トップへ

TVゲームをプレイ・購入すると“メンタル”に良い 9万人以上へのSwitch/PS5に関する調査 国内チームが発表

2024年08月29日 08:31  ITmedia NEWS

ITmedia NEWS

TVゲームをプレイ・購入すると“メンタル”に良い 日本大学や浜松医科大学、大阪大学などが発表

 日本大学や浜松医科大学、大阪大学などに所属する研究者らが発表した論文「Causal effect of video gaming on mental well-being in Japan 2020-2022」は、テレビゲームが精神的健康に与える影響について、大規模な自然実験を用いて因果関係を明らかにした研究報告である。


【その他の画像】


 この研究は、2020~2022年にかけての新型コロナウイルス感染症のパンデミック期間中のゲーム機の品薄によって発生した、Nintendo SwitchとPlayStation 5(PS5)の抽選販売という状況を、自然実験として活用したものである。


 研究チームは、10~69歳の日本人9万7602人を対象に、5回にわたるオンライン調査を実施した。調査では、ゲーム機抽選への参加状況、ゲーム機の所有状況、ゲーマー度、不安抑うつ度、人生満足度などの情報を収集。このうち、実際にゲーム機の抽選に参加した8192人のデータを詳細に分析した。


 分析の結果、ゲーム機を保有することが精神的健康に好影響を与えることが明らかになった。具体的には、Switchの抽選に当選して購入した人は、不安抑うつ度が低下した。PS5の購入者では、不安抑うつ度が低下し、さらに人生満足度が上昇した(なおSwitchについては人生満足度のデータが収集できていない)。


 これらの結果は、因果関係を示すための信頼性が高い統計的手法によるものであり、ゲーム機を手に入れることが精神的健康の改善につながることを示している。


 また、1日当たりのゲームプレイ時間と精神的健康の関係も分析した。1日のゲームプレイ時間が増えると、不安抑うつ度が下がり人生満足度が向上することが明らかになった。ただし、1日3時間を超えると、恩恵が小さくなっていくことも判明した。


 しかし、研究チームは、パンデミック中という特殊な状況における自然実験であったことで、ゲームの精神衛生上のメリットが大きくなった可能性があることに留意を促している。当時、人々の精神状態は概して不安定であり、運動など他の活動を行う機会も限られていたためだ。


 研究チームは、機械学習手法も活用し、ゲームの効果が個人の特性によってどのように異なるかを分析した。その結果、年齢や性別、家族構成、就業状態などによって、ゲームの効果が異なることが明らかになった。


 例えば、Switchの効果は若年層でより顕著であったのに対し、PS5の効果は成人で大きかった。また、PS5の効果は男性、子どものいない世帯、フルタイムで就労している人でより顕著だった。一方、Switchにはそのようなパターンは見られなかった。


 同研究は、8月19日に英科学誌「Nature Human Behaviour」に掲載され、多数の海外メディアで取り上げられている。


 Source and Image Credits: Egami, H., Rahman, M.S., Yamamoto, T. et al. Causal effect of video gaming on mental well-being in Japan 2020-2022. Nat Hum Behav (2024). https://doi.org/10.1038/s41562-024-01948-y


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2