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耳たぶが20cm伸びた? すぐに体験できる不思議な感覚「ブッダの耳錯覚」 名古屋市立大が考案

2024年08月15日 08:41  ITmedia NEWS

ITmedia NEWS

【画像を見る】(上段)風船を使用してブッダの耳錯覚を誘発する従来のプロセス (下段)見えない耳たぶを引っ張るパントマイム動作でブッダの耳錯覚を誘発させるこの研究の手法【全3枚】

 名古屋市立大学の小鷹研究室に所属する研究者らが発表した論文「Buddha’s ear illusion: Immediate and extensive earlobe deformation through visuotactile stimulation」は、簡単な視触覚刺激によって、自分の耳たぶが長く伸びたような感覚を引き起こす研究報告である。この現象を「ブッダの耳錯覚」(Buddha’s ear illusion: BEI)と名付けている。


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 ブッダの耳錯覚は、道具を必要としないため、今すぐ試すことができる。片方の手で相手の耳たぶを引っ張り、もう片方の手で耳たぶが伸びたかのようなパントマイムを行う。これにより、耳たぶが伸びたような感覚を与えることができる。なお、ブッダの耳錯覚は「Best illusion of the year 2023」にて入賞している。


 実験では、16人の参加者を対象に、4つの異なる条件下でブッダの耳錯覚の効果を検証した。これらの条件は、耳たぶへの触覚刺激と視覚刺激の組み合わせによって構成する。


 触覚刺激には2種類の操作を用いた。1つは耳たぶを軽く「つまむ」操作(Pinched条件)で、もう1つは耳たぶを約1cm下方に「引っ張る」操作(Pulled条件)だ。


 同時に、視覚刺激として2種類の操作を規定。1つは実験者の手を耳たぶの下で「静止」させる操作(Stayed条件)、もう1つは見えない耳たぶを50cm下に伸ばすような「模倣動作」(パントマイム)を行う操作(Mimed条件)である。


 実験は2つのパートに分けて実施。実験1では、各条件下で錯覚を体験した後、参加者に4つの質問項目に7段階で回答してもらった。質問には「耳たぶが通常以上に伸びたように感じた」「空中に見えない皮膚があるように感じた」などを含んでいた。


 実験2では、錯覚の前後で耳の上端と下端の主観的位置を測定した。参加者は目を閉じた状態で、感じた耳の位置を指さしで示した。これにより、耳全体の移動感覚と耳たぶの伸張感覚を区別して評価できた。


 実験の結果、最も強い錯覚効果が得られたのは、耳たぶを引っ張りながら視覚的な模倣動作を行う条件(Pulled × Mimed条件)であった。この条件下では、16人中14人ン(88%)の参加者が、耳たぶの伸張感に関する質問に対して7段階評価の4以上(強く同意)と回答した。


 さらに注目すべきは、半数以上の参加者が10秒間の刺激で10cm以上の耳たぶの伸張を感じたと報告したことである。これは、従来の身体錯覚研究で報告されてきた数値を大きく上回っている。


 実験2の測定結果からは、ブッダの耳錯覚は耳全体の位置感覚ではなく、耳たぶ部分の皮膚変形感覚を選択的に引き起こすことが判明した。具体的には、耳の上端の主観的位置の変化が5cm未満だったのに対し、下端(耳たぶ)の位置変化は平均20cm以上に達した。


 この結果は、耳全体の位置感覚の変化は比較的小さく、主に耳たぶ部分の変形感が強く生じていることを意味する。研究者らは、ブッダの耳錯覚が従来の身体所有感の錯覚(ラバーハンド錯覚)とは異なるメカニズムで生じていると考えている。通常の固有受容感覚の変調ではなく、皮膚領域の空間認知の不確実性を利用している可能性を指摘している。


 Source and Image Credits: Kodaka, K., & Sato, Y.(2024). Buddha’s ear illusion: Immediate and extensive earlobe deformation through visuotactile stimulation. I-Perception, 15(4). https://doi.org/10.1177/20416695241262208


 ※Innovative Tech:このコーナーでは、2014年から先端テクノロジーの研究を論文単位で記事にしているWebメディア「Seamless」(シームレス)を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。X: @shiropen2