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「ととのう」はずが…サウナ事故が近年倍増、消費者庁が警告 やけどや心臓発作は自己責任?

2024年08月25日 08:11  弁護士ドットコム

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マンガやドラマ、インフルエンサーなどを通じて、サウナ浴が近年注目されている。「ととのう」というワードで表現される爽快感が支持される一方で、サウナをめぐって事故情報も寄せられる。


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消費者庁の発表(6月5日)によると、サウナ室内におけるやけどや打撲などの外傷のほか、めまい・意識障害や循環器障害なども報告されているという。



こうした事故情報は、2014年度から2021年度までは平均4件程度だったのが、2022年度以降はそれぞれ10件。「サウナブーム」とともに、事故が近年倍増している形だ。



具体的には、次のような事故情報がある。



・温泉施設内の貸切りサウナを利用中、椅子から立ち上がった際に壁面にむき出ていた裸電球が背中に当たってやけどをし、治療が必要に。



・スポーツクラブのサウナを利用中、心臓発作を起こし3日間入院。医師からサウナ等は利用しないよう言われた。以前、心筋梗塞を起こした。



サウナでこうした事故が発生した場合、施設側に責任があるとして賠償を求めることができるのだろうか。それとも自己責任なのか。小林望海弁護士に聞いた。



●心筋梗塞の既往歴あるのにサウナ利用したら心臓発作→「店側に責任なし」

——サウナでやけどや心臓発作などを起こした場合、施設側の責任はどのように考えられるでしょうか。賠償を求めることもできるのでしょうか



サウナで事故が発生した場合、そもそも施設側が損害賠償責任を負うか、負うとしたらどの程度の割合か、という2段階で判断されることになります。



まず、施設側が責任を負う要件としては、(1)施設側に事故の発生を想定しておく義務があるか、(2)施設側が事故の発生を回避するための措置を取っていたか、という2点が重要になってきます。



結論としては、事故の発生を想定しておくべきだったのに、対策を怠った場合には、施設側に損害賠償責任が発生するという構造になります。



(1)は、要するに発生した事故が一般的に起こりうるものだったか、という観点です。



たとえば、「心筋梗塞を患ったことがあり、サウナで心臓に負担をかけると心臓発作を起こしうる人が来る」ことは一般的に想定しづらいと思われます。



したがって、そのような人が起こした心臓発作については、施設側が事故の発生を想定すべきとはいえないと判断される可能性が高く、損害賠償責任が生じません。



一方で、サウナの未経験者が訪れることはよくあります。初めてサウナを利用して「何分入ればよいかわからず長時間利用した結果脱水症状を起こした」というような場合、事故の発生は想定しておくべきだったと判断される可能性が高いと思います。そのときは、(2)の「事故回避措置」の観点を検討することとなります。



(2)は、施設側が(一般的に起こりうる事故に対して)対策をとっていたかという観点です。



事故予防のために取りうる対策はさまざまですが、たとえば入口付近で利用方法を案内する、施設内の危険物に接触できないように囲いを作るといった対策が考えられます。



そのような対策をせずに、上記のような、初心者が長時間利用してしまった、裸電球でやけどしてしまったという事故が発生した場合には、施設側が損害賠償責任を負うことは避けられないと思われます。



●「掃除が甘くて滑りやすいサウナで走って転んだ」→利用客の責任重い

——利用者と施設の責任の割合はどのように考えればよいでしょうか



施設側が対策を怠っていたとしても、利用者側も容易に事故の発生を回避できたという場合には、施設側の責任は軽減されます。対策を怠った程度や、利用者に求められる注意の程度など双方の事情を総合的に考慮することになります。



一例ですが、本来1日に1回掃除をすべきところ、2日に1回しか掃除していなかったために床が滑りやすかったという状況で、利用者がサウナ内で走って転んだという事案について、双方に責任が生じそうという点は一般的にも理解しやすいのではないでしょうか。



もう一歩踏み込んでいえば、サウナ内で走るのは通常の利用方法とは明らかにかけ離れているため、どちらかといえば利用者の責任が重いと判断される可能性が高いと思います。



このように、さまざまな要素を考慮して責任の有無や割合が決定されることになり、場合によっては施設側に損害賠償を求めることができるという結論になります。



ただし、裁判になれば時間や費用など多大なコストが生じるので、誰にとっても一番良いのは事故が発生しないことです。施設側はできる限り「よくある事故」が発生しないよう対策をとり、利用者側はサウナの利用方法を調べて、体調に合った利用を心掛けるのが最善だと思います。




【取材協力弁護士】
小林 望海(こばやし・のぞみ)弁護士
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。早稲田大学法科大学院修了。2018年の弁護士登録後は、都内法律事務所に所属。2024年4月東京スタートアップ法律事務所に入所。一般民事事件を中心に取り扱う。相手の目線に立った誠実な対応で、依頼者からの信頼が厚い。
事務所名:東京スタートアップ法律事務所
事務所URL:https://tokyo-startup-law.or.jp/