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『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO』観戦記

2024年08月20日 13:49  ORICON NEWS

ORICON NEWS

22年ぶり2度目の登場となった「WEEKEND LOVERS 2024 “with You” 」
 台風の間隙を縫うように、真っ青な空を取り戻した石狩の地へ、今年も『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO』(以下RSR)が戻って来た。はやる心を抑えきれないロッカー達が、開場と同時に堰(せき)を切ったようになだれ込んでいく。

【ライブ写真】DISH//、LiSA、UVERworld、スピッツら豪華出演アーティスト

 SUN STAGEのトップバッターは怒髪天。「RSR2024×怒髪天結成40周年スペシャル~仲間(ひと)のふんどし祭り~」ということで、おなじみのふんどし隊を従え、北海道のアニキことボーカルの増子直純が神輿に乗って登場。LOUDNESSの二井原実、スターダスト☆レビューの根本要、渡辺美里らゲストとコラボしたり、GLAYのカバーも披露するなど、にぎやかにフェスの開幕を彩った。

 EARTH TENTにDISH//が登場する頃になると、次々に押し寄せる人並みで瞬く間にテントの周りに幾重にも人垣ができ、その人垣を超えて北村匠海の声が響き渡る。「猫」を歌うと会場のみならず、歩いていたり、何かの順番待ちをしていたりする人までもが一緒に口ずさみ始めた。ライジング初参戦とは思えないアーティスト力を感じさせた。

 暮れなずむBOHEMIAN GARDENに森山直太朗がアコギで「さくら」を弾き語ると、RSRの会場の中でもひときわ和む穏やかな雰囲気にあふれた、このステージに集まった観客も聞き惚れる。バンド演奏で「夏の終わり」を披露すると、会場中がこれ以上ない歌とロケーションとのマッチングに歓声を上げるという場面も見られた。

 そのころSUN STAGEではUVERworldが怒涛のごとくアグレッシブな音を轟かせると、観客もぐいぐい引きこまれていく。ボーカルTAKUYA∞の熱が伝播していくように、地鳴りのごとく音が大地を揺るがすのを肌で感じる。聞く者の心に”刺さる“音楽になっているのだと実感できた圧巻のステージだった。

 陽が落ちて過ごしやすくなったころ、RED STAR FIELDにはRIZEの姿が。深まっていく夜に骨太なサウンドを次々繰り出し、詰めかけた観客に火をつける。ステージ前から炸裂する音を浴びた興奮がはるか後方まで届き、3人が互いの呼吸を合わせるというよりぶつけあうようなスリリングな展開をしていくところにRIZEの面白味があると知らしめるステージに見て取れた。

 翌17日も朝から天気に恵まれる。

 SUN STAGEに登場したLiSAが「紅蓮華」で熱いスタートを切り、def garageに登場したOmoinotakeはピアノの音色と共に涼やかな声を響かせた。歌詞がよく聞こえる美しい歌声にひと時聞き惚れる。

 次はこのフェス最高齢の泉谷しげるが出演するBOHEMIAN GARDENへ。50分遅れでスタートしたものの、ステージのテンションはぶっちぎりで高い。年齢を強調するMCとの落差で笑わせ、パフォーマンスで盛り上げ、まったり音楽を楽しむ会場として知られるBOHEMIAN GARDENで大いに沸かせるステージを見せてくれた。

 夕暮れのSUN STAGEに21年ぶりのスピッツが登場。1曲目から大合唱が起きる。草野マサムネの声ははるかステージを離れてもなお届き、和やかながら満足度の高いステージに会場は酔った。

 花火ブレイクの後、EARTH TENTに登場した木村カエラは、キュートないでたちでギターを弾いたり、跳ねたり、1曲目の「Butterfly」から惹きつけて離さない。ひとしきり目も耳も奪われるステージに観客も大喜びだった。

 同じころSUN STAGEにはRSR常連の東京スカパラダイスオーケストラが、菅田将暉やSaucy Dogの石原慎也をゲストボーカルに迎え、華やかなパフォーマンスを披露した。RSR初参戦の菅田はここで十分温まったと見え、この後EARTH TENTでの自身のライブでは熱狂する観客を前に存分に楽しませてくれた。

 そして夜も深まり、今回のRSRの一つの目玉と言ってもよい「WEEKEND LOVERS 2024”with You”」が始まった。

 LOSALIOSとThe Birthday(クハラカズユキ、ヒライハルキ、フジイケンジ)がゲストの村越”HARRY”弘明(THE STREET SLIDERS)、イマイアキノブ、斉藤和義、YONCE(Suchmos/Hedigan’s)、奥田民生らとともに、チバユウスケの楽曲に息を吹き込む。追悼というより、その場にチバがいて一緒に楽しんでいるに違いないと思わせるほど、濃密な時間を提供してくれた。音楽は死なない、受け継がれていく。その思いを新たにする時間でもあった。

 トリはSUN STAGEのクリープハイプ。しだいに明けてゆく空と呼応するかのようなセットリストで、雨がぱらつく場面さえ曲にマッチしているかのようになじみ、最後は「二十九、三十」で締めくくった。

 初日は交通機関の影響で平井大が出演キャンセルとなったほかは、無事ステージが行われたが、2日目は一転、新千歳空港でトラブルが発生。そのため9mm Parabellum Bulletが出演を断念したり、タイムテーブルの変更を余儀なくされるなど、運営側も異例の事態に見舞われた。

 リアルタイムで次々情報が更新され、人の流れもそれにつれて当初の動きとは変わる場面も見られたが、最後まで混乱を避けられたのは、これまでにもさまざまな難局を乗り越えてきたスタッフの尽力と、自由と責任の下に音楽を楽しむロッカー達の動じないハートがあったからこそかもしれない。フェスが育ってきているのを実感する場面でもあった。

 二日間、天気にも恵まれ北海道らしいさわやかな空気の中でフェスを終えることができ、次回、25回目となる『RISING SUN ROCK FESTIVAL 2025 in EZO』開催の2025年8月15、16日まで、363日のカウントダウンを始めながらロッカー達は新しい音楽体験に向けて夢を育てる日々が再び始まった。

(音楽ジャーナリスト 内記 章)

■RISING SUN ROCK FESTIVAL 2024 in EZO
開催期間:8月16日(金)・17日(土)
総入場者数:6万8000人(16日:3万3000人/17日:3万5000人)
総アクト数:73アクト(16日:30アクト/17日:43アクト)