面接官が不採用にした応募者から本社にクレームを入れられることもあるらしい。千葉県の30代後半の女性は10年ほど前、接客業の仕事でアルバイトの採用面接をしていたときに強烈な応募者と遭遇した。編集部は女性に詳しく話を聞いた。
面接にやってきたのは40代女性で、最初から様子がおかしかった。まず、遅刻してきたのに謝罪も理由の説明もなかった。
「面接中は足を投げ出し、たまに腕を組んでいたので、まさにふんぞり返っている感がすごかったです」
と衝撃を受けた様子。しかしこれらはほんの序の口だった。(文:天音琴葉)
長所は「明るく、どんな人にも好かれるところ」
当時20代半ばだった女性は派遣会社に勤めており、派遣会社にレジや店舗運営を委託していた商業施設で店舗マネージャーとして働いていた。そこに件の40代女性は、ジーンズにTシャツというラフな服装でやってきた。アルバイト採用だからいいとしても、接客の仕事なのに笑顔の一つも見せず、質問に対する回答も異様さが際立っていた。
「事前の書類審査はなかったので、面接のときに履歴書を見て気になったのは、応募動機が空欄だったことでした。そのため応募の動機を尋ねましたが、『別にないです』と言うだけで……。その後、希望の勤務条件などを確認しました。夕方17時以降の時間帯での募集でしたが、彼女は『9~17時で週5日、平日のみで働きたい』と、募集を出していない時間帯に週5で入りたいと言いました」
彼女は求人情報誌を見て応募してきたというが、募集内容をよく読んでいいなかったのだろうか。また、長所と短所に関する質問で、長所は「明るく、どんな人にも好かれるところ」と得意げにスラスラと答えたのに、「短所はありません」と言うのみだったことも奇妙だった。
こんな様子では採用されるはずがなく、後日、不採用の連絡をした。するとあろうことか、彼女は商業施設の本社に、「面接官の態度が悪い。採用されないのはおかしい。なぜ採用されないのか説明しろ」といったクレームを入れてきたのだった。
「採用基準がおかしい!信用できない!」
連絡を受けたときの心境を女性は次のように振り返った。
「40代女性が『不採用の理由を私から聞きたい』と言っているので申し訳ないが連絡してみてほしいと言われました。面接日程を決める際に店舗から連絡をしていて店舗の電話番号は分かっているはずなので、わざわざ委託元の本社を通す意味が分からなかったです」
委託元からの指示とは言え、当事者同士で直接話をしたくなかっただろう。電話すると案の定というか、一悶着あった。電話口で「なんで私が不採用なんですか?」と最初から怒りモードの彼女に対し、トラブルを避けようとやんわりと対応したのだが……
「『他に面接した方のなかでもっとお店の条件に合っている方がいました』と、不採用理由を丁寧に説明しました。ところが『採用基準がおかしい!信用できない!』と言って納得しません。『あなたが応募してきた時間帯は充足していて現在は募集を出していません』と伝えれば、『じゃあ違う勤務時間にすれば採用されたのか』『夕方に出れるって言えば良かったのか』と堂々巡りで……。電話の途中でこの方は『自分が採用されないわけがない、採用されないのは私に非がある』と信じているんだと気付き、何を言っても納得しないだろうなと感じていました」
どんなに言葉を尽くしても、40代女性に話が通じることはなかった。「意味がわからない!」とキレ始め、散々ワーワー言った挙句に電話を一方的に切られたからだ。
「面接では特に、自分が相手からどのように見えているのか考えてほしいですね……」
応募者がこんな調子では面接官とは言え不満を言いたくなるのも無理もない。不採用者から反感を買わないよう言動に気を付けている面接官は多いだろうが、たくさん面接していると困った人に当たってしまうこともある。その場合、第三者が間に入り対応するほうがいいだろう。