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職場の「体臭」指摘はパワハラか? 「自覚ないのに…」頻繁に臭いを指摘され、苦悩する男性も

2024年09月15日 08:40  弁護士ドットコム

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フリーアナウンサーの女性による「夏場の男性の体臭」をめぐるXへの投稿が大きな賛否を呼んだ。体臭に関するトラブルは職場でも起きているようだ。


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弁護士ドットコムには、上司から頻繁に「臭い」と指摘されている従業員からの相談が寄せられた。



従業員によれば、この上司からは、2週間に1回程度のペースで、「朝昼2回着替えろ」「いい加減にして」などと指導を受けているという。



ただ、毎日の入浴、洗髪、服の交換といった「最低限のエチケットには気をつけている」という従業員は、臭いに自覚はない。



しかし、もしかすれば自分に非があるのではないかと考えて、具体的な指摘を求めたところ、『苦情が来ているから何とかしろ』と言われるばかりで、臭いの種類や頻度などは伝えられないため、これ以上は自ら効果的な対策を取れないという。



また、「毎日入浴している」と答えても、かつてのミスを引き合いにして「お前は嘘付きだから信用できない」とも言われたそうだ。



「指導に非常に傷付いており、仮に私に非があるとしても続くのは辛い」と落ち込む従業員は、このような指導がパワーハラスメントにあたるのか知りたいと考えている。西山良紀弁護士に聞いた。



●業務に支障を及ぼす体臭の従業員に改善を求めること自体は「パワハラではない」

—体臭がありながらも自覚のない従業員に、「臭い」と指摘するのはパワハラでしょうか



まず、飲食店など接客業の場合、従業員の体臭に問題があるときは、業務の一環として体臭の問題を解決する必要があります。また、接客業でなかったとしても、会社には従業員に対して働きやすい労働環境を提供する義務があるので、体臭が他の従業員の業務の支障となるときは体臭の問題を解決する必要があります。



よって、業務に支障が生じるような体臭であれば、会社が従業員に体臭がする事実を指摘して改善を求めること自体は違法行為(パワハラ)には該当しません。





—自覚がないものの、体臭の苦情が職場内外から寄せられている従業員に対して、どのように改善をうながすとよいでしょうか。



体臭は極めてデリケートな問題であり、体臭の事実を伝えたり、改善の指導をしたりするには、従業員本人をできる限り傷つけないように細心の注意が必要です。



会社側としてどう対応すればよいかは、それぞれの事情によって異なるので、一概にこうすればよいということはできません。ただ、少なくとも以下で述べるような点には配慮したほうが良いと思います。



●必ずしも伝えるべきか? そして指摘の際の「配慮」を考える

まず、体臭を指摘し改善を促す必要があるかどうかを判断するために、本当に従業員からひどい体臭がしているかどうかを確認します。体臭が軽微で業務に支障を及ぼさないのであれば、従業員本人に体臭のことを伝える必要はありません。



次に、改善を促す必要があると判断した場合には、周囲に人がいない環境で、従業員本人と話し合いをします。また、言葉の選択を間違えると、指摘を受けた従業員本人は人格を否定されていると受け取ってしまう可能性があるので言葉遣いには細心の注意を払わなければなりません。



そして、従業員本人との話し合いで、体臭の原因がストレス、病気、体質など本人では対処が難しいものなのか、それとも「お風呂に入っていない」「洗髪していない」「歯磨きをしていない」「服が異臭を放っている」といった本人でも対処が容易なものなのかも考えながら、具体的な改善方法を検討・指導していくとよいのではないでしょうか。



●体臭がないのに感情のままに「臭い」と指摘するのは「もはや論外」

—改善の意思を示している従業員に、適切な情報を与えず「苦情がきているからなんとかしろ」とだけ指導したり、実際には体臭がないのに感情のままに「臭い」と指導したりすることは問題でしょうか。



本件のように、従業員本人に改善の意思があり具体的な指摘を求めているにもかかわらず、臭いの詳細についての説明や具体的な改善策を協議することなく「苦情が来ているから何とかしろ」「朝昼2回着替えろ」「いい加減にして」と繰り返すだけの指導や「お前は嘘付きだから信用できない」などと人格否定の言葉を投げかけることは違法行為(パワハラ)に該当する可能性が高いと思います。



実際にはひどい体臭がないにもかかわらず感情に任せて「臭い」と指導することは論外であり違法行為(パワハラ)に該当します。



今回の記事の解説を作成しながら、昔、ハウスメーカーで営業をしている人から「顧客の家で打ち合わせをすることが多いので営業車両にカッターシャツと靴下を複数常備している」と聞いたことを思い出しました。



当時は、営業を頑張っている人はやはり意識が高いのだなと感心するだけでしたが、現在、私も40代半ばになりもっと自分の臭いに注意していかなければならないなと思いました。




【取材協力弁護士】
西山 良紀(にしやま・よしのり)弁護士
兵庫県弁護士会所属。 離婚・男女問題、遺産相続、労働問題、債権回収などを多く扱う。 昼食の大半はラーメン。鶏がら・豚骨から出汁をとってラーメンを自作することもある。独立する際に、前所属事務所からもらった餞別は寸胴鍋とオリジナルラーメン鉢。
事務所名:リライト神戸法律事務所
事務所URL:https://relight-kobe.jp/