今回は、特別支給の老齢厚生年金の請求を遅らせたいと考えている人からの質問です。
Q. 昭和36年3月生まれの63歳の男性。特別支給の老齢厚生年金の請求を2~3年遅らせることを考えています。支払った厚生年金保険料は特別支給の老齢厚生年金額に反映される?
「私は昭和36年3月生まれの63歳の男性です。私は64歳から特別支給の老齢厚生年金を1年間受給することができます。ただ、今も厚生年金に加入して働いているので特別支給の老齢厚生年金の請求を2~3年遅らせることを考えています。その場合、支払った厚生年金保険料は特別支給の老齢厚生年金額に反映されますか?」(九紋竜さん)A. 64歳からの特別支給の老齢厚生年金の受け取りを遅らせて受給することはできますが、繰り下げによる増額はされません。64歳から65歳になる前月までの厚生年金保険料は、65歳以降に支払われる老齢厚生年金額に反映されます
質問者「九紋竜」さんは昭和36年3月生まれ(3月2日以降の生まれと仮定)の男性とのこと。特別支給の老齢厚生年金の受給権は64歳になる令和7年(2025年)3月に生じ、翌月の令和7年(2025年)4月分から特別支給の老齢厚生年金が支給されることとなります。65歳から受け取れる老齢基礎年金と老齢厚生年金には、受け取り開始を66歳以降75歳までに遅らせることで年金額を増やすことができる「繰下げ受給」という制度があります。
「九紋竜」さんは「特別支給の老齢厚生年金の請求を2~3年遅らせることを考えています」とのこと。特別支給の老齢厚生年金は、受け取りを遅らせて受給することはできますが、「繰下げ受給」の制度は適用できないため、増額しない年金額のまま受け取ることになります。繰り下げて増額できるのは65歳以降に受ける老齢基礎年金と老齢厚生年金だけです。
「特別支給の老齢厚生年金の受給を2~3年遅らせる場合、それまでに支払った厚生年金保険料は特別支給の老齢厚生年金に反映されますか?」という質問についてですが、特別支給の老齢厚生年金は受給権が生じてすぐ受け取っても、遅らせて受け取っても、特別支給の老齢厚生年金を受け取れる年齢になる誕生月前月までの厚生年金期間と平均月収・平均年収で計算されます。
つまり質問者「九紋竜」さんの特別支給の老齢厚生年金は、64歳になる前月の令和7年(2025年)2月までの厚生年金期間と平均月収・平均年収で計算されることになります。
ただし、64歳になる令和7年(2025年)3月以降~65歳になる前月の令和8年(2026年)2月までの厚生年金期間の厚生年金保険料は、65歳以降に支払われる老齢厚生年金額に反映されます。
年金を受ける権利は、受給権が発生してから5年を経過したときは、時効によって消滅しますので注意しましょう。
文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)
銀行員、税理士事務所勤務などを経て自営業に。晩婚で結婚・出産・育児した経験から、日々安心して暮らすためのお金の知識の重要性を実感し、メディア等で情報発信を行うほか、年金相談にも随時応じている。
(文:拝野 洋子(ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士))