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今PCを買うなら「AI PC」にしようと決めた理由 【実用レビュー 第3回】キーボードやタッチパッドは使いやすい? ビデオ会議はどうだ?

2024年08月27日 17:11  ITmedia PC USER

ITmedia PC USER

日本HPの14型モバイルPC「Envy X360 Laptop 14-fc0020TU」。直販価格は26万4000円だ

 日本HPの「Envy x360 Laptop 14-fc(インテル)」は、Core Ultra シリーズ1(開発コード名:Meteor Lake)を搭載した14型のモバイルPCだ。これまで利用していたNECパーソナルコンピュータのモバイルPC「LAVIE NEXTREME Carbon」(PC-XC950DAG)に代わり、Envy x360 Laptop 14を使ってPC USERの記事制作に活用して1カ月が過ぎた。


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 ここでは前回に続き、使い込んで気付いたメリットとデメリットを見ていく。


●肝心のキーボードとタッチパッドは使いやすい?


 出先や会社でノートPCを使う場合、キーボードやタッチパッドは入力インタフェースとして要になるポイントだ。ディスプレイの表示品質では、有機EL採用のEnvy x360 Laptop 14に軍配が上がったが、キーボードやタッチパッドの使い勝手はどうだろうか。


 普段から、キーボードなどにこだわっている人からすると、こちらの写真を見て「これは……」と気が付く部分があるだろう。1つは電源ボタンがDeleteキーの左側に用意されているということだ。幸いなことに、長押ししないと機能しないため作業中に誤って入力してスリープなどに入るということはないが、ただでさえキー数が多い日本語配列だと何かのキーが犠牲になっている。


 本機の場合は、InsertやPrintScrteen、PageUp/PageDown、Home/Endキーなどは単独のキーが用意されず、Fnキーとの組み合わせで提供されている。慣れで何とかなる部分ではあるが、どうにもならない場合は別途ユーティリティーなどを導入してキー割り当てを変更する必要がある。


 それ以上に気になるのは、カーソルキーの小ささと「↑」キーの左右に配置された「PageUp」「PageDown」キーの存在だ。主要キーを中心に多くのキーはサイズが正方に近く大きなキーになっているが、カーソルキー周辺の6キーはその半分しかない長方形サイズになっており、押しにくく上下のキーで誤って押してしまうことが非常に多い。


 さすがに慣れてくると誤爆の頻度は減るが、それでも利用する場所(机の上だったり、膝の上だったり)が変わった際に最初のタッチはどうしてもミスが発生する。次からは体が自動的に微調整するが、その位置を認識するまでは誤ったキー入力が行われてしまう。


 しかも、原稿を編集していたり執筆していたりする場合、カーソルを左に行かせるつもりがPageUpをおして盛大にスクロールしてしまう。使い込むうちに頻度が減ったとはいえ、前述のようにゼロにはできず、ストレスを感じる部分だった。


 なお、主要キーのキーピッチは約19mm、キーストロークは約1.5mmと、LAVIE NEXTREME Carbonの約18.7mm、キーストロークが約1.3mmよりもわずかに広く、そして深くなっている。


 そこまで気になるなら、これらのキーを使わずに代替すればいい(外付けのキーボードを持ち歩いて尊師スタイルで使えばと言う意見は、荷物が増えるので同意できない)という話があるかもしれない。


 例えば、もっとキー数が少ないPFUの「Happy Hacking Keyboard(英語配列)」シリーズのように、Controlキーとの組み合わせでカーソルキーを代用(本機の場合は別途ユーティリティーが必要だ)するという手もある。しかし、ノートタイプのキーストロークが浅く、キーの横幅も狭いキーでコンビネーションキーを多用すると、思った以上に指が疲れてしまうのだ。


 かつてPFU製品を使っていたので、コンビネーションでカーソルキーを使うことも体は覚えているが、ノートPC内蔵のキーボードを使う際はできるかぎりカーソルキーを使いたい。どうしてもキー配列やノートPCのサイズを含めて全体に影響する部分だけに、モバイルPCでカーソルキーを大きくするのは何かとトレードオフの状態になるわけだが、これまで使っていたLAVIE NEXTREME Carbonでは生じなかった問題だけに、悩ましいところだ。


