2024年09月13日 06:10 web女性自身
上野動物園のジャイアントパンダ、リーリー(オス19歳)とシンシン(メス19歳)が9月29日に中国に返還されることが決まった。「2023年に日本を去ったシャンシャンに続き、また……」と嘆く声が聞こえそうだが、返還の理由は「高血圧の治療」だという。
パンダの年齢は、その3倍が人間の年齢に当てはまるというから、リーリーとシンシンは57歳。中高年の悲哀を感じるが、現在は投薬治療により健康状態が維持できているようだ。東京都と中国野生動物保護協会が協議して、中国への長旅に耐えられる体力があるうちに、生まれ故郷に帰り治療を受けるのが望ましいと判断したそう。
「高血圧に悩むのは犬や猫などのペットも同様です。ペットにとって、高血圧はとても怖い病気です」
そう話すのは、めのうアニマルクリニックの院長、後藤マチ子先生。
ペットの高血圧は、もともと腎臓病や心臓病などの基礎疾患があり、二次的に起こるものだという。ほかにも代謝性疾患やホルモン性疾患が原因になることもある。
特に、犬は副腎皮質機能亢進症、猫は甲状腺機能亢進症などの持病があると、高血圧になることが多い。これらの病気は高齢のペットによく見られるという。
そもそも、ペットの血圧はどうやって測るのだろうか。
「血圧測定の仕組みは人間と同じです。ペットは前足だけでなく、しっぽでも測定できるのが人間との違い。カフと呼ばれる血圧測定用のバンドを巻いて、ペット用の血圧計で測ります」(後藤先生、以下同)
ただペットの血圧測定は、簡単ではないという。
「人間でも『白衣高血圧』など医師の前では緊張して高血圧になりがちなことが知られていますが、ペットはより顕著です。病院にいること自体がストレスですから、安静時の血圧を測るのは至難です。病院内の静かな部屋で10分ほど休憩して、ペットが落ち着いてから計測開始。そのうえ、10回くらい計測して、平均値をとります」
ペットが高血圧だとわかったら、治療が始まるが……。
「投薬で血圧をコントロールします。薬は飲みやすい味付きなど種類が豊富なので、ペットが受け入れやすいのが特徴です」
ペットの高血圧は、どんな症状が出るのだろうか。
「目に症状が出ることがあります。高血圧による網膜症で網膜の血管が破綻し、ひどい場合は失明することもあります」
また、高血圧は心臓にも悪影響を及ぼすという。
「血圧が高くなると、心臓から肺や全身に血液が送りにくくなります。やがて肺やお腹に水がたまった状態になり、ペットはおぼれたような感覚になりかなり苦しみます。
また、心疾患による高血圧は突然死に至ることもあります」
■飼い主が高血圧に気づくのはかなり難しい
恐ろしいペットの高血圧だが、元の基礎疾患はどうなる?
「たとえば慢性腎臓病の場合、ほとんどのケースで高血圧を併発しています。血圧を薬でコントロールすることで腎臓を保護し、寿命を延ばすことも可能です」
元の病気は完治が望めないが、延命のためには飼い主がペットの高血圧にいち早く気づくことが大切だ。
「確かに早期発見・早期治療は、ペットの命に大きくかかわります。ですが、高血圧の症状はわかりづらく、飼い主が高血圧に気づくのはかなり難しいのです」
たとえばペットは失明してもいつもと変わらずに生活するコが多いそう。ペットは視覚以外の感覚やこれまでの記憶をもとに動くため、目が見えなくても、食事や排せつに困るコは少ない。ペットの失明に気づかない飼い主も意外と多いのだ。
「最近、物によくぶつかる」と受診させたときには高血圧が相当進み、すでに失明していたケースもあったそう。飼い主はまさか高血圧が原因とは思わなかったのではないだろうか。
「高血圧そのものに気づくことが難しくても、『いつもと違う』『最近、なんか変』と思ったら、すぐに受診してください。一緒に暮らす飼い主にしか気づけない小さな変化を見逃さないでほしいのです」
高血圧などの病気が潜んでいるかもしれない高齢ペットが気をつけたい健康チェックリストは下のとおり。「ふだんより○○」「いつもと違って○○」がポイントだ。チェックリストで1つでも気にかかることがあれば、すぐに動物病院を受診しよう。高血圧以外の病気が見つかる可能性もある。
とはいえ、飼い主が気づいたときには進行していたということも多い。また、ペットの病気は持って生まれた体質から避けがたいものもある。
「特にシニア期のペットは病気になりやすいので、定期的な健康診断をお勧めします」
シニア期とは、犬は犬種によるがおもに7~10歳以降、猫は7歳以降を指す。
「健康診断で早く病気が見つかれば、治療しながらペットと長く一緒に暮らすこともできるでしょう。もし病気がなかったら、ひと安心。健康なペットライフを楽しめます」
些細な異変に気づく飼い主の観察力と定期健診で、愛する家族を高血圧などの病気から守ろう。
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