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リップモンスターが人気の「KATE」 渋谷に旗艦店が登場、反響は?

2024年09月05日 13:01  ITmedia ビジネスオンライン

ITmedia ビジネスオンライン

KATEの「グローバル旗艦店」が誕生

 1997年に誕生し、「NO MORE RULES.(ノー・モア・ルールズ)」をスローガンとして、“ルールに縛られない攻めのメイク”を提唱し続けてきた化粧品ブランド「KATE(ケイト)」。ヒット商品も多く、国内では「メイク市場ナンバーワンブランド」(インテージSRI+調べ メイク市場 2021年1月~23年12月累計売上金額において)の地位を確立している。


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 2014年にはブランドロゴを「KATE TOKYO(ケイト トーキョー)」へ一新して、グローバル展開を本格化。現在、日本以外にアジア9カ国(中国・台湾・香港・韓国・タイ・マレーシア・ベトナム・ミャンマー・フィリピン)でも製品を販売している。


 2024年7月には、初のグローバル旗艦店となる「KATE TOKYO 渋谷サクラステージ店」をオープンした。顔印象分析によりパーソナライズされた4色のアイシャドウを提案する「KATE iCON BOX(ケイト アイコンボックス)」などリアルとデジタルを融合した体験を提供し、連日反響を呼んでいるとのことだ。


 これまでのKATEの歩みとグローバルでの販売戦略をKATE PR担当の若井麻衣氏に聞いた。


●大粒ラメのアイシャドウが大ヒット


 若井氏いわく、KATEは「カタログメイク」から「自己アレンジメイク」へトレンドが変化する時代背景のなかで誕生したとのこと。それまではモデルや女優のメイクをそのまま真似たメイクが主流だったが、『egg』(エッグ)や『Cawaii!』(カワイイ)などのギャル雑誌が創刊され、「コギャル」や「裏原宿系」など自己表現を追求するトレンドが注目を浴びるようになった。


 「KATEの知名度アップに貢献したのが、1999年に発売したアイシャドウ『フラッシュクラッシュ』です。当時は珍しかった『パレットタイプ』と『大粒のラメ』を採用して、独自のファッションやメイクが花開いていった時代に女子高生や若年女性から支持を得ました」


 同製品は発売2カ月で100万個を売り上げ、KATE初のヒット商品に。発売当時ちょうど高校生だった筆者は、同製品を使用していた記憶がある。身近なドラッグストアで販売されていることもあり、いわゆる「ギャルメイク」を好む女性だけでなく、メイクを楽しむ幅広い女性から支持を得ていた印象だ。


 2000年代には、アイライナーやマスカラなどを使って目周りを強調する「目力を出すメイク」が流行したこともあり、関連カテゴリーの売り上げが伸長。これまでに「アイブロウ(眉を描く商品)」「アイライナー」「アイシャドウ」「口紅」のカテゴリー別の売り上げにおいても、メイク市場ナンバーワン(インテージSRI+調べ)を獲得している。


●意表を突いた「口紅」が爆発的ヒット


 記憶に新しいヒット製品が、現在もなおブームが続く「リップモンスター」シリーズだ。「つけたての色が続く落ちづらい口紅」としてコロナ禍の2021年5月に発売したところ、爆発的にヒットした。


 「KATEでは、『既成概念に縛られないメイク欲を刺激する提案』を大事にしていて、リップモンスターはまさに逆転の発想から生まれた商品です。マスクで口元が隠れていても、メイクを楽しみたい気持ちがなくなったわけではない。マスクをしても色落ちしにくい口紅なら、そうした人たちのニーズを満たせるのではないかと考えたんです」


 保湿力もありながら長時間つけたての色が持続する機能性に加え、「世界観」にもこだわりを反映した。色のネーミングは「水晶玉のマダム」や「ラスボス」など個性的で、SNSでも話題を呼んだ。


 「一つひとつのネーミングには物語があります。例えばオレンジ系カラーの『憧れの日光浴』の場合、モンスターは夜行性で日中は活発に動けないことから、日光浴を『憧れ』と表現しました」


