2024年09月06日 10:10 弁護士ドットコム
福岡市で8月、軽乗用車とバスが正面衝突して、7歳と5歳の幼い姉妹が亡くなるという痛ましい事故がありました。2人はチャイルドシートやジュニアシートを使用しておらず、シートベルトに腹部を圧迫されて死亡したと報じられています。
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道路交通法では現在、6歳未満の子どもにチャイルドシートの使用が義務付けられています(同法71条の3第3項)。この使用義務は2000年から始まりました。2023年に警察庁と日本自動車連盟(JAF)が行った調査によると、使用率は76%となっており、年々、チャイルドシートの重要性が浸透してきていると言えます。
一方で、SNSには、「祖父母がチャイルドシートを使ってくれない」という親世代の悩みがあふれています。使用義務化以前に子育てをしていた祖父母世代は、チャイルドシートについての知識が十分ではないことが背景にはありそうです。
警察庁の公式サイトによると、チャイルドシートを使用していなかった場合の致死率は、使っていた場合に比べて約4.2倍となっています。決して他人事ではありません。
もしも、チャイルドシートを正しく着用しなかったら、どうなってしまうのでしょうか。
「夫の実家に帰省したら、義父母がチャイルドシートのない車に子どもを乗せようとした」
「義母と買い出しに行く時、『近いからチャイルドシートいらないでしょ』と言われた」
「義母は泣くのがかわいそうだからチャイルドシートはいらないという。孫の命を考えてない」
「泣こうがわめこうが、子どもをチャイルドシートに座らせていたが、親族から『虐待』と言われた」
「義母が車に乗ると、勝手にチャイルドシートのベルトを外して子どもを抱っこして離さない」
こうした尽きることのない親たちの悩みが、Xには多く投稿されています。実際に、6歳未満の子どもにチャイルドシートを使用しなかった場合は、どうなるのでしょうか。
まず、チャイルドシートの使用義務違反に問われたとしても、反則金などはありません。ただし、運転手に対して交通違反点数1点が加点されます。
また、ショッピングモールの駐車場など「公道でなければ大丈夫」と思っている人もいるかもしれません。しかし、道路交通法では、「一般交通の用に供するその他の場所」も道路として規定されており、駐車場や広場、空き地なども道交法上の責任が問われることになります。
チャイルドシートなしで運転することの危険性を、どうやって祖父母世代に伝えたらよいのでしょうか。
弁護士ドットコムニュースの取材に対し、もしもチャイルドシートなしで事故に遭った場合の危険性を、JAFの広報担当者は次のように回答しています。
「お子さんは車内の天井や座席などに叩きつけられたりしてしまいます。詳細に関してはWEBサイトや動画をご用意しておりますのでご確認いただければと思います」
JAFのサイトには、乳児用チャイルドシートや幼児用チャイルドシート、学童用チャイルドシートを正しく使っていなかったり、使ってなかったりした場合、どのような事故が起きるか、写真や動画などをまじえて丁寧に説明しています。
チャイルドシートの使用を渋る祖父母には、こうした写真や動画を事前に見せるのも良いかもしれません。
体の小さな子どもの事故が相次ぐ中、JAFはチャイルドシートを使用するよう勧める対象を、これまでの身長140センチ未満から、150センチ未満に拡大するとしています。また、正しく使用しないと事故が起きた際に、子どもを守れない可能性もあります。
もしも、チャイルドシートの正しい使い方を知りたい場合、どうしたらよいのでしょうか。JAFの広報担当者は、「JAFでは、全国でチャイルド取り付け点検を行っております。問い合わせに関しては各支部にご連絡いただければと思います」と話しています。
また、祖父母世代と現役世代の「子育ての常識」のジェネレーションギャップを埋めるため、自治体でも「祖父母手帳」(名称は自治体によって異なります)を配布しています。
その中には、孫を守るためにチャイルドシートを使用するよう書かれたものがあります。こうした手帳を祖父母に渡し、知識の「アップデート」をしてもらうのも、一つの方法かもしれません。