食事の際に一緒にいる人の分まで食べてしまうタイプを「食い尽くし系」と呼ぶ。それが原因で離婚しようとしている珍しい経験談が寄せられた。群馬県の40代女性は、「夫がいわゆる食い尽くし系で、自分の非を認めないタイプでした」と振り返る。
「大皿だと食い尽くされるので小分けにしても、『皆で大皿をつついてこそ家族だ』と怒る。冷蔵庫の作り置きにラベルで『弁当用食べるな』としていても『腹が減っては戦ができん』と無視」
家にある食べ物を次々と平らげていく夫は、ついに子どものおかずにまで手を出したという。(文:篠原みつき)
「ここはサバンナじゃない。我々は肉食動物じゃない」
夫は、結婚前は人並みの食欲だったが仕事で責任ある立場になり「ストレスを食い意地で解消するようになったのかも」と女性は推測している。ただ、そうは思っても許せないほど実害が凄まじかったようだ。
「子どものおかずにも手を出し『世の中は弱肉強食だ』と笑う。ここはサバンナじゃない。我々は肉食動物じゃないと喧嘩しても懲りない」
など、暴挙をあげるときりがないようだった。「ほとほと困りはてていた」という女性は、子どものある行動で離婚を決意する。
「小学校2年の女の子が、必死に食べ物を守ろうとして、ダンボールで自作した『とりで』と書いた衝立を自分の皿の周りにおいて、自分で持ってきた取り皿とご飯を守ろうとし、しかも噛んでいないのではないかという速さで食べだしたのです」
明らかに、父親に食べ物を取られることを恐れての行動だ。この光景に「あまりのことに泣きそうになりました」と振り返る女性。その日、子どもが部屋に行ってから夫に説得を試みたものの……。
「『子どもにあんな行動をさせるなんて情けなくないか?』と諭しましたが、私が入れ知恵したのだろうと逆ギレ。 離婚の二文字が頭をかすめました」
娘が学校で異常行動、夫に呼び出しがかかる
それでも「子どもには親が必要なのでは?」などと悩んでいると、学校から呼び出しの連絡が来た。
「子どもが、学校でも給食を両手で庇うようにして早食いし、腹痛で保健室にいると言うのです。慌てて早退し、先生に全て打ち明けて相談しました。知らずのうちに泣いていました。 結果、担任の先生と、なんと校長先生が夫を呼び出しました」
事情を打ち明けられた学校側は、事態を重くみて夫に直接話をしてくれることになったのだ。しかし夫は「なんで俺が?お前が行けばいい」という態度だったという。それでも女性は折れなかった。
「いい加減腹も立っていたので『私ではなく、名指しであなたが呼び出されてる』と強気で強引に半休をとらせました」
「こんな父親ならいない方がマシ。母子家庭の恩恵のがいいわ」
こうして学校に赴いた夫に、校長先生は真摯に対応してくれた。
「事態は重大なこと、早食いだけでなく異様な行動でクラスで浮く可能性もあることや、夫のストレスも鑑みて、他のストレス解消を勧めてくれました。立場ある人の言葉に夫もその場は『わかりました』と言っていましたが、わかってませんでした」
一方的な叱責ではなく、夫側にも寄り添った助言をしてくれたのだ。ところが、帰途につくと夫は態度が豹変した。
「家へ帰る車の中でいきなり、私に怒ってきたのです。家族のプライバシーを喋ったのか、と。 ここまで来るともう呆れ、『自分が何をしているのかまるきりわかっていないんだね』と、ダッシュボードをあけました。入れていたのは離婚届。『こんな父親ならいない方がマシ。母子家庭の恩恵のがいいわ』と言い放ってやりました」
迷いつつも、以前から離婚に向けて準備を進めていたのだろう。もちろん夫は激怒した。
「その後、怒り狂って叩かれたので、大したことはないのですがクリニックに行きました。アザの写真も撮りました。そして有給をとって引越し業者を頼み、夫が仕事に行っている間に引越しました」
誰もいない我が家に帰宅したとき、夫は自分のしてきたことに気付いただろうか。
「今は離婚調停中です。こちらに有利に進んでいますし、親権も取れそう。何より、子どもの早食いや陣地とりもなくなり、安心して食卓を囲んでいます」
こう胸をなでおろした女性は、「結婚前はわからなかった本性がある、と思うと、結婚はもうこりごりです」とウンザリしたように書いていた。