maxを踏襲している一方で、iPhone 16 ProはiPhone 15 Proから倍率が上がった格好だ。これに伴い、デジタルズームもプロモデルは共通で最大25倍になった。それぞれの倍率で撮った写真は、以下のようになる。


 これに対し、ノーマルモデルのiPhone 16/16 Plusは引き続き、超広角と広角のデュアルカメラ。メインカメラが48メガピクセルと高解像度で、切り出しによる2倍ズームは可能だが、それ以上はデジタルズームになる。これをプロモデルと同じ5倍までズームしようとすると、画質に粗が出てくる。3倍程度であれば差は少ないが、より被写体に寄ることが多いのであれば、プロモデルを選ぶべきだ。


 また、プロモデルは標準カメラの画角のデフォルトを、24mm、28mm、35mmから選択することが可能だが、ノーマルモデルにはこの機能がない。センサーの仕様やISP(Image Signal Processor)を見ると、ノーマルモデルでもできないことはなさそうだが、プロモデルならではの味付けとしてこうした機能を用意していることがうかがえる。よりカメラライクに細かな設定まで楽しみたい人のためのプロモデル、そうでない大多数の人に向けたノーマルモデルという形ですみ分けを図っているようだ。


 さらに、超広角カメラにも違いがある。プロモデルは画素数が48メガピクセルに向上しており、最大解像度で撮影すれば、精細な写真を残せる。一方で、ノーマルモデルも12メガピクセルながらマクロ撮影に対応し、被写体にギリギリまで近づいて撮影できるようになった。仕上がりを見ても、プロモデルとの大きな差は感じられない。その意味で、2つのシリーズを分ける決定的な違いは、ズームの有無といえる。ズーム撮影をあまりしないのであれば、ノーマルモデルでも十分だ。逆に絶対5倍ズームは必要というのであれば、プロモデル以外は選択肢から外れる。


 なお、標準の広角カメラもプロモデルはセンサーの読み出し速度が上がっており、4K、120fpsでの動画撮影が可能になった。撮った動画の速度を後から変え、スローモーション動画を作成することができる。こうした機能を駆使して、作品を撮りたいような場合には、ノーマルモデルは少々力不足だ。


 一方で、120fpsの4K動画は万人向けかというと、そうではない。スマホで再生するだけなら、フルHDでも十分だし、フレームレートをいたずらに上げる必要もない。プロモデルは、こうした点も、その名の通りプロユーザー向けに仕上がっている。逆にいえば、一般のiPhoneユーザーにはやや持て余す多機能ぶりと捉えることもできる。


 その意味で、iPhone 16シリーズではノーマルモデルのiPhone 16やiPhone 16 Plusが、今まで以上に“間違いない選択肢”になっている。言い換えるなら、万人向けの色合いがより濃くなった。逆にプロモデルは、名称の由来である“プロ向け”の性格がより明確になっている。もともと価格優位性があり、販売ランキングで上位を占めることが多いのはノーマルモデルだったが、ハイエンド層が流れることで、iPhone 16シリーズでは、その傾向がさらに強まりそうだ。


(製品協力:アップルジャパン)