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サッカー日本代表の攻撃的3バックシステムが中国戦で機能した理由 林陵平が深掘り解説

2024年09月08日 07:30  webスポルティーバ

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林陵平のフットボールゼミ

サッカー日本代表がワールドカップアジア最終予選の初戦で中国に7-0と圧勝。両ウイングバックにアタッカーを起用する攻撃的な3バックシステムが注目されたが、この戦い方のどこがよかったのだろうか。人気解説者の林陵平氏に分析してもらった。

【動画】林陵平深掘り解説 日本vs中国フルバージョン↓↓↓

【外からの攻撃がうまくいった】

 最終予選ではどのシステムを採用してくるかと見ていましたが、中国戦の初期配置は3-4-2-1でした。これがすごくハマりました。

 立ち上がりから日本のペースになりましたが、中国は4-4-2を採用し、前からプレッシングをかけるというより、リトリートした状態で4-4-2のブロックを組んできました。それに対して日本は、攻撃時は基本的にもう3-2-5の形。4-4-2に対して位置的優位を取りやすい形でした。

 中国は中央を締める状況で守っていたので、日本は真ん中のスペースを使うのはなかなか難しかったです。2トップが日本の3バックにあまりプレッシャーをかけず、引いて全体の陣形をコンパクトにしてきました。

 そのため、遠藤航と守田英正のふたりのボランチのところにスペースがなかった。そこで途中からは遠藤がアンカーになって残り、守田は前に出ていくようなポジション取りになっていました。

 あとは板倉滉と町田浩樹ですが、とくに町田は、外の三笘薫がフリーなら結構簡単にボールを預けていましたが、これはすごくいい判断だと僕は思いました。よくドリブルで相手を引きつけてからパスを出せという話があるんですが、三笘に関してはフリーならすぐにボールを預けたほうが、前向きな状態を作れてよさを出しやすい状況でした。

 日本の攻撃は左右で違っていて、右は堂安律も久保建英も左利きで、縦に仕掛けるよりもカットインが得意で、ふたりのポジションチェンジがスムーズでした。ふたりは近い距離に置くと関係が非常によくなります。お互いを意識しているし、波長が合うのかなと。

 左で効果的だったのは三笘の縦の仕掛けですね。中国は三笘に対して基本的にはふたりでマークにつくんですけど、それでも三笘はそれを剥がせてしまいます。この能力はさすがだなと感じました。中国に中央を締められた分、外をうまく使って攻撃できるかが試されたんですが、うまくいったと思います。

 また、前半12分にCKからゴールを決めたのは、非常に大きかったですね。やはり最終予選なので、ピッチに立っている選手たちはすごくプレッシャーを感じていたと思いますから、先制点で気持ちはラクになったでしょう。

 前半アディショナルタイムの2点目は、マンチェスター・シティなどでもよく見るのですが、逆サイドのポケット(ペナルティーエリア内の両サイドのスペース)を突く形ですよね。4バックの泣きどころでもあるんですけど、一方のサイドで起点作った時に逆サイドの相手DFの背中を突く。右の堂安のクロスから左の三笘がヘディング。このあたりはゲームプランとして、片方のウイングバックから逆サイドのウイングバックという形はすごく狙っていたのかなと思います。

 あとは同サイドのポケットですよね。ここをどういう風に取りに行くかをもう少しチームとして共有できていれば、相手を崩すより効果的な攻撃ができます。味方がボールを持った時に、誰がどのタイミングで動き出すかというところまで設計されていると、もう少し再現性がある形で深い位置を取れていたのかなと思いました。

【中国のシステム変更の穴も突いた】

 後半は中国が4-4-2から5-3-2に変えてきました。日本のウイングバックがフリーになっていたところ、最終ラインを5枚にすることで三笘や堂安、久保にプレッシャーをかけたかったのだと思います。

 これによって何が生まれたかっていうと、日本はまず三笘と堂安が1対1の状況でボールをもらえる機会が増えました。前半はサイドハーフとサイドバックのふたりで対応されていたのに、です。

 また、これはシステムの構造なんですが、中国の中盤の3人の脇にスペースができた。そこで日本はここを使っての攻撃が増えました。南野拓実の2得点はそうした形で、57分の得点は南野が一旦このスペースでボールを受けて相手を引き出してから、次に三笘のパスで裏に抜けてターンから決めたもの。58分の得点は、町田がこのスペースに入っていこうとして、相手を反応させたところで中央の上田綺世へ縦パス。南野がその落としを運んで決めたものでした。

 4点目が入ったあとに、伊東純也と前田大然が入ってきましたが、伊東が戻ってきたのは日本にとって大きいですね。ゴールも取りましたし、伊東のクロスから前田もゴールを決めました。

 このような形で最後まで攻め続けて7-0。もちろん中国が思ったよりもよくなかった部分がありましたが、最終予選初戦の難しさがあったなかでこのような圧勝は自信になりますよね。

【日本代表にオプションが増えた】

 個人的には、やはりこの3バックのオプションが増えたことに拍手を送りたいです。

 3バックってどうしても守備的なイメージがあると思うんです。守備に追われた時にはウイングバックが下がって、DFラインが5枚になってしまうからです。ただ、ある程度自分たちが敵陣でボールを動かせるなら、3-2-5であったり、3-1-5-1みたいな形で戦うのはありだと思います。

 今回3-2-5で圧勝できたという事実がチームとしての自信にもなりますし、ここからまた4バックでのオプションも試せたり、戦術的な幅が広がっていきます。その点ですばらしいゲームになりました。