いきなり自分語りで大変恐縮なんだけど、僕は2003年からパチンコホールに出入りして、当初はパチスロではなくパチンコにばかりお金を使っていた。その理由は簡単で、遊びやすいスペックの台が多かったためである。
たとえば大当たり確率も1/315のハーフスペック機種が多かった。これは大当たりの50%で確変に突入し、確変ループ率も50%。つまり偶数図柄と奇数図柄しか連チャンに影響しない仕組みになっていた。当然そんなシステムなので連チャンなんかしない。
たしか5連だか8連ぐらいしたら、液晶に「大爆発」とかいう文字が表示される機種もあったと記憶する。そんなマイルドな台だからこそ、老若男女も安心して打てた。そういう時代もあった。
ところがパチンコもパチスロと同じく、とにかく射幸性が高いものほど依存症ユーザーが好むので、いつしかメーカーはそういった、ギャンブルは下手でお金を落とすのが上手い人たちだけを見て開発するようになる。ホールも、依存症ユーザーが常連になったら毎月の入れ替え費用や電気代も捻出しやすいので、積極的に射幸性の高い台を導入するようになった。
こういったこともあって僕が20年ぐらい見てきたパチンコという文化は、今や完全にほとんどの客がよく調教された依存症だけになってしまっている。(文:松本ミゾレ)
昔は釘も甘く、1000円で18回転だと店員が罵倒されていた!
僕は2003年の春にパチンコホールの社員になって、右も左も分からないうちに社会人をさせられていたんだけど、流石に当時のパチンコの状況ぐらいはちゃんと記憶している。この頃はほとんどどのメーカーも同じような大当たり確率。同じような確変継続率の台を、ガワと版権だけ変えて出していた時代である。
それでも今よりもパチンコ人口は多く、パチンコホール自体も多かった。僕の入社した企業は当時業界3位のシェアを有していた。関東地区にとにかく毎月のように新店を出すものだから、よほど羽振りも良かったんだろう。新店の応援に行ったら、弁当にとんかつが出てきたもん。凄い時代である。
で、この当時しばしばお客からクレームを受けることがあったが、一番多かったのが「回らない」である。要は1000円入れて、他店よりも回転率が低いことを指摘されたわけで、具体的には1000円で18回とか19回とか。その辺しか回らず、しかも非等価であったので、たしかにこれは、今の目で見てもボッタクリ。ボッタ釘である。
よく覚えているが、僕が近隣のホールに出向いてイベント日とかに当たると、1000円で30回転ぐらい回る台は多かった。
あるときの小規模ホール時差オープンなどは、1000円で60回転も回るバカ甘い釘が用意されていて驚愕したものだった。
しかも当時はチャッカーに玉が1発入れば4発返しが当たり前だったので、よく回る台を打つということは、お金がなかなか減らずに大当たりを待てるということにも直結していた。
概ね状況がよかったのも、全てはこの時代のパチンコが、そんなに出玉率が高くないものばかりだったから。
そしてまた、余計な装飾もないために、新台1台あたりの導入費用も今よりかなり安かったことが要因なんだろう。何よりお客も多かったし。
さて、そういう昔話をなぜ今やったのか。その理由は、今があまりにも打てたものではない台ばかりになったから……という話をしたいだけなんだけど、まあ次項も読んでいただければ。
回らなければ当たらない、当たらなければつまらない
先日、5ちゃんねるの「【検定通過】新機種総合スレ515【発表会】」というスレッドの終盤から、唐突に現在のパチンコへのユーザーからの恨み節が書き込まれていた。
まあ、回らないというような文句ばっかりなんだけど、回らないと思ったら打たなきゃいいだけの話なんだよね。事実僕は、「パチスロなら1000円あたりの回転数はおおよそ決まっているのに、パチスロはホールの調整次第でどこまでも減るもんな」と思い、それが馬鹿らしくなって遠のいたクチだ。
3年ぐらい前の天井付きパチンコ登場の折には復帰してお小遣い稼ぎをしたけれど、それもなくなったことですぐにまたやめた。後はキャリコネのパチンココラム用に、2年かけて3000円使っただけである。元々パチンコをするためにパチンコホールに出入りするようになった人間ですら、ここまでパチンコに興味がなくなるというのは別に珍しいことではない。
スレッドには「もう客の減り方がヤバすぎてどんな台が出ようがホールも回収以外の選択肢取れないだろ」という書き込みがある。こういうことを書いているってことはこの人もしょっちゅうホールにいる依存症なんだろうけど、そんな人ですら回収釘しかないから辟易しているわけだ。僕と同じく、パチンコに見切りをつけてパチスロに逃げたクチかもしれない。
こないだも書いたけど、千葉の某駅前店でお盆に1000円だけパチンコしたら、なんとまさかの6回転だったからね。しかも今のパチンコって、チャッカーに玉が入っても返したった1発しかないので、これじゃあ勝負にならない。
僕が新社会人だった頃は、1000円で18回転しか回らなかったらお客が頭に血管浮かばせながら胸倉掴んできたものだけど……時代は変わったなぁ。今ってホント、店員に怒鳴りかかるお客いないもんね。客同士のトラブルはあるけど。養分同士でいがみ合ってもしょうがないのに。
また、このスレッドには懐かしい話をする人もいるんで、ちょっとそちらも。
「昔は海で40回も回って『どうですか? めちゃくちゃ回るでしょう!?』とか店長に話しかけられ事あったな」
この書き込みはつまり、1000円で40回転という超サービス釘を用意して、お客にアピールする店長もいたってことね。
僕もそういう店がたまにあったのは知っているし、僕が勤務していたホールでも、夕方ぐらいにお客の稼働アップのため、釘調整用の道具を持った店長が本社に黙ってパチンココーナーに降りて、営業中に堂々と釘を打ち直していたっけ。完全にアウトなやり方なんだけど、それでも目の肥えた客は「いや、まだ渋い。もうちょっと頑張って」と注文をつけていた。
それから、僕が当時通っていたホールでは、100回転ハマるごとに店員のおばちゃんが冷たいお茶を差し入れながら、台の盤面ガラスを開けてチャッカーに直接玉を20個ぐらいぶちこんでくれた。当時は1発入れて4発返しなので、これだけで800発ぐらい得したことになる。
1000円で20回転は最低でも回るので、100回転までに使うお金は5000円。玉は1つ4円の価値があるので、600玉だと2400円。つまり、100回転ハマるごとにほぼ半額がなぜか不思議な力で戻ってきた、ということになる。そりゃあ負けようがないって話だよね。
ところが徐々にパチンコ台も射幸性の高いものが出るようになると、こういうサービスは軒並み消え、そもそもそんなサービスをしていたホールが淘汰されて消え去った。残ってるのは苛烈な出玉性を持ちながらやたら短命なマシンと、それらを大量導入する体力のあるホールだけ。僕のいた大手ホール企業も昨年倒産した。
そもそも、回らないパチンコって苦痛なんだよね。その回らない時間をどうにか誤魔化すために、パチンコメーカーは1回転ごとの変動を遅くしたり、リーチをやたら長くしたり、保留がない状態で入賞した際には、当たらないけどちょっと熱い演出を出すように工夫したり。
だけどその工夫ってユーザーには全く関係ないことだし、僕みたいな依存症の人間ですらもはや「今のパチンコに5000円も入れるなんて異常者」と思うようになっている。天井もない、釘も悪い、演出もうるさい。そんな三重苦、わざわざお金を払って体験したくないよ~!
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