2024年08月27日 09:50 弁護士ドットコム
車を走らせていると、隣のレーンや対向車線を走る車の助手席から犬が顔を出している光景を見たことがある人は多いかもしれません。
【関連記事:■セックスレスで風俗へ行った40代男性の後悔…妻からは離婚を宣告され「性欲に勝てなかった」と涙】
犬の可愛らしさに思わずほっこりすることがあるかもしれませんが、冷静に考えると、運転の邪魔になるなど思わぬ事故の原因になる可能性があります。
SNSにはこうした現場を目撃した人による書き込みが。
「犬が顔出してる車あったからかわいいな~って思って見たら運転手も犬で一瞬で肝が冷えた」
「わたしゃ、同じ状況の車に事故られてるので、許せない。人間&犬のためにもゲージに入れたりリードで繋いで助手席から動かないようにするとかしてほしい」
このように動物を助手席や運転席に載せて車を走らせることは法的に問題ないのでしょうか。
道路交通法にくわしい和氣良浩弁護士に聞きました。
日本において、ペットは法律上「物」として扱われています。このため、犬を車両に同乗させる場合、人間のようにシートベルトの装着を義務付けられているわけではありません。
しかしながら、犬を車内に同乗させる際には、道路交通法をはじめとする法規に基づき、適切な対策を講じる必要があります。
以下では、犬を車内に同乗させる際の法的な留意点について解説いたします。
まず、道路交通法第55条第2項では、車両の運転者が運転中に視野を妨げたり、ハンドル操作を阻害する行為が禁止されています。
これにより、犬を自由に運転席や助手席に乗せる行為が、運転者の注意義務を疎かにし、ひいては交通事故を誘発する危険性がある場合、法律違反とされる可能性があります。
また、犬が車窓から顔を出す行為についても留意が必要です。
犬が顔を出すことでサイドミラーの視界を遮り、これが原因で安全運転が妨げられる場合も、同様に道路交通法に違反する可能性があります。
こうした行為は、運転者にとってのリスクを増大させるだけでなく、他の道路利用者に対しても危険を及ぼす可能性があるため、厳に慎むべきです。
犬を車両に同乗させる際の適切な安全対策として、まず、クレートやキャリーケースを用いて犬を車内で固定する方法が推奨されます。
これにより、急ブレーキや衝突時に犬が車内で飛び出すことを防ぎ、犬自身の安全を確保することができます。
さらに、ペット用のシートベルトやドライブボックスの使用も有効です。
これらの装置を使用することで、犬が車内で自由に移動することを防ぎ、運転者の注意を削ぐリスクを軽減できます。これにより、運転者の集中力が保たれ、安全運転の確保につながります。
先述の通り、日本の法律ではペットに対するシートベルトの装着義務はありません。
しかし、法的義務がないからといって、安全対策を怠るべきではありません。むしろ、ペット用のシートベルトやクレートの使用を積極的に検討することが、愛犬の安全と運転者の安全を守るために極めて重要です。
これらの対策を講じることで、万が一の事故や急停止の際に犬の負傷を防ぐとともに、犬が運転者の行動を妨げるリスクを最小限に抑えることが可能です。
こうした安全対策を怠ることは、結果として重大な事故を引き起こす要因となり得るため、慎重な配慮が求められます。
日本におけるペットの法的地位は「物」としての扱いにとどまりますが、犬を車内に同乗させる際には、道路交通法等の関連法規を遵守しつつ、適切な安全対策を講じることが不可欠です。
犬をクレートやペット用のシートベルトで固定することで、運転者および同乗者の安全を確保し、交通事故のリスクを低減することが可能です。
愛犬とのドライブを安全に楽しむために、法律と安全対策に十分な注意を払うことが重要です。
【取材協力弁護士】
和氣 良浩(わけ・よしひろ)弁護士
平成18年弁護士登録 大阪弁護士会所属 近畿地区を中心に、交通・労災事故などの損害賠償請求事案を被害者側代理人として数多く取り扱う。
事務所名:弁護士法人ブライト
事務所URL:https://law-bright.com/