【夏の怪談特集】身近な人が亡くなる前後、「夢枕に立つ」というのはよく聞く話だ。埼玉県の50代女性もまさにそんな不思議な体験をした。
女性は、まだ赤ちゃんの頃に養子に出され、「子どものいない養父母」に育てられた。大学を卒業してからは、実家を離れて就職し、結婚した。養父母には大事に育てられたようで「血縁関係はありませんが、ごく普通の親子関係です」と振り返る。(文:長田コウ)
「もうずいぶん寝たでしょ? 起きなさい」と夢の中の母
女性が30代、息子が2歳で子育てが忙しかった頃の出来事だ。養母から、一本の電話がかかってきた。
「インフルで入院している、たぶん生きては戻れない。後のことお願いね」
電話の内容に驚いた女性は、「すぐに会いに行く」と慌てて答えたが、養母から「孫に感染したらいけないから来るな」と言われ、断念した。女性も、心のどこかで「入院しているが電話する元気があるなら大丈夫かな」と思っており、帰省しなかったそう。
その数日後、女性が息子と寝落ちしてしまったときに、ある夢を見た。女性は、夢の中で「ユンボ(小型ショベルカー)に乗り地面を掘って」いたという。
「どこかで『のんちゃーん、のんちゃーん』と私の名前を呼ぶ声がします。養母の声です。私は暢気に『なーに?』と地面を掘り起こしながら答えます。すると養母が『お母さん死んじゃったから帰ってお葬式とかやって』と『もうずいぶん寝たでしょ?起きなさい』と言うのです」
夢の中の女性は、言っていることが理解できず、戸惑うしかなかった。
「養母は『お母さんこういう時に役に立つように育てたんだからお願いよ』『骨くらい拾って』と畳みかけます。『骨ね、わかった』とショベルカーで土を掘り起こし続けると養母が『もう、いい加減に起きなさい!役に立って!』とピシャリ」
これに、女性はハッと目を覚ましたのだ。そして、現実を確かめようと「慌ててリビングに行き家電を確認」した。すると、「鬼のように養父から留守電」が入っていた。
「お母さん死んじゃったー帰って来て」
現実を知った女性は支度をし、実家に向かうと「既に自宅に養母が戻って」いた。その時の父は、「抜け殻状態」で「のんちゃんが帰ってきたよーお母さん」とただただ泣いていたそう。悲しいのは、養父だけではなく、女性も同じだったが、ふと、夢の中の「役に立って」という養母の言葉を思い出した。
「『ただいま、お母さん役に立つから安心して。任せて』と養母に話かけて葬儀を無事執り行いました」
養父は、「悲しみに暮れるばかりで何も出来ない」状態だったという。これを見て、女性は、こう推測している。
「きっと養母はそれを見越して私の夢枕に立ったんだと思います」
育ての母からの、最後のメッセージだったのだろう。
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