2024年09月02日 16:21 ITmedia NEWS
東京都は、いわゆる「不健全図書」の名称を変更する方針を固めた。不健全図書を巡っては、言葉のイメージによる弊害が大きいとして、日本漫画家協会の有志らが昨年、呼称変更を求める要望書を提出していた。
東京都の担当部署である生活文化スポーツ局によると「先の定例会(東京都議会本会議)で、都民ファーストおよび立憲民主党からの質問を受け、当局局長が『今後、条例の主旨が誤解なく伝わるよう、告示や通知等の表記を検討する』と回答した」。一部報道では新名称を「8条の規定による図書」
(8条図書)と紹介しているが、現状は「検討中」。つまり、名称を変更することは決まったものの、新名称や導入時期は未定という(9月2日時点)。
ただ、早ければ9月中にも新名称が都のWebサイトなどに登場する可能性はある。不健全図書への指定を審議する東京都青少年健全育成委員会の次回定例会が9日に予定されているためで、審議する図書があれば、その前後で報道発表資料などに新名称が記載される。審議する図書がなかった場合は、次回10月11日に持ち越される。
東京都の条例自体は変わらない。もともと条例に不健全図書の定義付けはなく、文言としても8条の見出しに登場するだけだった。「条例の文言を変更する必要はない。広報文や告知、通知など記載を変えるだけなので、われわれ(生活文化スポーツ局)で対応する」としている。
●言葉のイメージで自主規制?
不健全図書は、出版社や販社による自主規制(成年コミック、成人向け雑誌など)の対象にならなかった本の中から、著しく性的感情を刺激したり、残虐性を助長したりするおそれがあると認められるものについて、青少年健全育成審議会の意見などを踏まえて都が指定する。指定された本を販売する際は、個別に包装し、店頭でも他の本と区別しなければならない。
制度の対象は18歳未満の青少年のため、成人の購入や閲覧は制限されない。また包装や書棚の区別といった扱いは、他の成人向け雑誌と同じだ。
しかし実際には、不健全図書に指定された本は、その言葉のイメージから書店やECサイトが自主的に規制し、流通が止まるケースもままあるという。これでは執筆者や出版社は販路がなくなってしまう。
漫画「はじめの一歩」で知られる森川ジョージさんら日本漫画家協会の有志は、こうした状況を受け、2023年3月に名称変更を求める要望書を都議会の会派へ提出。賛同した112人の漫画家の名簿には「あしたのジョー」のちばてつやさん、「名探偵コナン」の青山剛昌さん、「進撃の巨人」の諫山創さんら著名な漫画家の名前も多数あった。
今回の決定を受け、森川ジョージさんは自身のXアカウントで「名称改称が実現しました。約60年間微動だにしなかった山が自分らが活動を始めてからたった2年で動きました」と報告した。このスピード感につながった理由は「友人漫画家からたくさんの署名を貰えたこと。漫画家協会にて表現活動部が発足され心強い仲間が増えたこと。都議会にこの件に長く深く携わってくれた議員さん達がいてくれたこと。都議さん達が以前と違う新しく時代に沿う感性になっていたこと。その他諸々」だという。「東京は変わりました。全国に波及することを願います。ありがとうございました」(森川ジョージさんのXより)