成果をあげたと自負する社員が、必ずしも出世するとは限らない。山口県に住む50代前半の男性(エンジニア/年収600万円)はかつて「ある機械メーカーで製造組立の現場監督職」を勤めていたときに経験した、苦い思い出を語った。
その会社での現場監督職とは、一般的な会社なら係長のポストに相当する役職だそうだ。人一倍の熱意をもって仕事に打ち込んでいたが……。(文:國伊レン)
「結局はただの『だし』だったんだなぁ」と感じ転職を決意
男性は、現場監督として、様々な成果を残したと語る。
「不適合の撲滅、顧客クレームの減少、仕損部品金額の減少等、大なり小なりの成果をあげ、ほぼゼロにした案件もあります」
「若手新人の育成にも力を注ぎ、若手がやり易い空気、苦しくても笑いあって問題を解決する、とにかく若い人が居心地よく、萎縮しないように努めてきました」
目に見える数字での実績だけではなく、職場の雰囲気を良くする事にも注力してきた男性。「はたから見ると上司部下の関係ではないように見えていたと思います」と当時を回想する。
更に、1人で複数の技術や技能を有する「多能工」の育成にも力を入れ、負荷が大きい工程と小さい工程を仕分けし、「残業の平準化」にも取り組んだ。様々な成果を出したことにより、周囲の人からは次のポストが与えられると思われるようになった。しかし、
「ここでゲタは外されました。当時の部下に先を越され、立場は一般に落ち役職もなくなり、チャンスは閉ざされました」
男性は「もちろん、自分にいたらない部分があったのだろうと思うことは前提」と自省しつつ、他の人間が出世した事について「イエスマンは何の成果を出さなくても、求心力がなかろうとも、重宝される」と心中を吐露した。会社が求めていたのは優秀な人材ではなく、従順な社員だったという事だろう。
「色々なことをやらされ、色々な成果を出して、結局はただの『だし』だったんだなぁと感じ、転職を決意しました」
人事評価に納得できず、男性は転職を選択した。正当に評価されない環境からは早めに身を引くのが正解だろう。
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