F1映画の共同プロデューサーを務めるハミルトン。内容の信憑性を守るため脚本にも関与、ブラッド・ピットの運転技術も評価

　メルセデスF1のルイス・ハミルトンは、今後公開が予定されているハリウッド映画『F1』の共同プロデューサーとしての役割と、映画の信憑性を守る非常に重要な任務について、いくつか見解を述べた。

　2025年6月に公開予定のこの映画では、ブラッド・ピットがベテランのレーシングドライバーを演じ、若きチームメイトの取り組みを指導するためにF1に復帰する様子が描かれる。

　ハミルトンは当初から、脚本の開発からキャスティング、制作まで、このプロジェクトに深く関わってきた。F1の複雑さを大画面で表現するのは決して簡単な仕事ではなく、7度の世界チャンピオンの参加は、彼が熟知するスポーツに忠実な映画にするための鍵となった。

　アメリカの男性誌『Esquire』とのインタビューで、ハミルトンは、作品のフィクションが現実から少し離れすぎているときはいつでも「でたらめだ」と言わなければならなかったと率直に認めた。

「それはレースのシナリオだった。エンジニアが話す専門用語だ。でも特にレースのシナリオと場面、オーバーテイクとピットストップと戦略にわたるような、そういったものすべてだ」

「クルマがウォールにぶつかり、ひっくり返って車輪で着地し、そのまま走り続けるようなクラッシュがあったかもしれないが、それはF1では起こらないことだ」

　ストーリーを正しくするために、ハミルトンは脚本家のアーレン・クルーガーと緊密に協力した。クルーガーは、徹底的な調査、レース観戦、そして数え切れないほどの時間の映像鑑賞を通じて、F1の世界にどっぷり浸かっていた。

「アーレンは基本的に大量のリサーチを行い、たくさんのレースを観て、たくさんのレースに足を運んだ。そして脚本を書き上げた」とハミルトンは振り返った。

「でも、僕たちは座ってレースとは何なのか話し合った。彼が一旦脚本を書き終えると、僕は彼と一緒に座って、基本的に現実とは思えないことやF1の本質ではない部分をでたらめだと指摘し、その部分をできるだけ本物にしようとした」

　ハミルトンの影響は脚本だけにとどまらず、彼は映画制作のさまざまな側面に積極的に関与していた。彼は出演者とスタッフの多様性を確保するために尽力し、ピットクルーに女性を加えることを主張した。それは、彼が指摘したように、F1トラックでは現実には一度もなかったことだ。

「それと同時に、僕は制作会社を立ち上げたので、この人たちと一緒にプロデューサーを務めている。あらゆる分野に関与することができた。キャストが多様であるように、ピットストップに女性がいるようにもした。実際のトラックでは、女性がいたことは一度もない」

「僕はハンス・ジマーに映画の音楽をやってもらいたいと思っていたら、ハンス・ジマーが参加してくれた。ジョー（・コシンスキー／監督）は素晴らしいことに、あらゆることに僕を参加させてくれた」

　ブラッド・ピットがレーシングドライバーを演じるにあたっては、ハミルトンはピットがこの役にふさわしいかどうかを自ら確認した。彼は、自身のドライビングコーチとしての経験を活かして、彼をロサンゼルスのサーキットに連れて行き、ドライビング技術を評価した。

「僕たちはロサンゼルスのコースに行った。僕は彼を連れ出し、僕は助手席に座って彼が運転した」

「僕は若い頃、運転のコーチをしていたんだ。それはレースをしながらパートタイムでお金を稼ぐ方法だった。何人だったのかは神のみぞ知るところだけれど、僕はレーシングドライバーではない人たちと一緒に座ってきたんだ。上手か下手かはすぐにわかるよ」

「彼はすぐに取り組み、力を持っていることがわかった。彼のDNAにはそれが備わっている。彼は僕たちのようにその能力を磨くことができなかっただけだ。でも彼には大きなポテンシャルがある」

　ハミルトンはピットが本物の演技を披露できると確信しているが、特に50歳過ぎのドライバーがずっと若いライバルたちと競い合うという、ストーリーのアイデアに内在する難しさについて認識している。

「結局のところ、50歳ちょっとの男がシーズンに飛び込んできて、我々若者と戦うというのは、普通ではないことだ」

「でも、議論すべきことがある。そうするためにはどうすればいいか？　本当に復帰して同じように戦い、反応できるようになるには、どれくらいのトレーニングをしなければならないだろうか？　そう、そこにはたくさんの細かいことが詰め込まれている」

　ハミルトンはF1の真髄を守ろうと全力を尽くしている。来年この映画が公開されれば、ファンは臨場感あふれるスリリングな映画体験を期待できるだろう。