 認知が広がった後も間髪入れずに新商品を発売したり、体験型のデジタルコンテンツを立ち上げたりしてファンを拡大しているそうだ。


 KATEのカテゴリー別の売り上げランキング(直近)を見ると、1位「口紅」、2位「アイブロウ」、3位「アイライナー」、4位「アイシャドウ」で、リップモンスターがブランド全体に多大な影響をもたらしたことがうかがえる。


 「リップモンスターは海外でも人気が高まっていて、特に台湾で好調です。日本で大ヒットしている商品という切り口でKOL(キーオピオニオンリーダー)の方にSNSで紹介いただき、リップモンスター関連の投稿が台湾で増えています」


●「グローバル旗艦店」の反響は?


 グローバル展開を加速する中で、2024年7月25日にはブランド初のグローバル旗艦店「KATE TOKYO 渋谷サクラステージ店」をオープン。「NO MORE RULES.」のスローガンを体現し、東京から世界へ向けてブランドの魅力を発信したい狙いがある。


 リアルとデジタルを融合しているのも特徴の一つ。入口近くには、パーソナライズされた4色のアイシャドウ商品(1個715円~)を提案するデジタルコンテンツ「KATE iCON BOX」があり、連日行列ができるほどの反響だという。


 「AI技術とKATE独自ロジックの顔印象分析によって、その方に似合う4色のアイシャドウを提案します。体験は無料で必ずしも商品を購入する必要はありません。夏休み時期には若年女性を中心に幅広い世代の方が体験されていて、『私ってこんな色が似合うんだ』という驚きの声が聞かれました」


 1回3分弱の短い体験にもかかわらず、列が途切れることなく、週末にはさらに長くなる。KATE iCON BOXは世界に1台しかなく、想定以上に稼働しすぎて故障を起こし、8月下旬時点では代替機を設置している状況だ。店舗全体の売れ行きもよく、リップモンスターのWeb限定品が実際に試せるなどのメリットから来店する人も多いという。


 同店では、訪日外国人の来客も見込んでいる。店内は英語や中国語などの多言語対応をしており、開店前の発表会ではアジア各国のインフルエンサーなどを招待して発信を強化したそうだ。


 「現時点では外国人の方はチラホラ見られますが、まだ少数です。KATE TOKYOが入る商業施設の『渋谷サクラステージ』自体がオープンしたばかりで、グローバルへのアプローチはこれから強化していきたいところです」


●グローバル展開での課題は「伝え方」


 KATEは2014年からグローバル展開を本格化しているが、グローバルでの売り上げなどは現状非公開としている。「2030年までにブランド全体で売上高1.6倍、海外売上比率2倍(2023年実績比)」という数値目標の公開にとどめている。


 展開している9カ国での戦略を尋ねると、「日本(本社)でグローバル戦略を策定し、それをもとに国・地域単位でエリア戦略を実施している」との回答だった。越境ECにおいては中国のみの展開で、「他国においては現時点で言及できる点がない」とした。商品のローカライズにおいても現状は予定がなく、しばらくは日本向けの製品をそのままグローバルで売るそうだ。


 アジア各国における日本コスメの印象を尋ねると、若井氏は「品質の高さや安心感」を挙げた。日本ほどの店舗数には及ばなくともKATEの製品を購入できるドラッグストアは現地に多くあるという。グローバルで認知や売り上げをより拡大するには何が課題になるのか。


 「各国でナンバーワンブランドが確立されている中でシェアを取っていくには、その国のターゲット層に刺さるプロモーション展開が必要だと考えます。商品自体の良さには自信がありますが、『伝え方』は国ごとに工夫しなければ響かないのかなと」


 今後、「現地担当者とのコミュニケーションや協力体制をより強化して、グローバルでの売り上げを拡大したい」と若井氏は話した。国内メイク市場ナンバーワンブランドであっても、他国でのシェアを広げるのは並大抵ではないようだ。


(小林香織)