 ひょっとしたらUEFI(BIOS)メニューで変更可能かもと思ったが、本機の場合はそのようなメニューは見当たらなかった。キー入力時の音については、もともとLAVIE NEXTREME Carbonが静かで強めにタイプしても気になることはなかったが、Envy x360 Laptop 14も同様だった。厳密に言うとLAVIE NEXTREME Carbonの方が静音性は高かったが、どちらのモデルも静かな環境で使っても周囲を気にする必要はないだろう。


 なお、バックライトは白色で明るさを3段階に調整できる。暗い会議室や飛行機の機内でも利用可能だ。


 逆にタッチパッドはLAVIE NEXTREME Carbon比で約1.54倍に広がり、スクロールやジェスチャー操作などもスムーズに行え、こちらはかなり快適だった。


●ビデオ会議では使いやすい? ついにNPU活用の場面も


 入力面に続き、業務で利用する機会が多いのがビデオ会議だ。ZoomやMicrosoft Zoom、Meetといったツールは、今や仕事に欠かせない。社内や社外に関わらず、これらのツールにお世話になっている人は多いはずだ。


 その観点で見ると、約500万画素(LAVIE NEXTREME Carbonは約200万画素)のWebカメラを搭載したEnvy x360 Laptop 14に軍配が上がる。LAVIE NEXTREME Carbonもヤマハのサウンドユーティリティー導入やさまざまな工夫がなされていたが、このあたりは日々進歩が進んでいる部分でもあり、発売時期が2年違うという月日は大きいと言わざるを得ない。


 具体的には、Envy x360 Laptop 14の映像はより自然で、多少暗い環境でも無理のない映像を確保してくれる。音声もより肉付きが良くて明瞭だ。


 また、NPUを活用する「Windows スタジオ エフェクト」で映像の自動フレーミングや背景ぼかしを行えたり、「Poly Studio」で音声出力のノイズ除去やマイクのノイズ低減/モード切り替え(会議/個人/スタジオレコーディング)も指定したりできる。


 なかなか紹介の機会がなかった、本機が搭載するCPU「Core Ultra 7 155U」内蔵のNPUも、Windows スタジオ エフェクト利用時に活躍してくれる。ZoomやMicrosoft TeamsではNPUの使用率は25%程度だった(Windows スタジオ エフェクト併用時)。


 逆に言うと、本機はSoCにSnapdragon Xシリーズを搭載した「Copilot+ PC」のようにテキスト入力による画像生成機能のフォトアプリに実装された「イメージクリエイター」や、ペイントアプリに実装された「コクリエイター」などは使えない。一般ユーザーがNPUを手軽に利用するのは、10月にWindows Insider向けに提供が始まる見込みの「リコール機能」など、まだ先になる。


 かといって、本格的にNPUを利用したいユーザーにとっては、本機や他のCopilot+ PCを含めて40TOPS程度のNPUでは物足りないというのが現実だ。今後、OSやアプリのサポートは順次進む形になるが、「AI PCだから新機能を使える!」と思うのは早計なので注意しよう。


 むしろ前回触れたように、普段活用している機能が自然にAIを使うなどユーザーに優しい実装が望ましい。


 また、標準で「HP Enhanced Lighting」ユーティリティーが導入済みで、本機の液晶ディスプレイを照明代わりに利用できる。ライトの形状を円形(直径も選択可)や長方形にしたり、カラーを変更したり、透明度を変えたりと柔軟度は高い。


 面接や面談、ここぞといったプレゼン時に重宝する機能だが、写真を見ても分かるように光量を優先するとディスプレイのほとんどが埋もれてしまい、同時にバッテリーの減りも顕著に増える。別途外付けのランプを使わずに映像品質をアップできる便利な機能だが、日常的に利用するのであればデュアルディスプレイ環境を用意した方がいいだろう。


 次回はベンチマークテストなどを行い、今回のリプレースについてまとめていく予定だ。


(製品協力:日本HP)