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ホンダの軽商用EV「N-VAN e:」は遊べるクルマ? 発売前の試乗で確認

2024年08月28日 12:01  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
ホンダの新型電気自動車(EV)「N-VAN e:」は軽自動車の商用車「N-VAN」をベースにした軽商用EVだ。ホンダとしては、身近な軽商用バンから日本のEV展開を本格スタートさせたいとの思いがある。



我々ユーザーが気になるのは、N-VAN e:を個人ユースで買うと想定した場合、遊びや趣味の相棒としてしっかり使えるのかというところ。10月10日の発売を前に、栃木のテストコースで開催された試乗会に参加して、そのあたりを探ってみた。


全4タイプのうち2タイプが個人ユースに対応



N-VAN e:のモデルバリエーションは、商用ニーズに特化した「e: G」(243.98万円、ドライバー1名での利用を想定)、運転席と運転席側後席のタンデム2シーターで乗車スペースと積載性を両立した「e: L2」(254.98万円)、商用から個人ユースまで幅広く活用できる4座シート配置の「e: L4」(269.94万円)、e: L4ベースで充実した装備とおしゃれなスタイリングを兼ね備えた「e: FUN」(291.94万円)の全4タイプ。このうち、最初の2台は本田技研法人営業部とオンラインの「Honda ON」でのリース契約のみの取り扱いとなっている。我々が実際に販売店で購入できるのは、e: L4とe: FUNの2台だ。


加減速は荷物の積載を考慮、航続距離は245km



N-VANと変わらないサイズで200kgほど重くなったボディを駆動するのは、最高出力47kW(64PS)、最大トルク162Nmを発生するモーターだ。N-VANではエンジンが収まっている小さなフロントボンネット内に、電動アクスルやチャージャー、ラジエーター類などのパワーユニットをぎっしりと詰め込んだ。


WLTCモードで245kmの航続距離を達成した容量29.6kWhのバッテリーは、ダイブダウンするシートによる低床化でエンジン車と同じ容量の荷室を実現するため、左右を異なる形状にして床下に搭載。高さはわずか1cmだけのアップに抑えている。


試乗コースではガソリンのN-VANの後にN-VAN e:に乗ったので、その差は明確。「クィーン」という小さなモーター音を発しながら直線的に加速する様子は電動車特有のもので、エンジン車よりも間違いなく速い。車速を80km/h程度まで上げると、車内が静かな分だけタイヤのノイズが聞こえてくるのだけれど、12インチから13インチ(145/80R13)にアップしたタイヤのエアボリューム(と、それに合わせたサスペンションチューニング)のおかげで、「商用車は乗り心地が悪い」という印象は全くなく、乗用車的に気持ちよく走ってくれる。


重い車重による対フェード対策として径が大きくなった(タイヤサイズに比例した)電動サーボ式のブレーキは、停止寸前まで効きが一定なので車速のコントロールがしやすい。ボタン式のエレクトリックギアセレクターで「B」モードを選べば、ワンペダル的な走りも自然にできるのが確認できた。荷崩れなどを考慮してチューニングしたという加減速の一定感はドライバーにとっても体への負荷が少なく、乗り降りを繰り返したり長時間運転したりしても、結果的に疲れないクルマとして仕上がっていることがわかる。

好みに応じて使える大きな箱



N-VAN e:は商用車なので、いかにたくさんの荷物を積めるかが勝負だ。床から天井まで1,365mm、フラットフロアは最長2,635mm、左側のピラーレス開口部は1,580mmを実現。そこには50個以上のダンボールが積み込める、という展示がしてあった。床が低いので小口配送を繰り返すときに簡単に荷物が取り出せたり、運転席から歩道側にすぐに降りられるようダッシュボードの下端をえぐって(ボタン式セレクターになったおかげとのこと)足先をそちら側に出しやすくしたりと、さまざまな工夫が見て取れる。


ただ、このクルマの使い方としては仕事だったり個人としてだったりといろんなパターンがあるので、全てにマッチさせるのは難しい。ホンダとしては、まずは大きな箱(=N-VAN e:)を用意して、「ハイ、あとは好みで使ってね」というスタンスだ。ドアや荷室のサイドパネルは、コンテナの外観から発想したという縦のビードデザインになっていて、まさに四角いコンテナの内部のような空間が広がっている。


個人ユースとしては、広くフラットな床をいかして車中泊仕様にしたり、デスクを設置して移動オフィスにしたり、カフェや花屋さんなどの動く店舗にしたりなど、工夫次第でいろんな改造ができそう。そのために、クロスバーやインナーラック、テールゲートバー、有孔ボード、メッシュポケット、テールゲートメッシュなどさまざまなオプションパーツを用意しているそうだ。ただ、運転席以外のシートは相当に簡易的な作りになっているので、家族を乗せる機会が多いユーザーには「N-BOX」など他の選択肢があることは伝えておきたい。


充給電リッドはフロントグリルに2口あり、右側が普通充電(3.2kWで8.5時間、6.0kWで4.5時間)、左側が急速充電(50kW対応で30分で80%まで回復)となっている。電気を取り出す「ホンダ・パワーサプライコネクター」を使用すれば出力1,500Wまで対応するので、野外アクティビティやアウトドアなどで活躍しそうだ。「ホンダコネクト」でリモート充給電サポートが使えるので、お出かけ前タイマー設定や充電待機時間設定(深夜電力を使用するため)、最大充電量設定、外部給電下限設定(バッテリー残量の設定)などがスマホでできる。いつでも充電状態が確認できるのは便利だ。


黒ナンバー(4ナンバーの軽貨物車)用の「LEVO補助金」(約100万円)や「CEV補助金」(軽で約55万円)の対象となっているので、それ頼りとはいえ200万円以下で手に入れられそうな価格設定のN-VAN e:。かなり気になる存在だ。



原アキラ はらあきら 1983年、某通信社写真部に入社。カメラマン、デスクを経験後、デジタル部門で自動車を担当。週1本、年間50本の試乗記を約5年間執筆。現在フリーで各メディアに記事を発表中。試乗会、発表会に関わらず、自ら写真を撮影することを信条とする。 この著者の記事一覧はこちら(原アキラ)