パワハラされ続ける職場では、いくら頑張っても報われる気がしないだろう。ITエンジニアの40代前半の女性(神奈川県)は新卒の頃、過酷な労働環境と先輩のパワハラに苦しめられたという。
「手取り14万円の安月給。案件先の会社ではただのコマとして扱われ完全にアウェー」
「自社の先輩のA男は、とにかく気に入らないところをモグラ叩きのように指摘して、私を攻撃することで憂さ晴らししているようでした」
こう振り返る女性だが、現在は年収1000万円で「優しくて強い、何でも話せる技術者のおばさん」として慕われている。自身がブラック企業から年収3倍のITエンジニアに這い上がるまでの一部始終を語ってくれた。(文:福岡ちはや)
「土日何してたの?まさか遊んでたわけじゃないよね?」
女性が新卒で入った会社は、東北地方の技術系アウトソーシング会社だった。当時は右も左もわからない新人だったため、先輩と一緒に大手企業の案件に入り新人教育を受けていたが、コロコロと現場が変わるので「常に居心地の悪さを感じていました」という。
あるとき女性は「仕事ができるからと社長に気に入られている」30代男性の先輩、“A男”と同じ現場に派遣された。そこでA男からの「酷いパワハラ」に遭ってしまう。
「案件の状況が悪くなったり、私の進捗が悪いと、(A男は)ギョロギョロと血走った目で怒鳴りつけてくるようになりました。(中略)『ここなんですが……』と画面を指差しただけで『ここってどこ?指示語を使うな』とシャットアウト」
ほかにも、この先輩は
「土日何してたの?まさか遊んでたわけじゃないよね?」
「うちはお前みたいな新卒を雇うだけ赤字」
「俺が話してるんだから目をそらすな」
「本で調べてどうにかなるなら俺いらないね。1人でやれよ」
などと、心ない言葉を女性に投げ続けた。しかし、当時はそれがパワハラ扱いされることはなく、「先輩から後輩への指導として当たり前の風潮」があったそう。女性は
「同じ案件で働く人たちは、先輩の雰囲気の悪さを感じつつも見て見ぬふりでした。下請けの最下層にいる私を助けても仕方なかったのでしょう」
と誰にも助けてもらえなかった悔しさを滲ませた。
「やっとA男さんと離れられる」とホッとしたのも束の間…
女性はA男のパワハラを会社に相談しなかった。「自社は派遣がメインの小さな会社で、人事部などマトモに機能していない」と考えたからだ。代わりに同僚のB子に相談したが、彼女は「体育会系出身」の「裏表のない天然の陽キャ」だったため、「A男さん、そういうとこあるよね~!まあ私は平気だけど」とケロッとしていて、問題は何も解決しなかった。
「八方塞がりの中、案件が終了して『良かった、やっとA男さんと離れられる』とホッとしたのも束の間、次の案件でもまたA男と組まされることが判明。『ああ、もう無理だ。もういいや……』と急に吹っ切れて、『幼い頃の持病が最近悪化した』と嘘をついて退職願を出しました。入社からわずか8か月でのできごとでした」
その後、リーマンショックがあり、女性は食つなぐためにアルバイトを経て上京を決意。「もう下請けはしたくない!」と自社サービスの会社に入り、そこで知り合った人と結婚したという。
また「自分は絶対にパワハラはしない。そして部下が誰かに傷付けられたら、徹底的に矢面に立って戦う」と意識したおかげで、人間性を買われるようになったそうだ。パワハラを受けた当時はつらかっただろうが、女性はそれをバネにして、結婚相手と理想的な労働環境を手に入れることができた。
気になるA男のその後だが、女性いわく
「同じ会社で幅を利かしているようです。社内では有名なパワハラ男で、毎年新人を1人は辞めさせていることなど、後日知りました。転職サイトの口コミにA男のパワハラのリークが並んでいます」
とのこと。さらにFacebookで知ったことだがA男はB子と結婚したそうで、
「正直『あんな底意地の悪いパワハラ野郎でも結婚できるんだ』という驚きと、『まあ、あんなのと付き合えるのはB子くらいでしょうね』という妙な納得感もあります」
と複雑な胸中を語っていた。
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